ドリトル先生と二本尻尾の猫
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第十幕その六
「その時はね」
「ジップがかな」
「やっつけていい?」
「いや、ここはね」
「そうしないの?」
「暴力は駄目だよ」
それは先生の一番嫌いなものの一つです、誰に対しても暴力は振るってはいけないというのが先生の信条です。
「何があってもね」
「あっ、先生がいつも言ってる」
「そう、だからね」
それでというのです。
「ここはね」
「暴力を使わずに」
「他の方法でいこう」
「そうするんだ」
「その時はね、それにね」
さらに言う先生でした。
「まだ彼等は何をしようともしていないから」
「まだ、だね」
「しようとすれば動くけれど」
お二人に、です。
「他の人達に対してもそうだけれど」
「まだ何をしていないから」
「こちらも何もしないでおこうね」
「そうするんだね」
「そう、もうその時のことは考えているから」
先生の頭の中にしっかりとあるというのです。
「だからね」
「万全だね」
「皆がいてくれるから」
先生は微笑んで皆にも言いました。
「安心していこう」
「うん、じゃあね」
ジップも納得して頷きました、そして。
皆はそのよくない人達に警戒しつつです、お二人を追うのでした。お二人はコーヒーカップやメリーゴーランド、それに小劇場にも行きました。
小劇場の中で、です。先生は舞台がはじまる前に皆に言いました。
「ここは暗いから」
「うん、何があるかわからない」
「そうした場所だよね」
「よく見張っておこう」
こう言うのでした。
「ここはね」
「うん、ここはね」
トートーが先生に言ってきました。
「僕の出番だね」
「そうだね、トートーは夜目が利くからね」
「梟だからね」
夜は何といってもです、この鳥です。小劇場は暗いので夜と思ってもいいのです。
「任せてね」
「頼む」
「うん、そういえばね」
「何かあったのかな」
「さっきの連中だけれど」
トートーは小劇場の中を見回しつつ先生に言いました。
「いるよ」
「あのガラの悪い人達が」
「うん、ここにもね」
「偶然かな」
「そうじゃないかな」
トートーはその大きな目をくるくるとさせつつ先生に答えました。
「少なくとも今はね」
「あの子達に目をつけているかどうかは」
「断定出来ないよ」
そうだというのです。
「まだね」
「決め付けはね」
「絶対によくないよね」
「それはね」
先生が絶対にしないことの一つです。
「じっくりと見てね」
「そのうえで判断しないとね」
「うん、駄目だからね」
「じゃああの人達も」
「まだこれからだよ」
「しっかりと見て」
そして、と言うトートーでした。
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