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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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本当の強さ

カッ

サラさんが光ったかと思ったら、木になりかけていたタンさんは普通の人間の体へと戻っていく。一体どうしたんだ?何が起きたのかよくわかんないぞ?

「体が・・・元に戻った・・・!!」
「おいサラ!!どういうことだ!!」
「なぜ魔法を解くの!?」
「病気をばらまいて森を奪おうとしている悪者だって・・・」

元に戻った自分の体を見つめるタンさんとサラさんが魔法を解いたことに驚く村人たち。サラさんはそんな村人たちを見ながら答える。

「それは・・・私のついたウソだ」

サラさんは真面目な顔でそう答える。ウソ・・・?さっきの話がか?

「なっ・・・どうしてそんなこと!!」
「そうよ!何を言い出すの!?」

村人たちはサラさんの言うことに騒ぎ立てる。サラさんは腕を組み、その理由を答える。

「この森を守るためにやったんだ」
「森を守る・・・?」
「どうしてタンさんたちを閉じ込めることが森を守ることになるんですか!?」

ざわめく村人たちとサラさんに問いかけるウェンディ。サラさんはそんなみんなを見ながら答える。

「私は森の声を聞くことができる。タンたちが来て、しばらくしたころ・・・森が私に助けを求めてきた」

サラさんはある日助けを求めてきた木を触ったところ、その木は中身がなくなっており、中からみたことのないような液体が出てきていた・・・そう・・・木が病気にかかっていたのである。

「木が病気に・・・!?」
「ああ・・・今まで見たことのない病気だった。全て森が教えてくれたよ。
原因はタンたちが持ち込んだ病気の種だとな」
「俺たちが持ち今こんだ・・・?」

タンさんは心当たりがないようで驚いた顔をする。さっきサラさんはウソだといったけど、全部が全部ウソってわけではないのか・・・

「そうだ。お前たちが以前住んでいたところに存在していた病気の種・・・お前たちにはなんともないが、私たちにとっては死に至る病気だ」
「死・・・」
「ずっと森から出たことのない村人たちは、その病気の免疫がなかったのね」
「森の木すら死なせてしまう病気だもんね~・・・」
「恐ろしい病気だな・・・」

でも、タンさんたちはその病気を持ち込んだという認識は持ってなかったんだ。だから今回みたいな互いの勘違いが起きたわけか・・・

「私の魔法は生命力を操る。それを利用して木々を治療していった。
しかし・・・治療は追い付かず、病気は動物たちにも広がっていったんだ。
私はこのままでは森のみんなが死んでしまう・・・そう考えた。
たからタンたちを屋敷に閉じ込めたんだ。村人たちに協力してもらうためにタンたちを悪者にして・・・
森を守るためなら、私はどんなことだってしてみせる・・・!」

そう言うサラさんの眼差しは真剣そのものだった。森のために・・・簡単そうで、そうできることではないはずだ。

「だったらなおさら・・・タンにかけた魔法を解いたら危険だろ!?」
「心配するな。タンたちと同じように私たちも病気の種になれてしまえば発症しないんだ」

サラさんはマキくんに視線を動かす。マキくんはようやく目覚めたようだが、サラさんの視線が怖いのか、ビクついている。

「そして大丈夫になったことをそのガキが証明してくれた。勝手に一年も屋敷に出入りしてな。
時間はかかったが・・・この森はもう安全だ」

そう言うサラさんの顔は清々しいものだった。サラさんは初めから、自分たちが病気になれるのを待っていたんだ・・・

「タンさん!!」

すると屋敷の方から数人の男たちがタンさんに向かって走ってくる。もしかして、木になっていたっていうタンさんの仲間たちか?でもなんで元に・・・

「あ・・・」

俺はさっきサラさんの言っていたことを思い出す。そういえば・・・サラさんのかけた魔法は時を待つ魔法・・・つまり、最初から木になった人たちは元に戻すつもりだったんだ。

「サラ・・・お前最初から、いつか魔法を解くつもりだったのか?村人たちが病気の種に慣れたら・・・再び俺たちが森で暮らせるように・・・」

どうやらタンさんもそのことに気づいたようだ。しかし・・・なぜかタンさんの表情は暗い・・・どうしたんだ?

「・・・あの時俺が、森を出たら他にいく場所がないと言ったから・・・」
「・・・それだけではない」

サラさんはそう答えたあと、突然震え始める。するとそのまま、フラッと倒れそうになってしまう。

「サラ!!」

しかしそのサラさんをタンさんが受け止める。

「・・・さっきの魔法で力を使い果たしてしまった・・・そろそろ・・・限界のようだ・・・」

サラさんはそういうと咳をし始める。すると口から血を吐き出す・・・まさか・・・

「・・・お前、病気に・・・!?」

「ああ・・・治療しているうちにかかってしまったんだ・・・私の魔法は自分以外のものにしか効かないから・・・
私が死んだら、みんなを治療できるものがいなくなってしまう・・・そしたら・・・この森はもう終わりなんだ・・・
だから一刻も早くタンたちを閉じ込めるしかなかった・・・12歳にしては、良くできた解決策だろ・・・?」

サラさんはそう言うと口を押さえる。そんなに病気が進行しているのか!?

「俺が・・・俺があの時お前の話をちゃんと聞いていればこんなことには・・・お前はずっと訴えていたのに・・・
俺が本気にしようとしなかったから・・・!!」

タンさんも自分のやってしまったことに悔いて顔を押さえる・・・だけど・・・タンさんも悪いわけではないと思う・・・だって、タンさんたちは自分たちが病気を持ち込んだなんて気づいてなかったんだから・・・
サラさんはそんなタンさんを見て、鼻で笑う。

「フン・・・開発しか頭にないお前たちには本当にうんざりだ・・・もう顔を見なくていいと思うと清々する・・・」
「ウソつき!なんでそんなことばっかり言うんだよ!!」

サラさんの言葉にマキくんが反応して大声を出す。

「俺・・・知ってるんだ!サラ姉ちゃんが毎日崖の上の屋敷を見上げていたこと!
最初は屋敷の奴らが憎いんだと思ってた・・・でも違うよね?だって・・・だって・・・サラ姉ちゃん・・・いつも泣きそうな顔してたもん!!」

マキくんは泣きそうな顔でそう言う・・・マキくんは気づいてたんだ・・・だから屋敷に出入りなんかしてたのかも知れない・・・サラさんが毎日見ている人たちを見に・・・

「ガキが・・・」
「ごめんなさいサラ!私たち大人が気づかなきゃいけなかったのに・・・」
「情けない・・・あの頃は森の発展ばかりに目がいって悪いところを見ようとしなかった・・・」

村の大人たちもサラさんに言う。サラさんはそちらを見て押し黙ってしまう。

「サラ・・・お前一人が背負う必要はないんだ。どんなことだっていい!全部話してくれ!
どんな言葉も、どんな思いも・・・もう絶対に無視したりしない!!」

タンさんがサラさんを抱え混みながら言う。サラさんはそんなタンさんの頬にそっと手を伸ばす。

「・・・私の力が尽きる前に、お前たちの魔法が解けてよかった・・・」

サラさんは笑顔でそう言ったあと、涙を目一杯に浮かばせる。

「・・・だけどっ・・・本当は私・・・もっと・・・ずっとお前と一緒にいたかった・・・」

サラさんは大粒の涙を流し、目を閉じる・・・え?サラさん?

「・・・サラ!?しっかりしろサラ!?」
「私が助けます!」
「ウェンディ!何を・・・」
「安心しなさい。治癒魔法よ」

ウェンディはサラさんに魔力を当てる。しかし、サラさんの顔色はまったく良くなる気配がない!

「・・・シリル・・・どうしよう・・・魔法が効かない・・・」
「くっ!俺もやる!!二人でやればもしかしたら・・・」

俺は水天竜になりサラさんの治療をする。しかし・・・全然サラさんの様子はよくならない。

「体の奥まで病気が入り込んでる!」
「どうしよう・・・どうしたらいいの?」
「そんな・・・なんとかならないの・・・」
「サラ姉ちゃん!!」

マキくんや村の人たちも心配そうに見守る。なんとかしたい・・・だけど、どうすればいいんだ!?
このままじゃ・・・サラさんが・・・

「ぐ・・・」
「ウェンディ・・・」

ウェンディは涙を目に浮かばせる・・・頼む!!なんとか・・・なんとか治ってくれ!!

ポワ・・・

俺が祈るようにしていると、辺り一面に光の結晶が見える・・・何?これ?

「これは・・・」
「サラさんが守ってきた森や村の人たちの思い・・・」
「みんながサラさんを助けようとしてるんだ!」
「すごい~!!」

俺たちはその光の結晶を見てそう言う・・・するとウェンディは何かを思い付いたのか。突然その結晶を吸い込み始める。

「ウェンディ!?」
「シリルも!!吸って!!みんなの思いを私たちの魔力で繋げたらもしかしたら・・・」
「そうか!!」

サラさんを助けられるかもしれない!!

俺もウェンディと同じように光の結晶を吸い込む。すると・・・体中に魔力が溢れてくる。

「すごい・・・」
「これなら・・・」

俺とウェンディは魔力をサラさんに当て治療する。治れ・・・治ってくれ!サラさん!!



























しばらくすると・・・

「え・・・」
「サラ!!」
「サラさん!!」
「やった!!」
「よかった・・・!!」

サラさんは見事に病気が治り、目を覚ます。村の人たちの強い思いが・・・サラさんを助けたんだ・・・

「私・・・」
「サラ」

タンさんはサラさんを後ろから抱き締める。

「望み通りこれからはずっと一緒にいるぞ!」
「!?」

サラさんは顔を赤くするとタンさんを振り払う。

「バババ、バカッ!!あんなのウソに決まってるだろ!バーカ!!」
「サラ姉ちゃん・・・そのウソはバレバレだよ~」
「くくくっ」
「照れちゃってるね~」

村の人たちと俺とセシリーはそんなサラさんを見て微笑む。サラさんはツンデレですね。かわいいですよ
村の人たちとタンさんの仲間たちはその後、仲直りをした。本当に、お互いの誤解が解けてよかったですね。

「もう大丈夫そうね」
「うん」
「いいものを見せてもらったよ」
「僕も~」

俺たちは少し離れたところでその様子を見守る。誰かを思う気持ち・・・思いの力・・・か・・・例え一人一人の思いは小さくても、みんなの思いが集まればそれは大きな力になる。
まるで・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)みたいだな。

























「ウェンディ、本当に世話になった」
「シリルもありがとうね」
「いえいえ」
「私の方こそお世話になりました」

俺たちはこれからギルドに帰るため、村の人たちとお別れをしている。
タンさんはウェンディに向かって手を差し出す。

「お前は本当にいい魔導士だ。お前に出会えてよかった」
「ありがとうございます!」

ウェンディはタンさんに笑顔でお礼を言う。タンさんに出会ったおかげて、ウェンディはさらに成長したのかもしれないな。
俺がウェンディを見ていると今度はサラさんが俺に手を出す。

「あんたたちのおかげでタンと一緒になれたわ。ありがと」
「いえ。サラさんの病気が治ってよかったです」

俺もサラさんと握手を交わす。サラさんは突然俺を引き寄せると小さな声で耳打ちする。

「ウェンディちゃんと仲良くね」
「なっ・・・サラさんこそタンさんとラブラブしてください!」
「なっ・・・ち・・・違っ」

サラさんは俺にそう言われると顔を真っ赤にする。まさかのカウンターにやられたな。ドンマイw

「それでは皆さん!!ありがとうございました!!」
「サラさん!タンさん!お幸せに~」
「ありがとう!!ウェンディ!」
「じゃ・・・じゃあね」

俺たちは村の人たちに手を振りながら村をあとにする。サラさんとタンさん・・・うまく行くといいなぁ。























列車にて・・・

「「「「疲れた~」」」」

俺たちはマグノリア行きの列車に無事乗ることができ(切符代はサラさんたちにお借りしました)席に座って一息ついている。

「まったく・・・あんたいつのまにか怪物男と仲良くなってるんだもの!」
「シャルルこそ、森の人たちの仲間みたいになってたじゃない!」
「私はあんたを助けようと必死だったのよ!!」
「おい・・・お前ら・・・」
「二人とも~。落ち着いてよ~」

二人は席につくなり突然言い合いを始める。この二人は仲はいいのに・・・突然言い合いを始めるから勘弁してほしいよ・・・

「あ・・・」
「どうした?」

ウェンディはスカートのポケットから一枚の紙を取り出す。なんだ?

「ナナル村の依頼書・・・」
「入れっぱなしになってたのね」
「かばんはおいてきちゃったのにね~」
「それは言うなよ」

ウェンディはポケットから取り出した依頼書を見つめる。

「私・・・ギルドを出るときは絶対にシリルと二人で解決するんだっていってたよね・・・」
「そういえばそんなこと言ってたね~」

ウェンディに言われて思い出す。そういえばそんなこと言ってたな・・・俺も頑張ろうって思ってたし。

「結局ナツさんたちに助けられたけどね」
「まぁでも・・・二人とも頑張ったわよ」

シャルルは俺たちが落ち込んでいると思ったのか、慰めるように言う。俺は別に気にしてなかったけど・・・

「ううん。違うの。私ね、わかったことがあるんだ」
「わかったこと?」

ウェンディは俺たちを見ながらそう言う。何がわかったんだ?

「うん!ナナル村の事件を解決できたのは、ギルドの皆さんやヨシノちゃんが一緒に頑張ってくれたから・・・
今回のことだってお屋敷を脱出できたのはタンさんがいたからだし、サラさんが助かったのはみんなの強い思いがあったからだと思うの。
私は魔法でみんなの思いを繋いだだけ・・・
それからね。私が頑張れたのはシリルやシャルル、そしてセシリーがそばにいてくれたからなの」
「ウェンディ・・・」
「ウェンディ~!」
「優しい奴だな。ウェンディは」

俺は途中ではぐれちゃったけど・・・そう思ってくれてると助かる・・・

「私・・・すごい魔法を使ってなんでもできるのが強いってことだと思ってた・・・でも、そうじゃないんだね。
本当に強いのは、大切な仲間がたくさんいるってことだったんだね!!」

そういうウェンディの顔はとてもきれいだった・・・いつもよりもキラキラしている笑顔が、俺には妙に眩しく感じた。

「成長したな。ウェンディ」
「えへへ////」

俺が誉めるとウェンディは頭をかきながら照れ笑いする。本当に・・・すごい成長した・・・

「まぁ、外見は小さいままだけどね」
「!?」
「プッ・・・」プルプル

シャルルの一言でウェンディはショックを受け、セシリーは懸命に笑いをこらえる。余計なことは言わなくていいぞ?シャルル。
その後も俺たちは今回の旅のことを話した。いろんなことがあったよな・・・でも、俺たちはそのおかげで成長できた気がする。

しばらくするとマグノリアに到着し、俺たちはギルドに向かって走り出す。

「わあっ、シリル!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)が見えてきたよ!!」
「久々に帰ってきた~!!」
「待ちなさい二人とも!!」
「走るの速すぎ~」

俺たちはギルドに到着し、中に入る。そこにはギルドの皆さんがいつものように騒いでいた。

「シリル!!ウェンディ!!」
「いままでどこ行ってたの~?」

ナツさんとルーシィさんが俺たちに駆け寄ってくる。
はぐれた原因はナツさんたちにあるんですけど!?
するとウェンディはギルドに帰ってきたことが嬉しいのか、顔を緩ませる。

「何ニヤニヤしてんだ?変なもんでも食ったのか?」
「そんなわけないでしょ!!」

ナツさんをルーシィさんが叩く。この二人はコンビネーションバッチリだな。
ウェンディは二人を見て、一層笑顔になる。

「ここは本当にいいギルドですね!」
「「「?」」」

ウェンディの突然の言葉に俺たちは一瞬固まる。そりゃあ妖精の尻尾(フェアリーテイル)はいいギルドだよな?

「いけない!!私たち挨拶を忘れてました!!」

ウェンディはそう言うと俺の手を引っ張り入り口へと戻っていく。挨拶か・・・しっかりしてるなウェンディは。

「いくよシリル。せーのだからね」
「はいはい」

俺はウェンディにそう言われ返事をする。俺たちはギルドの皆さんに聞こえるように挨拶する。

「「せーの、ただいま帰りましたぁ!!」」
「「「「「「「「「「おかえり!!シリル!!ウェンディ!!」」」」」」」」」」

俺たちの挨拶を笑顔で返してくれる皆さん。妖精の尻尾(フェアリーテイル)は本当に優しくて、いいギルドだな!!









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
なんかブルーミストラル編はシリルの活躍の余地がなかったですね・・・
次回から本編に戻ります。
次回もよろしくお願いします。
 
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