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猫達の里親

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第六章

「地雷を触るみたいにして」
「慎重にだな」
「ええ、そうしてね」
 自分の夫にこう念を押した、そしてロリィにも言うのだった。
「貴女はここにいて」
「ここに?」
「そう、それで他のお客様が来たらそのお客様の相手をしてね」
 クレーマーの相手はするなというのだ。
「お願いするわ」
「わかったわ、それじゃあ」
 ロリィは母の言葉に素直に頷いた、そしてだった。 
 この場は大人しく母親に言われた通りにすることにした、母と父でその客のところに向かって応対した、するとだった。
 あれがない、これがない。あれを出せ、これを出せ。客はその暗い剣呑な顔で二人に対して次から次に文句をつけた。その客に対して。
 二人は大人しく応対した、それは嵐が過ぎ去ることを待っているものだった。しかし嵐は吹き荒れるばかりで。
 文句は続いた、そしてその文句は。
 店の品にも及んだ、とにかく色々と言う、その中で。
 アクセサリーのコーナーに行ってだ、猫のそれを見付けてこう言った。
「何、これ」
「どうかしましたか?」
「これ猫じゃない」
 こう二人に言うのだった。
「何でこんなものあるのよ」
「何故と言われましても」
「猫はね、魔女の使い魔なのよ」
 俗に言われていることを言うのだった。
「だからね」
「それで、なのですか」
「こんなのどうしてお店に置くのよ」
 こうクレームをつけるのだった。
「おかしいでしょ」
「おかしいですか」
「そうよ、おかしいわよ」
 こう言うのである。
「こんなの見たら不吉な気分になるわ」
「左様ですか」
「そうよ、こんなもの置かないでよ」 
 ロリィの両親に強く言う。
「いいわね」
「そうですか」
「そうよ」
「それ違うよ」
 だがここでだった、急に。
 ロリィだ、自分の場所から客にこう言ったのである。
「猫は不吉じゃないよ」
「何、この娘」
「あの、うちの娘でして」
 父が客に対して説明する。
「その、子供ですから」
「子供だけれど私言えるわ」
 はっきりとした声でだ、ロリィは客に言うのだった。
「猫は悪い子達じゃないよ」
「猫は魔女の使いよ」 
 客はむっとした顔でロリィに言い返した。
「悪魔の生きものなのよ」
「だから違うよ、そもそも魔女なんて」
 このことはだ、学校で先生に教えてもらったことである。
「只の魔女狩りで無実の人達をいじめてただけじゃない」
「魔女はいないっていうの?」
「いても悪い魔女がいていい魔女がいるって先生言ってたわ」
 先生に言われたことをそのまま言ったのだった。
「だからね」
「猫もっていうのね」
「うん、それに猫はただの使い魔でしかも見ていたら幸せになるよ」
 ロリィは今度は自分が猫達にしてもらっていることを言った。
「それに悲しい時とか寂しい時はいつも傍にいるのに何で悪いのよ」
「それは」
「それに凄く可愛いのよ」
 このこともだ、ロリィは客に言った。
「何処が悪いのか私全然わからないわ」
「それはね」
 ここからだ、客は持論をヒステリックにまくし立てた。魔女のことだけでなく様々な迷信めいたことをだ。それで店の外からも人が来た。 
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