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妹がいなくなった

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第五章

「けれどなんだよ」
「どうしてもか」
「寂しくて心配なのね」
「だから食うのもな」
 そちらもなのだった。
「四杯でしかもな」
「おかずもか」
「いつもより少ないのね」
「食欲も出ないしな」
 それに加えてだった。
「拳法の方もな」
「そちらもか」
「いつもよりはなのね」
「何か気が足りないんだよ」
 そちらもだとだ、自分でも言うのだった。
「駄目だな、今のあたしは」
「飯一杯分だけか」
「おかず一皿分だけ」
「ああ、その分だけな」
 まさにというのだ。
「駄目だよ」
「それでも今はな」
「我慢よ」
「花姫は帰って来るからな」
「待っていればいいのよ」
「そうだよな、あいつが帰って来たらな」
 その時はどうするのかをだ、虞姫はここで言った。
「とびきりの料理作ってやるか」
「何だ、その料理は」
「あんたお料理は得意だけれど」
「香港の海の幸を使ったな」
 そして、というのだ。
「広東料理を作るか」
「それをか」
「作るんだな」
「それで帰ったお祝いをするか」
「ああ、寂しいと思っていてもな」
「何もならないからね」
 両親も娘のその言葉をよしとしてこう言った。
「それじゃあな」
「あと少しで帰って来るから」
「その時の用意をしろ」
「お祝いのね」
「そうするな」
 虞姫はこう応えてとりあえずは気を取りなおした。そうしてだった。
 花姫が帰って来るその日に合わせて料理の用意をしていた、その海の幸をふんだんに使った広東料理のだ。広東料理は彼女の一番得意な料理でもある。
 その料理の用意をしつつだ、遂にだった。
 その日が来た、すると。
 虞姫は即座にだった、駅に自転車を飛ばしてだった。
 そのうえでだ、駅前に来てだった。
 今か今かと待った、すると。
 学生達が来てだ、その中に。
 花姫の姿を認めた、するとすぐにだった。
 虞姫は彼女のところに来てだ、抱き締めて言った。
「帰ってきたな」
「姉さん、迎えに来たの?」
「三十分前にな」
 もう来ていたというのだ。
「ずっと待ってたんだよ」
「そうなのね」
「ああ、それじゃあな」
「これから解散して」
「家に帰ってな」
 そして、と言う虞姫だった。
「美味いもん作ってやるからな」
「広東料理?」
「あっ、わかるか?」
「だって姉さん広東料理が一番得意だし」
 それに、というのだ。
「お祝いの時はね」
「いつも広東料理作るからか」
「ええ、わかってるわ」
 そうしたことをというのだ。
「それでなのよ」
「そうだったんだな」
「それじゃあね」
「それでもいいよな」
「姉さんのお料理美味しいから」
 これが妹の返答だった。 
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