美しき異形達
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第五十二話 来訪者その十一
「そうされたんですね」
「そうだよ、まさに君達が胎内にいる時にね」
人の身体になろうとしているその時にというのだ。
「そのことを知ってね」
「力をですか」
「入れたんだ、君達が君達を守られる様に」
「あの、伯爵さんは」
「私が?」
「薊ちゃん達を守ろうとは」
「私は戦うことは出来ないんだよ」
伯爵は裕香のその問いには残念そうに答えた。
「そうした力は持っていないんだ」
「そうなんですか」
「確かに錬金術や科学には通じているけれどね」
「戦う力は」
「ないんだ、私にはね」
「魔術といっても色々ですけれど」
「漫画や小説等でよくある戦闘用の魔術等はね」
そうしたものはというのだ。
「身に着けていないんだ」
「だから」
「カリオストロ伯爵もそうだけれどね」
「そうですか、ですから」
「彼女達にね」
他ならぬだ、ここでも薊達を見て言った。
「自分達で戦ってもらうしかなかったんだ」
「そうだったんですね」
「私達錬金術を極めた者は自分達で戦ってはならないという決まりもあるんだ」
「それはどの組織の決まりなんだい?」
薊が伯爵に問うた。
「一体」
「うん、フリーメーソンとは別の」
「もっと上の組織か」
「フリーメーソンはあくまで公になっている組織だからね」
陰謀論の常連と言っていい組織だが実はそうなのだ、そもそもそうした陰謀に関わる様な組織が表に名前が出ることがあるのだろうか。
「それとはまた別の」
「錬金術師だけのか」
「魔術や仙術を極めたね」
「そうした組織があってか」
「そこの取り決めだよ、私はその組織のメンバーでね」
「その組織のルールでか」
「私自身は戦える力を備えてはいけないんだ」
錬金術や魔術を極めた者はというのだ。
「不老不死や人造人間に関わることはいいけれどね」
「それって力が強過ぎるからだよな」
「知識は力だよ」
まさにとだ、伯爵は薊に答えた。
「それだけでね」
「だからか」
「そう、これはカリオストロ伯爵もだよ」
「えっ、まさか」
薊は伯爵の今の言葉にはっとして問い返した。
「カリオストロ伯爵も」
「そう、彼も組織のメンバーだよ」
「それで知り合いなのか」
「昔からのね。ただ彼は元々山師でね」
昔からこのことでも有名な人物だ、その行いには如何わしいものが多々あったとも言われている。真相は不明にしても。
「組織の中でも問題のある人物なんだ」
「詐欺とかもかよ」
「してきていたしね、嘘もよく言うよ」
「よくそれで組織から追い出されないな」
「何度もそうなりかけているけれどね」
カリオストロ伯爵はそうだというのだ。
「しかも私にはライバル意識も持っているし」
「だからあたし達にも怪人を向けてくれて」
「そう、ただね」
「ただ?」
「山師でも彼は自分では戦わないんだ」
「そうした魔術とかは備えていないんだな」
「確かに問題の多い人物だけれど」
それでもだというのだ、カリオストロ伯爵は。
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