戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百十二話 死装束その七
「このままな」
「用いられますな」
「そうする」
こう言うのだった。
「その考えはない」
「ですな、しかし」
「闇か」
「それを感じますので」
だからだというのだ。
「私はあの御仁は」
「好きになれぬか」
「いえ、嫌いではありません」
利休はこのことは否定した。
「決して」
「左様か」
「はい、悲しいものを感じます」
「あ奴からか」
「雰囲気としまして」
その闇からだというのだ。
「何故か」
「左様か」
「そうです、飄々とされ笑顔でおられますが」
いつもだ、しかしなのだ。利休はそのことからだ、松永のそうしたものを見てそうしてこう話したのである。
「悲しいものもです」
「あるか」
「どうしても」
「そうなのか」
「ですから」
「ではあの者はな」
また言う信長だった。
「よくな」
「御覧になられ」
「あの者の闇を払うか」
こう言うのだった。
「昔から闇は好かぬ」
「殿がお好きなものは」
「日輪じゃ」
それが、というのだ。
「わしは日輪が大好きじゃ」
「日が、ですな」
「よく人はわしを日輪の様だと言うがじゃ」
それが、というのだ。
「嬉しいことじゃ」
「日輪がお好きだからこそ」
「闇を払いたいのじゃ」
これが信長の考えだ、日輪即ち光を好むが故にだ。
「悪き闇をな」
「悪き、ですか」
「そうじゃ」
そうした闇を、というのだ。
「そう考えておる」
「闇にも色々だと」
「青といっても色々じゃな」
ここでは織田家のその色を話に出した。
「そうじゃな」
「確かに」
「明るい青もあれば濃い青もある」
「だから闇もですか」
「よい闇もあれば悪い闇もある、そもそもじゃ」
信長はさらに言った。
「光が当たると必ず影が出来るな」
「はい」
「影はどうしてもある」
このことは絶対だというのだ。
「それをないとは言えぬ」
「だから闇はですか」
「ある」
絶対に、というのだ。
「しかし影はただの影でじゃ」
「何でもありませぬか」
「うむ」
それ故にというのだ。
「思うことはない」
「しかし悪しき闇は」
「払う」
そうするというのだ。
ページ上へ戻る