極短編集
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短編80「永久階段 」
今日は僕は早番だ 。いつも始発から数えて、3本目の電車に乗って出勤する。誰もいない地下鉄の、長い長い階段。僕は、スマホを片手に降りていった。
『あれっ!?』
もうすぐ階段が終わるはずなのに、見るとまだまだ階段があった。
『寝ぼけてんのかな?』
そう思い、またスマホを片手に、降りていった。
『変だ!いっこうに階段が終わらない』
僕は、スマホをしまい、階段の先を見ながら歩いた。しかし……
降りても降りても階段は、降り切れなかった。
『なんだこれ!?』
僕は、階段を駆け降りたが……
『なんなんだよー!?』
階段に終わりは来なかった。
ハアハアハア
僕は階段に座り込んだ。階段の下は見えていた。でも、どんなに降りてもたどり着けなかった。息が落ち着いた所で、僕は今度は、上に向かう事にした。階段の上は見えている。さっきそこから降りて来たばかりだ。だがしかし……
「マジかよ!!」
僕は叫んだ。登っても登っても、階段の上には、たどり着けなかった。そして、ふと周りを見てみると……
「わああああああ!!」
階段の至るところに、血のりがつき、きっと人間だっただろう、沢山の肉や骨が散乱していた。僕は焦った。その時だった!
「あっ!」
疲れた足がもつれ、僕は階段を、転がり落ちてしまった。
バタバタバタバタ……
体が階段に打ちつけられた。痛みがどんどん増して来た。転がり続ける中、もしかしたら僕は、無限に転がり落ちるのか!?と思った。
『死ぬ!』
その一言が浮かんだ。その瞬間!!
ドサッ!
僕の体は止まった。目が回って立てなかった。誰かの声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
焦点の定まらない目で見ると、駅員である事が分かった。駅員は僕を立たせてくれた。
「ありがとうございます」
僕はそう言って、頭を深く下げた。
「良かったですね……転がる事に気づいて」
『えっ!?転がる?』
その言葉に気付いて、僕が頭を上げると……
もう駅員はいなかったのだった。
おしまい
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