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戦国異伝

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第二百十一話 磨上原の合戦その八

 その彼等にだ、政宗は命じた。
「猪苗代まで下がれ!」
「はい!」
 すぐにだ、退きを告げる法螺貝が鳴らされた。それを受けてだ。
 片倉と成実は無念の顔だがこう言った。
「では猪苗代の城まで」
「下がるか」
「はい、無念ですが」
「それしかないな」
 二人共こう言ってだ、すぐにだった。
 兵を退かせはじめた、その動きは速く織田の軍勢が攻めるその瞬間にだ。
 間合いから離れた、そうして。
 政宗もだ、己が率いる鉄砲騎馬隊の者達に命じた。
「では我等もじゃ」
「はい、猪苗代までな」
「退くのですな」
「急ぐぞ、よいな」
「はい、それでは」
「このまま」
 彼等は頷いてだ、そのうえで。
 一目散に逃げた、その足は速く彼等は織田の騎馬隊を振り切った。信長はその用兵の速さを見て言った。
「風が変わるとすぐに退いたな」
「はい、まさに」
「風の様に」
「その瞬間に負けを悟った」
 そのことがというのだ。
「見事じゃ」
「伊達政宗、やはり」
「相当な者ですな」
「うむ」
 信長は池田と森の言葉に頷いて応えた、二人は今は信長の本陣で兵を率いそのうえで彼を護っているのだ。
「その通りじゃ」
「では、ですな」
「やはり」
「猪苗代城に逃げておるな」
 このことを確認しての言葉だった。
「ならばな」
「城に使者を送り」
「そのうえで」
「会うぞ」
 その政宗と、というのだ。
「よいな」
「ではまずはですな」
「兵を収め」
「勝鬨を挙げよ」
 勝ったその証にというのだ。
「よいな」
「では」
「これより」
 森も池田も頷いてだ、そのうえで。
 織田軍は陣を整えそうしてだった、勝鬨を挙げた。そうしてその後でだ。信長は林兄弟に対して命じたのだった。
「では御主達がじゃ」
「使者となりですな」
「そうして」
「うむ、猪苗代城に入りじゃ」
 そして、というのだ。
「伊達政宗に伝えよ」
「織田家に降れと」
「そして殿の御前まで来られよと」
「伝えよ、よいな」
「では今より」
「行って参ります」
「さて、まさか籠城はすまい」
 もうそれはないとだ、信長は確信していた。そしてそのうえで言うのだ。
「後はな」
「伊達家が降り」
「そうして」
「後始末じゃ」
 それをするだけだというのだ。 
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