田んぼ
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先輩マジパニック、同級生マジパニック、後輩マジパニック
夏は暑くて、冬は寒い。
都市へのアクセスは最悪だし。
今の時期は、みんな収穫でぴりぴりしてる。
でも、僕はここにいるべき人間なんだって爺ちゃんは言うんだ。
ここから出ちゃならんって。
爺ちゃんにそう言われるたびに
やだよ、俺だって都会人になりたいって。
反発してたけど、実は爺ちゃんの猟銃握ったときから
爺ちゃんの言葉の意味、なんとなくわかってたかも知れないナ。
あ、そうだ。
去年の夏あたり。
白いワゴンがアイスクリームの移動販売してたの覚えてる?
いくらここが田舎だからって、
さわら商店でアイスクリームぐらい買えるのにさw
でも、そこはさすが田舎もん。
物珍しさからか、みーんな集まっちゃってw
めったにこっちまで降りてこない
奥川の爺様まで降りてきて、牛乳アイスを買ってたの覚えてる?
あのワゴンさ、ウチの田んぼの前で止まってたじゃんか。
だからさ、学生連中がアイスを食べ終わった後、棒やら袋やらをそのまま
ウチの田んぼにポーイってしちゃうんだよね。
そうそう、それからだったんだよね。
ウチの田んぼに有刺鉄線を設けたの。
ちょっと、やりすぎなんじゃないって思ったし。
正直それ意味あるのって?内心思ってたけど
爺ちゃん、既に工事費込みで有刺鉄線つけるのに200万近く出したらしくて。
ツッコむにもツッコめないまま、結局、本当に有刺鉄線が出来ちゃったの。
うん。
ポイ捨てが変わることはなかったよw
むしろ、学生たちのポイ捨ても増加傾向になっちゃって。
アイスクリーム屋の方も売れ行きの良さからだと思うんだけど
こっちにくる頻度もどんどん増えて行ったの。
爺ちゃん?
黙ってたよ、ず~っとね。
田んぼに貯まったアイスの袋も棒も掃除せずにサ。
学生たちに注意するわけでもなく。
アイスクリーム屋に文句言うわけでもなく。
最後の日に、あのアイス屋のワゴンに乗ってた人覚えてる?
って、知るわけないかw
初めて話すワケだし。
いや、この事じゃなくて。
君と。
たぶん、普段ワゴンに乗ってたおっさんの娘だと思う。
バイト雇うほど余裕なさそうだし。
19とかそこらのもの静かな感じの女の子。
学校帰りにスン輔の家に遊びに行く時に見て
へー、かわいいなーって思ってたんだよね。
その日、ウチに帰ったのは20時くらい。
したらさ、まだ白いワゴンが止まってるの。
え、夜間営業!?って一瞬思ったの覚えてる。
馬鹿だよね、んなワケないのに。
電気もついてないし、人も乗ってないし。
明らかにおかしいのに。
まぁ不思議に思いながらも、ウチに帰ったらサ。
その、なに?
うーん、爺ちゃんが犯してるんだよ。
あの白いワゴンに乗ってた子を。
さるぐつわカマしてさ。
あのさ、その当時90近いんだよ?ウチの爺ちゃん。
そりゃ普段の様子から見て、元気だなーとは思ってたけど。
まさか、そんな精力まであるとは思ってもいなかったサ。
俺は、そのまま居間の戸を閉めて
そそくさと二階の自分の部屋に上がったよ。
通報なんてしたら爺ちゃん捕まっちゃうだろうし
なんていうかその日は自分の部屋から出なかった。
はっきり言って怖かったんだよね。
あの時の爺ちゃんの顔。
思った事と言えば、女性の好みは遺伝してるんだなって事。
アホでしょ。
うん、今でもそうだと思う。あ、文章で気付いてた?w
いや、そのときはあんまり考えたくなかったのかも。
爺ちゃんの怖い顔見るの、僕は死ぬほど嫌いだから。
次の日の朝、なんとなく思ってたとおり
白いワゴンもなくなってたし。
女の子もいなかった。
そのまま爺ちゃんの作った焼き魚食って、学校行ったんだ。
モーちゃんにも、スン輔にもこの事話せなくてさ・・・
だって、なんて言えばいいのサ。
「うちの爺ちゃん、昨日19の子を犯してたんだよね」って?
新手のAVの悪影響かと思われるよ。
・・・・いや、今時そういうのアリそうだねw
そうそう、その日に校内放送かかってさ
放課後、アイス買い食いしてた生徒の呼び出しがあったんだよね。
顔もみーんな割れてて、あっさり犯人学生はみーんなでお説教くらって。
ウチの田んぼの清掃っていうか、ぽい捨てしたアイスの袋やら棒の回収をする事になったんだ。
ヤだったよ、先輩とかがウチに謝りにくるんだよ?
絶対、後で僕に飛び火するでしょ。
校内いじめ確定だよ。
校内いじめの典型的な形式だよ。
『現代版 いじめに対する解釈 』とかいう教員向けの教科書に
絶対に乗る一例だよ、これ。
そう思ったから、とりあえず早退して一目散に家帰ってサ
僕がここに住んでるって事、バレないようにって。
馬鹿だよね、タメがバラしたら一発なのに。
いよいよ呼び鈴が鳴って、ポイ捨てした生徒たちがウチに謝りにきたんだ。
先生が率先して生徒たちにも謝らせてた。
形式的だったけど、爺ちゃんはすごい丁寧に対応してた。
それじゃ是非って事で、うちの田んぼのゴミ収集が開始されることになってさ。
爺ちゃんが有刺鉄線を外して、先生と生徒に「どうぞ」ってね。
見つからないように、窓からその様子みてたんだけど。
ポイ捨てした学生の中にはモーちゃんもいてさ、
なんだよ、あいつもやったのかよって思ってた。
それにしても、これから田んぼに入ってダルいゴミ収集を開始するって事で
先輩たちはマジ不機嫌、同級生もマジ不機嫌、後輩も同じくマジ不機嫌。
上 横 下 の三方向からのいじめが起きるのは明白だったね。
「お前の家の田んぼがあそこにあるからいけねぇんだろ?」
とか
「先輩の田んぼが広いのが悪いっすから」
とか
さまざまな理由で殴られるのは目に見えてる。
この時、爺ちゃんを殴ろうって決めたんだ。
「僕を田んぼの家に生んだのが駄目なんだよ」ってネ。
いざ、生徒たちと先生が田んぼの中に入って行ったところで
爺ちゃんは有刺鉄線を閉めたんだ。
うん、田んぼからは出てこなれない。
したら、爺ちゃん手元のアンテナついた機械みたいなやつ取り出して、そのレバーを回してさ
その瞬間、先陣きってた先生の地面が破裂してね。
泥と水しぶきと何となく赤いのがぼかーんって散ったんだ。
みーんな何が起きたのかワケわかんなくて
先生のいた場所に近寄ろうとした先輩も同じくぼかーん!
先輩マジパニック、同級生マジパニック、後輩マジパニック。
んでも、動けば動くたびにぼかーん、ぼかーん、ぼかーんって。
皆はなんとなく、下手にその場から動いたら爆発するって事に気付いてさ
その場から爺ちゃんに震えた声で何かみんな怒鳴ってるけど
みんな一斉にめちゃくちゃ言うもんだから、まったく聞き取りゃしない。
僕としては、え、これ爺ちゃんがやったことなの?ってカンジ。
でもどうやら爺ちゃんの特に動じない後姿からしてそんなカンジ。
したら、爺ちゃんさ。
有刺鉄線をまた開けて
自ら田んぼに入ってさ、一番最後に入って行ったモーちゃんの腕つかんで
じゃぶじゃぶモーちゃんだけ連れて上がって来ちゃったの。
みーんな、その開いた有刺鉄線に向かって走ってくるもんだから
爆発、爆発、爆発
遂に一人になっちゃった先輩がさ、ひざまづいて
ごめんなさいって泣き叫んだ時にさ
あ、コレ地雷?ってことになんとなく気付いた。
そっか、だから200万も掛かったのかなって事もね。
そこから2時間くらい経って、最後の爆発の音がしたっけナ。
普通さ、警察くらい来ると思わない?
ぜーんぜん。
田んぼには足とか頭とかバラバラのまんまだし、カラスがそれつついてるし。
田舎の警察の肝っ玉の大きさに驚いてた。
いや、今となっては違うってわかるけどw
モーちゃんのことも、爺ちゃんがしでかした事も(たぶんね)
気になったから、すぐに居間に向かったらさ
そこに居るのは裸で縛られてるモーちゃんと、
夕食の準備してる爺ちゃん。
怖かったけど、聞いたよね
さっきの何?って
したらさ
「ロシア製」だって。
ちげぇよ、ジジィ。
そこじゃねぇよ。
先ほどてめぇが自らの田んぼで行った殺人と
ここに居る裸で縛られてるモーちゃんの事だよ。
第一、モーちゃんがこんなにエロい体だって事にお前は気付いてたのかよ。
「それ、今日の晩飯」
爺ちゃんの答えは一言だけ
だからさ、言われた通りに貪り食ってやった。
さるぐつわカマしてるから声もでねぇし。
モーちゃんの事、支配してやったんだよね。
晩飯だから、泣いてても構わないんだよね。
だって、どうせ明日の朝には消えちゃうだろうし。
ううん、実はちょっぴり朝になってもモーちゃんが隣に居てくれる事を期待してた。
したらさ、朝になってもモーちゃんは俺の隣で泣いてた。
だからヨシヨシしてあげたんだよね。
もう怖くないよって。
初めてモーちゃんにちゅーしてあげたんだ。
それでさ、一つだけ聞いてもいい?
どうやってあの田んぼから逃げられたワケ?
あ、動くなネ。
普段、熊とか撃ってるから、コレで。
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