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オズのベッツイ

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第十幕その九

「この辺りがウィンキーの端だったんだ」
「そうでしたね、以前は」
「すぐそこが死の砂漠で」
「それで、でしたね」
「ここが端で」
「もう先には行けませんでしたね」
「それが今ではね」
 今のオズの国ではといいますと。
「死の砂漠が大陸の海岸までいって」
「オズの国の端ではなくなったわね」
 ガラスの猫もこう言ってきました。
「もうね」
「そうだよ、丁渡ウィンキーの真ん中位かな」
 それが今の真実の池がある場所だというのです。
「端から真ん中になったよ」
「真ん中にあれば」
 ここでまた言った猫でした。
「何か気分が違うわね」
「うん、何かあちこちに自由に行ける気がするよ」
「端っこにいれば限られた場所にしか行けないって思うわね」
「自然にね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「今はあんたも前よりゆったりとしてないかしら」
「私はずっとだよ」
「ゆったりしてたの?」
「気取ってはいるね」
 そうだというのです。
「昔から」
「余裕じゃなくて」
「そう、気取っているから」
 それで、というのです。
「余裕とは違うよ」
「そうなるのね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「私も余裕を身に着けたいよ」
 カエルマンはお花を探しながら猫に答えました。
「是非ね」
「そうなのね」
「うん、人間余裕があるとね」
 それが備わっていると、というのです。
「それだけで随分違うからね」
「だからですね」
「そうだよ、だから備えたいと思ってるよ」
「じゃあ備える為に」
「努力しているつもりだよ」
「昔のあんただとそこでね」
「うん、既に備えているって言ってたね」
 まだ村にいた時の自分のこともなのでした、カエルマンは振り返ってそのうえで猫にこう答えたのでした。
「昔の私はね」
「そうだったわね」
「けれど今はね」 
「違うわね」
「だからね」
 それで、というのです。
「努力しているよ」
「それはいいことね。それでね」
「それで、よね」
「勉強もしているよ」
 こう猫にお話するのでした、そうしたお話をしてその銀の菖蒲を探しているとです。
 カエルマンは目の前にです、その銀色のお花を見付けました。そしてそのお花の種類を確かめてからアンに言いました。
「王女、来てくれるかな」
「まさか」
「そう、ここに来てくれるかな」 
 こうアンに言って誘うのでした。
「これだと思うから」
「それじゃあ」
 こうしてです、アンはカエルマンのところに来てです。
 そのお花を見てです、ぱっと明るいお顔になって言いました。
「これよ」
「このお花だね」
「銀の菖蒲よ」
 まさにそのお花だとカエルマンに言うのでした。 
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