美しき異形達
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第五十二話 来訪者その三
「あの伯爵達に会いたいけれど」
「そのことね」
「私達の生みの親、そして敵」
「そのことはわかったけれど」
「会えるかどうか」
「それが問題よ」
こう言うのだった、鈴蘭はこのことの方を気にしていた。薊達の今の戦いはもうわかっているとしてだ。
だが薊も黒蘭もまだ動かない、敵の攻撃をそれぞれの得物で防ぎ最低限の動きでかわしているだけだ。
その中でだ、薊は。
斜め上から襲撃して来た怪人の額、そこにだった。
七節棍を右手一本で持ちそのうえで。
一気に突き出した、伸びた棒は炎が宿っていてそれが怪人の眉間を狙った。怪人は咄嗟に頭を動かし急所への直撃はかわしたが。
頭に一撃を受けた、それで動きを止めてその場に落ちた。それから身体を起こして薊に対して言った。
「見切ったか」
「あんたは確かに色々な方向から攻めて来るさ」
薊は怪人に彼の攻撃のことを言った。
「ジャングルの中にいるみたいにな」
「それでもか」
「あんたは絶対にあたしを攻める時な」
まさにその時はというのだ。
「正面、あたしを向いてるからな」
「だからか」
「あたしはそのあんたを狙えばいい」
「それでか」
「今みたいにしたんだよ」
眉間を狙ったというのだ。
「まあかわされたけれどな」
「そうか、しかしな」
「一度見抜かれたことはしない」
それは、というのだ。
「二度とな」
「そうだよな、あんた達も馬鹿じゃないからな」
「俺の武器は素早さだけじゃない」
先程までの攻撃で使ったそれだけではなく、というのだ。
「まだある」
「爪に牙だな」
「それを使う、行くぞ」
薊に音もなく近寄りそこから両手の拳の爪を使って攻撃を再開して来た、薊はその攻撃も棒で防ぐ。そして。
怪人の腹にだ、左膝の蹴りを入れた。そこから。
腹への一撃でやや後ろに下がった怪人の顎に右足に炎を宿らせて下から蹴りを入れた、そこからだった。
怪人が完全に動きを止めたその一瞬に真上に跳んでだ、そこから。
身体を伸ばした状態で激しく横に回転して全身に炎を纏って。
そこから右足での蹴りを入れた、急降下で。
その一撃で怪人を貫いた、怪人は。
背中に薊の符号を出した、薊はその後ろに怪人の身体を貫いた状況で両膝を折った姿勢で赤い残像を残しつつ着地した。
そしてだ、立ち上がってから怪人の方を向いて言った。
「接近戦に持ち込んだらな」
「勝てたというのか」
「一撃離脱を仕掛けられたままでもな」
怪人のペースで進めていたそれもというのだ。
「平気だったぜ」
「俺に勝てたのか」
「あんた確かに強かったさ」
薊もこのことは認めた。
「けれどな」
「貴様はか」
「ああ、あたしはあんたより少し強かった」
「だから勝てたというのだな」
「そうさ、あんたの攻撃は見切った」
防ぎかわしていたその中でというのだ。
「だから勝てたんだよ」
「それなら敗れるのも当然だな」
「で、聞きたいことがあるんだけれどな」
自分に背を向けたままの怪人にこうも言った。
「あんたの生みの親のことだけれどな」
「残念だがな」
怪人はここでだ、薊に向き直って言った。
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