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食事をしながら

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6部分:第六章


第六章

「それだけで充分にだ」
「監獄にというのだな」
「常に用意している。今もだ」
 その剣呑なものをさらに強くさせてタレーランに告げる。
「確かな証拠以外の何者でもないな」
「革命に対する罪か」
 その言葉にであった。
 タレーランは反撃の機会を見た。そのうえで言い返すのであった。
「それは貴殿もだな」
「私もだというのか」
「貴殿は多くの仲間を売っていないだろうか」
「ジャコバン派のことか」
「最初はジロンド派だったな」
 穏健的な共和主義の思想を持つ派閥だ。それに対してジャコバン派は過激、急進的な共和主義者の集まりなのである。
「しかしジャコバン派になりジロンド派を粛清したな」
「あれはロベスピエールのしたことだ」
 その独裁者に責任があるというのである。
「私はただの官僚だ」
「ロベスピエールだけであそこまでできたか」
 タレーランはさらに指摘してみせる、
「果たしてな」
「さてな。彼は優れた人物だったからな」
 それは否定できなかった。ロベスピエールもやはり優れた男だったのだ。そうでなければ革命の中で独裁者になれはしない。
「サン=ジュストもいたしな」
「つまり彼等に責任があるのか」
「また言うが私はただの官僚だ」
 こう言い切るフーシェだった。
「道具に過ぎない」
「道具がかつての同志ジロンド派はおろかジャコバン派の多くもギロチンに送り」
 ジャコバン派は互いに殺し合ってもきた。ロベスピエール、フーシェが言うには彼が多くの同志達を粛清してきたのである。それも事実だ。
「尚且つロベスピエールもギロチン台に送ったのだな」
「運命だな」
「運命によってか。彼は滅んだのか」
「そうだ。それだけだ」
 こう言ってみせるフーシェだった。
「私は何もしていない」
「革命に対する罪はあると思うが」
「知らないな。私は働いていただけだ」
 そしてだ。フーシェもこの言葉を出すのであった。
「フランスの為にだ」
「働いていただけか」
「そうだ。少なくとも私がフランスにとって害になることをしたか」
 タレーランにだ。このことを問うのだった。
「あれは言ってもらいたいものだな」
「ふむ。ないな」
 それについてはだ。タレーランも認めた。
「貴殿が世に出てからだ。それは一度もない」
「私はフランスを裏切ることはしない」
 フーシェの断言はここでもだった。だがこの断言はこれまでよりも強いものだった。
「何があろうともだ」
「フランスは絶対か」
「その通りだ。フランスは何を失った」
 タレーランに対してだ。さらに問うてみせた。
「私によってだ。何を失った」
「多くの人命だ」
「革命の敵が粛清されただけだ」
「皇帝もか」
「あの男は自滅だ。それを言えばだ」
 また反撃に転じたフーシェだった。タレーランをここでも見据えてだ。
 こう言った。剣の言葉で。
「貴殿もまた。あの男をだったな」
「フランスの為だ」
 タレーランもだ。全く悪びれない。
 
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