戦国異伝
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第二百十二話 死装束その二
「そしてじゃ」
「こうしてですか」
「茶を所望しておった」
「あえてですか」
「若しわしに斬られる」
その死装束の通りだ。
「しかしそれで他の者の命は救うつもりじゃな」
「死ぬのはわし一人で充分ですな」
政宗はにやりと笑ってこうも言った。
「戦に敗れた責は」
「うむ、わしもそれ以外は求めなかった」
「そうしたこともご承知のうえで」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「わしもそうしておった」
「左様でありますか」
「そしてじゃ、御主のその傾き見せてもらった」
信長は笑みを浮かべて政宗にこうも言った。
「充分な、ではな」
「さすれば」
「御主の命はいらぬ」
奪わないというのだ。
「しかし御主は貰う」
「それがし自身も」
「伊達家もじゃ、わしに降るか」
「それがしは敗れました」
戦、それにというのだ。
「さすれば」
「それならばじゃな」
「はい」
まさにというのだ。
「命を奪われぬのならば」
「わしに降りじゃな」
「仰るままに」
これが政宗の今の言葉だった。
「そうさせて頂きます」
「そうか、わかった」
「しかし。それがしあくまで降り天下は諦めましたが」
「それでもか」
「わしは傾きます」
それは続けるというのだ。
「これからも」
「御主であることはじゃな」
「それは続けます」
そうだというのだ。
「何があろうとも」
「天下は諦めるのか」
「それは殿に敗れましたので」
それ故にというのだ。
「最早です」
「そう言うか」
「その様に」
「ではな」
「伊達家は織田家の家臣となります」
「家臣達もじゃな」
「その全てが」
「なら天下の為に働いてもらう」
これからはというのだ。
「よいな」
「畏まりました」
政宗も応えた、そして利休の茶を飲み言った。
「この茶は」
「どうじゃ、利休の茶は」
「はい、これ程までとは思いませんでした」
「これが天下の茶じゃ」
「茶の天下を極めた」
「ただ茶の葉、茶器がよいだけではない」
今飲んでいる茶は、というのだ。
「利休の腕もじゃ」
「まさにですな」
「天下のものじゃ」
まさに、というのだ。
「だからこそじゃ」
「この味なのですな」
「これからも天下の茶を味わいたいか」
「是非」
これが政宗の返事だった。
「そうさせて頂きたいです」
「ではな」
「それではですな」
「天下を一つにし泰平の世を長く続ける為にもな」
「それがしもですな」
「伊達家もな」
その家臣達もというのだ。
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