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美しき異形達

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第五十話 明かされる真実その十四

「その知識はな」
「サン=ジェルマン伯爵からですね」
「学んだものじゃった」
「そうですね、ですが」
「君のお祖父さんは不老不死は求めなかった」
 錬金術のこの極意はというのだ。
「多くの黄金を資金として得たことは間違いないが」
「不老不死はですか」
「そちらには興味がなかったのじゃ」
「だからですか」
「寿命を全うしたのじゃ」
 そして今はいないというのだ。
「そうなのじゃ」
「そうですか」
「そしてじゃ」
 さらに言う博士だった、自分から。
「サン=ジェルマン伯爵じゃが」
「はい、あの人は今は」
「そのこともわからぬ」
 こちらの伯爵の所在もというのだ。
「これがな」
「そうなのですか」
「調べてみる」
 サン=ジェルマン伯爵の所在もというのだ。
「こちらもな」
「お願いします」
「うむ、まああっちの伯爵はな」
 サン=ジェルマンのことだった。この場合の伯爵とは。
「神出鬼没、何時何処に出るのかな」
「わからない人ですか」
「それで有名な方じゃ」
「じゃあお知り合いに探してもらっても」
「カリオストロ伯爵にしてもじゃがな」
「中々ですか」
「わからぬやもな」
 首を傾げさせての言葉だった。
「まあな、それでもじゃ」
「はい、お願いします」
「つてを使ってみる」
 その知り合いのというのだ。
「ではな」
「それじゃあ」
「さて、これで今話せることは終わった」
 これで、というのだ。
「後はじゃ」
「ああ、後は」
「羊羹のおかわりはどうじゃ?」
 こう薊に言うのだった。
「まだまだあるぞ」
「それはまた気前がいいな」
「ほっほっほ、甘いものもお酒も好きでのう」
 博士は薊の笑顔に老人の飄々とした笑いで返した。
「いつも用意しておる」
「甘いものもか」
「それで今は羊羹がじゃ」
「あるんだな」
「そうじゃ、遠慮は無用じゃよ」
「ではです」
 博士が言うとだった、ここで。
 眼鏡をかけショートヘアにしたスーツとズボンの美女が出て来た。知的な美貌と長身、見事なスタイルが目立つ。
 その美女がだ、こう博士に問うた。
「これから切りますか」
「うむ、そうしてくれるか」
「皆さんも召し上がられますね」
 美女は薊達にも顔を向けて問うた。
「羊羹のおかわりを」
「ああ、頼むな」
「お願いします」
 薊と裕香が一行を代表して答えた。
「この羊羹美味いしさ」
「おかわりが欲しくなりました」
「それでは」
「ああ、ただな」
 薊は美女に応えてからだ、そのうえで。
 美女が出て来た研究室の奥の方に顔をやった。研究室の天井にまで届いている本棚が横に二列あってだ。
 その横二列の本棚が縦に何列も連なっている、そしてそれが先が見えなくなるまでになっている。その研究室の向こうを見てだ。 
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