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妹がいなくなった

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第二章

 その少女を見てだ、虞姫は母に笑って言った。
「花姫がいるしさ」
「だから花姫みたいにね」
「女の子らしくか」
「そうよ、全然女の子らしくないから」
 それで、というのだ。
「お母さんも言うのよ」
「ははは、母ちゃんはいつもそう言うな」
「そこ笑うところじゃないわよ」
「そうかな、じゃあこれから花姫を学校に送るな」
 香港にあるとあるお嬢様学校にだ、花姫はその学校の学生なのだ。
「自転車でな」
「ヘルメットはちゃんと被りなさいよ」
「あのドカタのでいいよな」
「普通のよ、あんなの女の子が被るものじゃないでしょ」
「あれ中々いいんだぜ」
「女の子ならもっとお洒落なものにしなさい」
「あれがお洒落なんだよ、あたしにとっちゃ」
 虞姫は豪快に笑って母に応えてだ、そのうえで。
 花姫にだ、こう言ったのだった。
「じゃあ行こうか」
「ええ、姉さん」
 花姫は優しい笑顔で姉に応えた。
「今日もお願いね」
「ああ、飛ばしていくからな」
「うふふ、姉さんらしく」
「すぐに学校に着くぜ」
 姉というより兄といった態度で言う虞姫だった、そして。
 二人で家の外に出て自転車に乗った、花姫は虞姫が運転する自転車の後ろの席に横に座って乗ってだった。
 前に座っている姉にだ、こう言った。
「それじゃあ」
「しっかり掴まってろよ」
「いつも通りね」
「ああ、ちゃんとな」
 花姫は姉のその言葉に応えてだ、実際に。
 横に座った姿勢で虞姫の背中から腹まで両手を回して掴まった、そのことを確認すると。
 ドカタのヘルメットを被った虞姫は自転車を走らせた、自転車は彼女の言う通り凄まじい速さだった。その自転車の中で。
 花姫は姉にだ、後ろから言った。
「私はね」
「ああ、何だ?」
「姉さんはそのままでいいと思うから」
 こう姉に言うのだった。
「ずっとね」
「ガサツでいいんだな」
「ガサツじゃなくて」
「違うっていうのかよ」
「頼りになる」
 これが花姫の虞姫への言葉だった。
「とても強くて引っ張ってくれる」
「ははは、何かあたしが兄貴みたいだな」
「うふふ、そうかもね」
「よく昔から男女って言われてたしな」
「けれどね」
「花姫にとっちゃか」
「うん、凄く強くて頼りになる姉さんよ」
 それが虞姫だというのだ。
「だからこれからもね」
「このままでいいんだな」
「私はそう思うわ」
「そうか、じゃあこれからもな」
 虞姫は妹の言葉を受けて笑顔でこう言った。
「宜しくな」
「ええ、姉さん」
「もっともっと強くなるからな」
「香港で一番?」
「いや、本土も含めてな」
 中国自体も含めてというのだ。
「一番の拳法家になってやるぜ」
「ジェット=リーみたいになるね」
「ジェット=リー越えるぜ」
 彼以上に、というのだ。 
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