美しき異形達
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第五十一話 二人の伯爵その十
「常に怪人を向けて来る、例え怪人達があの娘の場所がわかっていてもな」
「その都度すぐに送り込めることはな」
「常に見ておる」
「そういうことだ」
「しかも何かとすぐに送り込めるということはな」
「大抵は、だ」
常にそうとは限らないがそれでもというのだ。
「近くで見ている」
「そうじゃな」
「人の心理として常に仕掛ける相手の傍にいたい」
「人の心理は無意識にも出る」
博士は心理学者でもある、だからここでもその人間心理について話せるのだ。それで今もこう話すのである。
「例えそれが錬金術を極めていてもな」
「人間の本質は変わらないな」
「そうだな、だからな」
「カリオストロ伯爵もじゃ」
その彼にしてもというのだ。
「近くにおる」
「そしていつもあの娘達を見ている」
「そうして仕掛けておる」
「ならだ」
ここまで話してだった、彼はその目を鋭くさせて述べた。
「神戸とその周りを探して来る」
「油断なき様にな」
「油断をすれば死ぬ」
多くの戦いを経てきての言葉だ、それだけに強い。
「それはわかっているつもりだ」
「それではな」
「行って来る」
「帰って来たら何がいいかのう」
「そうだな、外郎がいい」
名古屋名物であるこの菓子が、というのだ。
「桜でな」
「抹茶ではないか」
「今回は桜がいい」
その外郎がというのだ。
「ではだ」
「うむ、それとお茶を用意しておこう」
「それで頼む」
こう話してだ、そしてだった。
彼は研究室を後にした、博士と妖怪達はその彼を笑顔で見送った。博士は彼の友人の協力を得ていた。
それから数日後だった、薊達は夏休みの終わりを間近にしてだった。この日は街に出て遊んでいた。
その時にだ、薊は裕香に問うた。
「なあ、神戸の暑さってな」
「大阪よりましでしょ」
「隣同士って言ってもいいのにな」
「過ごしやすいのよね、神戸の夏は」
「そうそう、本当に大阪は暑いな」
旅行の時の大阪を思い出しての言葉だ。
「難波も西成もな」
「住吉さんの辺りもね」
「何処もな」
それこそ大阪のどの場所もというのだ。
「京都も暑かったけれどな」
「大阪の方が、って感じたのね」
「まあ京都の方が暑いと思うけどな」
それでもだというのだ。
「大阪はつい比べるんだよな」
「神戸とね」
「関東で言うと大阪が東京でな」
「神戸が横浜?」
「そんな感じかね」
こう裕香に言うのだった。
「だから結構比べるな」
「暑さでも」
「そうなんだよ、確かに暑いけれどな」
神戸の夏もだ、確かにそうだというのだ。
だが、だ。やはり大阪と比べると、というのだ。
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