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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第九幕その四

「はじめて見たわ」
「そこまでなんだ」
「先生はやっぱり凄い学者さんよ」
「そんなに凄いかな」
「ええ、言語学者としても凄いわ」
 実際先生は八条大学に来てからそちらでも有名になっています。その学識と見解の素晴らしさが認められているのです。
「じゃあその芥川さんの本も」
「作品の中の言葉もだね」
「そう、普通にわかるわね」
「大正時代の言葉も面白いね」
「そこでそう言うのがね」
 それこそ、というのです。
「先生らしいわ」
「学者として」
「ええ、お人柄もいいし」
 先生のそのこともお話するお静さんでした。
「本当にいい人が来てくれたわ」
「それで今回のことも頼めた」
「それでだね」
「そのこともいい」
「そう言うのね」
「うん、とてもね」
 またお話するのでした、動物の皆に。
「有り難いわ、神様と仏様達のご加護ね」
「そこはね」
「ちゃんとね」
「日本だね」
「神様仏様っていうのが」
「見事ね」
「実はね、この二日間お嬢様と彼に囁くだけじゃなくて」
 それに加えて、というのです。
「神社とお寺、キリスト教の教会と天理教の教会全部にお参りしてたのよ」
「あらゆる宗教のだね」
「この学園丁渡全部あるじゃない」
 お静さんはまた先生に答えました。
「神社から全部ね」
「うん、宗教関係も強い大学だから」
「それでなのよ」
「全部にお参りして」
「それでお二人のことをお願いしていたの」
 そうだったというのです。
「幸せになれる様にってね」
「ううん、お静さんっていい猫だね」
「そうだね」
 先生も動物の皆もお静さんのそのことを聞いて唸る様にして言うのでした。お静さんの心根をよく知ったからです。
「ご主人思いで」
「お参りしてお願いまでしてね」
「凄いよね」
「そこまでするなんてね」
「困った時にとも言うじゃない」
 その時の神頼みというのです、仏様にもお願いしているにしても。
「あらゆる神様と仏様にお願いしてるのよ、キリスト教もカトリックの神父さんだけじゃなくてプロテスタントの牧師さんにもお願いしてるから」
「それいいの?」
「それまずくない?」
「幾ら何でもね」
「カトリックとプロテスタント両方にって」
「幾ら何でも」
「ちょっとね」
 動物の皆はお静さんのその行動にどうかと返しました。
「何か日本じゃ普通だけれど」
「僕達それが信じられないから」
「いいのかなって思って」
「それで驚いてるんだ」
「今もね」
「ああ、日本じゃ全然変わりないのよ」
 カトリックもプロテスタントもです、それこそ。
「どっちもね」
「それが日本の特徴だね」
 先生もお静さんにこう言うのでした。
「宗教の宗派に然程違いはないね」
「ええ、神父さんと牧師さんでもね」
「そうだね、欧州じゃ違ったけれど」
「相当血生臭かったの?」
「そうだったからね、イギリスでも」
「日本だと宗派が違ってもね」
「仏教でもだね」
「あんなに壮絶に殺し合うことは」
 それは、というのです。 
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