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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第101話 少年は選びたいようです


Side ネギ

「お、オスティア総督……!?」

「おや……?それにそちらの少年は……どこかで見た様な覚えがありますが?」


漸く夕映さんの出自を証明出来、風向きがこちらに来た所で横槍が入ってしまった。

一体誰だとそちらを向くと同時、エミリィさんが驚いた声を上げた。

多数の重装兵と大太刀を持った少年を侍らせた、どこか薄ら寒い気配を纏う壮年の男性。

この人がMM信託統治領新オスティア総督の―――


「(クルト・ゲーデルMM元老院議員………元、"紅き翼(アラルブラ)"メンバー……!)」

「ゲーデル総督。記念祭期間中オスティア市内での公権力の武装は、我々アリアドネー

騎士団にしか許されていないと記憶していますが。」

「いやなに、私は幼少より虚弱体質でしてねぇ。恥ずかしながら、部下を連れなければ

外出もままならない有様で……ごくごく私的なボディーガードの様なものです。」

「「「(嘘つけぇーー!?)」」」


まるで誰かに似せた様な飄々さでエミリィさんを躱すクルト総督。

だけど、話している隙にベアトリクスさんが僕のフードを被せて、後ろに下がらせて来る。

流石幼馴染、連携ばっちりだ。でも出来れば貴女達に下がって欲しい。


「それで?その虚弱体質の総督様が何の用です?」

「それがどうも理解しがたいのですが……ほぼ全裸の少女集団がアーケードで暴れていると言う

通報が総督府に入りましてね。私の街の風紀が乱れるのを放っておけず慌てて現場に赴いて

見たのですが………。」


白々しく尤もらしい事を言いながら懐を弄り、取り出したのは・・・!?


「この全裸の痴女集団、もしやあなた方ではありませんよね?」

『『『違います!!!』』』


写真が出た瞬間、女性陣が同時に否定した。

だって、先程僕が服を吹っ飛ばした時・・・いや、吹っ飛ばした"瞬間"が写真に収められて

いたんだから。コレットさんや夕映さんなんかは思いっ切り顔写ってるし!

本当に嫌な人だ。人を見た目で判断してはいけないなんて言うけど、この人は当てはまらない。


「それは良かった。天下の戦乙女騎士団員、白昼堂々路上ストリップ!なんてニュースに

なっていたら一大事です。では……これは調査の為に焼き増しして部下に配布を――」

『『『ちょっとぉぉーーー!?』』』『『『流石提督、話が分かる!!』』』

「とまぁ、冗談はさておき。先程も言いましたが……。そこの少年、見覚えがありますねぇ。」


部下さえも手玉に取って遊んでいたかと思ったら、ばら撒いた写真を空中で回収し僕に矛先を

向けて来る。拙い、相手に集中出来ているのが僕だけの状況じゃ、対応が遅れる・・・!


「さて、どこで見たのか……ああ、確か重犯罪賞金首の国際手配書で?いやいや違いますね。」

「(くっマズイですわねユエさん。)」

「(分かってるです、先程の通信と言い、何か裏が「ああ!そうか!」ッ…!」

「そうです、思い出しました!何と君は世界を救ったかの大英雄の御子息ではございませんか!

ああ、いや、この地ではこう言い換えた方がいいでしょうか?」


ポンと手を叩き、先程までの嫌らしい、人の良さそうな笑みを消し本性を露わにして、

僕に・・・最大の爆弾を叩き込んで来た。


「――かつて自らの国と民を犠牲にした魔女、災厄の女王。

エルザ・ファミリア・エル・プレミロディオルの遺児……と!」

『『『なっ………!?』』』

「……………っ。」


予想はしていた・・・から、何とか表情には出なかった・・・筈だ。

今まで隠され誤魔化されながらの話と、ラカンさんが話してくれた中で、そうじゃないかって

思っていた。王都オスティア時の第一王女、大戦後は女王となって、そして―――

オスティア崩落後は忽然と姿を消した、僕の母さん・・・。


「おや、これは意外ですねネギ君。これほどの事実を告げられてたじろぎもしないとは。」

「……推測はしていました。だから……驚きはしません。」

「ほぉ……十歳の少年が叫び出すでもなく泣き喚くでもなく。冷静ですね。

これは君に対する評価を少々改め「そんな事はどうでも良いんです。」……ほう?」


そう、僕に対する評価だとか何を企んでいるのかなど、どうでも良い。

それだけで・・・魔力が暴走しそうになる・・・!!


「貴方が元"紅き翼(アラルブラ)"だろうが何であろうが!僕の……母を侮辱しようと言うなら

ただ冷静ではいられませんよ。」
ズオッ―――!
「い、いけないネギく…さん!」

「フ………。」


魔力を溢れさせた事で煽りに乗ったと思ったのかベアトリクスさんは僕を抑えようとし、

クルト総督は嗤い、部下に攻撃命令を出そうとする。・・・僕の評価を改めた上であのくらいの

煽りで釣れると思ったんだろうか。だったらもう少し改めて貰おうか――と思ったら、

ガシャガシャと音を立てて、スーツの女性を先頭に白鎧の集団が現れた。


「待ちなさい!そこまでよゲーデル総督。今あなたにその子を逮捕する権限はないわ。」

『『セラス総長!?』』


今度はセラスさんが戦乙女騎士団を引き連れ広場に現れた事で、野良試合からの大捕り物かと

騒いでいた野次馬は騒然。今更だけれど、これ以上騒ぎを大きくする訳にはいかない。

かと言って簡単には逃げれないし、逃げたらアリアドネーまでが追手になるだろう。


「これはこれはセラス総長。逮捕などとは心外ですね。私はただ、総督としての責務がてら

市民との会話を楽しんでいただけですよ?」

「あら、そうでしたか?とてもそうは見えない物々しさでしたので。」

「何分虚弱体質なものでそれは申し訳ない。ですが……貴女の言う様にこの少年が逮捕せねば

ならないような危険人物ならば私も気をつけなければなりませんねぇ。

何しろ、かのジャック・ラカンと引き分けた偽ナギ本人だ。」

「「(偽ナギばれてるぅーーー!?)」」


白々しい言い逃れでセラスさんを焚き付けつつ、サラッと僕が偽ナギだと言う事まで

暴露される。まぁ当然か・・・横にいる僕と同じくらいの年の男の子が少なくともBクラスの

魔法使いだ。さっきから念話を使っていないのも、夕映さんもそれを警戒してだろうし、

ここは何とか政治的に収めてくれれば――


(『彼の挑発に乗らないでネギ君、狙いは貴方よ!手を出させて確保しようとしているの。』)

(『セラスさん!?』)

(『その男は危険よ、君達を賞金首に仕立て上げた一派の可能性が高いわ。

もしかすると『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』残党などより恐ろしい敵……。』)

(『いえそうじゃな――!』)

「おやおや。」

「…っ!?」


治めるどころか、迂闊にも念話を飛ばして来たセラスさん。まさかと思っていた所に来たせいで

僕が止める間もなくクルト提督の粘着質な声が割って入った。・・・だから。


「人聞きの悪い事を言う……いや思う、一体何を根拠に?いやいや良かった、口に出していたら

コレ、問題になってましたね?……兎も角セラス総長、脇役は舞台袖で大人しくしていて

貰えませんか。」

「なっ……!?」


リアルタイムで念話を盗聴され、更に脇役扱いされた事で頭に血が上ったセラスさんは

黙り込み、指揮官が居なくなった騎士団も動きが止まり、エミリィさん達はさっきから

ナギがどうとか言ってわっちゃわっちゃと騒いでいる。


「さてネギ君、試合は見せて貰った。いやはや驚いたよ。驚愕した、驚嘆したよ。見事な物だ。

君の才能はそれこそ千の賛辞に値する。紳士的な試合の中でとは言えあの黒姫と狼幼姫を退け

ジャック・ラカンと引き分けたのです。君の力は本物だ。全く以って空前絶後だ、前代未聞だ。

さて、しかし―――」


気取った仕草で髪をかき上げると、まるで愚か者を見る様にスゥッと眼が細められる。


「君は手に入れたその力で一体何をすると言うのです?平和な国の学園に戻って平穏に暮らす?

いやいや、そんな事は許されない。その力があれば君は……世界を救える。」

「………世界を、救う?」

「そう、彼等は戦の後の十年間身を粉にして尽力しましたが、まだまだ世界は理不尽に

満ちている。故に……力を持つ者は世界を救うべきなのです。君もそう考える筈です。

―――あの村の人々の様な犠牲を二度と出さない為にも、ね。」

「―――ッ!!」
ザワッ

今までで一番いやらしい笑みと共に告げられた、深い部分にある悲劇の記憶に身体が疼く。

な、ぜ、僕の村の事を知って?いや、なんでここでそんな事を引き合いに出すんだ?

地球にある、小さな村の事を――仇――地球にあるからこの世界に関係が無い?それが間違い
                               
な――敵――んじゃないか?魔法世界と旧世界を繋ぐゲートが近くにある村が・・・?


「君の上には父から繋がる歴史があり、父に迫る力まで得た。その上世界最古の王国の血を引く

末裔の一人でもある。汚名を着せられたとは言えこの世界の始祖の末裔、その血はこの世界の

正当な所有者の証だ。これらが何を意味するか分かりますか?君は君の価値を理解すべきです。

君にはこの世界を支配出来る力があるのですよ。」


考えを纏める間も与えられず、次々と訳の分からない単語を捲し立てられる。

汚名を着せられた?始祖の末裔?世界の所有者?なんの――


「如何です?私と手を組みませんか?君にも望む世界をプレゼントしましょう。」

「……………なんなんです、何の話をしているんですか?何者なんです……あなたは!!」
ゴォッ!!

遂に振り切れた思考が魔力を暴走させ、先程の威嚇とは比べられない魔力風が吹き荒れる。

両腕の『闇の魔法(マギア・エレベア)』の印が浮き上がり、焼かれるような熱を帯びる。

それを封じ込める様に拳を握った瞬間、更に風が強くなり、地面がひび割れる。


「駄目ですか……世界を支配するとはつまり、世界を救う手でもあるのですが……
ピッ!
フ、おやおやこれはこれは♪これで正当防衛が成立しました。」

「貴様……!」


そのひび割れた地面のごくごく小さな破片がクルト総督の頬を掠め、目論見通りになったと

嬉しそうに手を振り下ろし、控えていた重装兵達に攻撃命令を下す。


「丁重におもてなししなさい。」

『『『ハッ!!』』』
ドッ!!

命を受けた兵士が重厚な音を立てて突撃して来る。

あの装備はMM軍精鋭兵専用の障壁貫通付与の魔銃槍と縦長の盾一体剣。それに自動障壁と

反魔装甲の二段構えの全身鎧。中級どころか、上級魔法でも一撃では倒せない布陣。

強敵だけれど、今の僕の敵じゃない!


「"解放(エーミッタム)固定(スタグネット)千の雷(キーリプルアストラペー)掌握(コンプレクシオー)"

『雷速瞬動』!」
――――ィ――ン

遅延させていた『千の雷』を即座に術式装填、即座に半分を両足に回して高速移動すると

走った所には紫電が奔り、僅かだけれど帯電する。そして、残った分の『千の雷』を解放。

誘導されるように、兵士達の間と周囲に雷が奔って落ちて迸る。

ガカァァァアアアアン!!
「"遅延解放鍵"雷王の鉾" 固定掌握『雷天大壮(ヘー・アストラペー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー)』"

!」
ガキュンッ
「MM精鋭兵を一瞬で……!?」


敵を殲滅、即座にもう一つ遅延していた『千の雷』を術式装填してただ一人…いや、二人だけ

残っているクルト提督と少年に向き直る。するとセラスさんが後ろの騎士団に命令を出す。


「くっ、仕方ありません!あの少年を捕えるのです!総督を守りなさい!」

「えぇー……。」

「あれはちょっと無理ってゆーかー。」


まるで統率の取れていない戦乙女騎士団・・・成程、このクルト総督が唯一の武力組織と

認める訳だ・・・。学園都市の警備に当たっていたから治安維持には持って来いで、尚且つ

扱いやすく戦となれば蚊帳の外に出来る。つまり、この二人を倒せれば―――


「いえ、それには及びません。」
ザンッ!!
「……!?」

「ほぉ、物理攻撃はまるで効きませんか。本当に雷の上位精霊だ。こんな化け物相手に素手で

殴り合いとは流石ラカンさん……ですが。」


気を逸らした瞬間左腕と左足が吹き飛び、右足も断たれる。雷化していたから助かった・・・

じゃない、両足がくっつくまで動けない!しかも今のは・・・魔法障壁を貫通された。

それにあの剣技は―――!?


「魔を調伏する我が剣技、受けてみなさい。」
ヒュッ!
「く……!"兵装転換"!!」
ジャコンッ

クルト提督が剣閃を放つと同時、『雷天大壮』を解放・固定して右手に装填して、

更に左で雷の魔法の矢を一発だけ撃つ・・・!

バシュッ!
「ほう!」
ドッ
「っ、く……!」


退魔の剣を魔法の矢で軽減して、生身で受ける事で掠り傷で済む。でも、これで間違いない。

これは神鳴流の"斬魔剣 二の太刀"!


「"右腕解放固定 『掌握(コンプレクシオー)』"!!」
ガキュンッ!
「いやはやこれは本当に驚いた!あの一瞬で斬魔剣を見抜いた上対応した事もそうですが、

絶対と言っても良い強化術を自ら解くとは。尋常な精神力ではありませんね。」

「お褒めに預かり光栄ですよ……!」


決戦奥義の"雷帝剣"や"炎帝剣"を除けば多分、雷化した僕に唯一有効な技を避けられたのに

余裕の笑みを崩さない提督。目標以外を傷つける事無く斬れる神鳴流奥義で僕に傷を付けた

技の粗さと言い、一度対応されたくらいでは有利になる接近戦に持ち込まない余裕。


「やっぱり詠春さんでなく愁磨さんが師匠なんですね。すみませんが、分かった以上そんな

荒い技にはもう当たりませんよ。」

「やはり分かりますか。……しかし何故、もう当たらないと思うので?」

「な、何故って。自慢する訳ではありませんが、神鳴流に限っては愁磨さんの技でも奥義まで

なら避けられるだけの修業をさせられましたからね!して貰いましたからね!」

「完全に本音が出た!?」


仕方ないじゃないですか、本当にきつかったんですから!有り難かったんですけど!

と、初めて喋ったのがツッコミの少年に提督が嘆息しながら手を出すと、何処からか

紫の鞘と柄が特徴的な日本刀を取り出し、元持っていた大太刀と交換する。


「コホン。まぁ、所詮は修行の一環。貴方に避けさせたのは一つずつだったのでしょう?」


日本刀を逆手に持ち脇に構える、居合の様な妙な構えを取り、笑みを消す。

一つずつってなんだ?神鳴流は複数の技を撃てないからその特性に外れた、手数による

威力増大の"千変万化"って言う奥義が出来た、って―――


「神鳴流我流奥義 "合斬剣"!!」
ヒュッ!

決して速くはない居合から、全く鋭さを感じさせない剣閃が放たれる。

嫌な予感さえしない謎の技に冷や汗をかき、物魔両方、最大レベルの障壁を張る。

パパァン!
「な、ぁあっ!?」
ザンッ!
「ネギ!」「ネギ様!?」


現状僕が張れる最強の障壁が、まるで紙切れの様に一切の抵抗を見せず切り裂かれて、

その衝撃で避ける事も出来ず肩口に大きな裂傷が出来上がり、術式兵装まで解除される。

なん・・・何だ今の剣は!?確かに僕は防御系魔法は得意じゃないけれど、どっちかの

障壁だけならともかく、両方の障壁を簡単に斬った上に、雷化した僕まで斬った?

そんな、対象を複数選べる神鳴流の剣技なんて――


「――ある筈が無い、故に我流なのですよネギ君。ああ、確かに私の技は荒い。総督業の

せいで碌な修業も出来ず精練されてもいなければ、威力も高くない。気力量とてB級達人と

比べるべくも無く少ない……。ではどうするか?」

「何してんのよネギ!!」


長い提督の話の間に回復した明日菜さんが、再度刀を構えた所でペンダントを剣化させて

突撃してくる。彼女の能力は知っている筈なのに、その顔にはまた笑みが戻っている。

方法は分からないけれど、まさか―――!?


「これはこれは随分とお転婆なお姫様ですね。少々調教が必要でしょうか?」
ヒュッ!
「そんなの効かないわよぉ!!」
ヒュゴッ!

僕に向けたのとは違い、肩に担ぐようにした状態から打ち下ろすように抜かれた居合から

勢いのある剣風が飛び、明日菜さんは得意の大上段から、能力が発動している事を示す淡い

光を帯びた大剣を振り下ろす。

ガギィィィィン!!
「ちょ、なんで………!」

「ふふふ、良い反応です。そんなに意外でしたか?」
ボッ!
「きゃあっ!」


いつもならば熱したナイフでバターを切る様に無効化される気の攻撃が、まるで本物の刀と

鍔迫り合いをしているように大剣を叩き、追撃によって明日菜さんが弾かれる。


「この程度は打ち消して欲しかったのですが……まぁ良いでしょう。

さて、ネギ君。様々疑問はあると思いますがこちらの話を優先させて頂きましょう。」
ドッ!
「ぐっ!」


言いながら倒れた僕の首に膝を乗せて押さえつけ、刀を突き立てて動きを封じて来る。

僕への警告兼、人質って言う事か、クソッ・・・!だけど話にさえ乗って居れば時間は稼げる。


「ふ…計算高いいい目だ、期待してしまいます。しかし……君はその力を誰に向けるべきか

分かっているのですか教えて差し上げましょうか、君にとっての真の敵を。」

「僕にとっての……真の、敵?」

「ピンポーン♪さてここで問題です。」


話しを聞き流そうとしたけれど、それを見透かしたような話題を振って来る。

僕にとっての敵?そんなのはフェイト達に決まっている。それが本当の敵でなくてなんなんだ?


「君にとっての真の敵とはどれでしょう?

A・世界滅亡を企む謎の秘密組織。B・君の両親を奪った誰か。

C……君の村を焼き、君の人生を根本から変えてしまった何者か。」


提示された選択肢を考えてみる。A、これはフェイト達『完全なる世界』の事だ。

Bは選択肢が多い。MM元老院、旧オスティア関係者、『完全なる世界』、その他の秘密結社、

"英雄"を憎む賞金首・・・考えたら旧・魔法世界全体が対象にさえ成り得る。


「Aは現在、Bは未来、Cは過去。Aに突き動かされていると見えて実はBしか見ていない――

と見えて、本当の所はCのみを原動力として未来に進んでいる。」


そして、C。そう、僕の力の源泉は間違いなく"闇"。その理由は『村を焼いた者への怒り』、

『何も出来なかった自分への憎悪』と・・・『彼等への、力への羨望と渇望』。でも――


「違うのでしょう?本当は「―――ええ、そうですよ。」
ガカァァン!!
「む……!」


確信した瞬間、MAXまで練られた『闇き夜の型(アクトゥス・ノクティス・エレベアエ)』に加え『雷天大壮』



発動、同時に『白き雷』で牽制と魔力供給をして距離を取り、もう一つ『千の雷』を取り込んで

『雷天大壮Ⅱ』改め『雷天双壮(タストラパー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー)』を発動させる。


「僕が今見ているのは、その少し先……ほんの少しだけ先ですよ。」

「だからこそ、私と共に来るべきです。君を更に先へ連れて行ってあげますよ?」


この人は僕と同じだ。あの人達に憧れて、力を求めて、自分には"開発"して挫折しながら

我武者羅に修業するしかないって思った人なんだ。ただ、一番にしたものが違う。


「ふ……ふふふ、お断りします。貴方なんかとは絶対に手を組みません。」

「………残念、では君はただの危険分子だ。」


裏切られた子供のような顔で刀を構える提督。だけど、微かに構えが正眼より下がっている。

恐らくはさっきの反則じみた技の反動。連続して使えるのは3・4回で、それ以上使えば刀を

振る事すら出来ないくらいくらいの。逆に言えば・・・あと1・2回は使って来るかもしれない。


「(突っ込むのは得策じゃない。でものどかさんや夕映さん達に向けられたら・・・・

打開策が無い訳じゃないけど・・・。)「パル!!」

「あいよぉーー!」
ヒュッ パポポパンポーーン!
「むっ!?」


のどかさんの掛け声と共に全方位から煙玉のような物が広場に投げ込まれて、視界が真っ白に

なる。は、ハルナさん(達?)が助けに来てくれたのか?追跡魔法妨害入りの魔法具まで使って

貰って・・・決着を付けたい所だったけれど、負傷している今は引くのが得策!


「のどかさん、先導を!」

「りょ、りょうかいですー!」


頭を打ったのか動かない明日菜さんを抱え、視界が閉じた中をのどかさんのアーティファクトの

力で突破して、後ろ髪を引かれながらもその場を一気に離れる。

今は、こうするしかない。皆を危険に晒す訳にはいかない。今は、今は―――

ギリッ
「(いつまでこうしている気だ、ネギ・スプリングフィールド・・・・!?)」


自分の不甲斐無さに、無力さに、無知さに押し殺されそうになりながら、

僕は逃げるしかなかった。

Side out

 
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