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ハイスクールV×D ライド30
木場の瞳は憎悪の対象……憎しみの象徴であるバルパーを写しながらも、超兵装ブラスター・ダークが写されていた。
「バルパー・ガリレイ、僕は『聖剣計画』の生き残りだ。いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き延びている。あなたに問いたい……何故あんな事をした」
憎悪を宿しながら超兵装ブラスター・ダークへと、その先に居るバルパーへと近付きながらそう問いかける。
「ほう、あの計画の生き残りか?」
「私はな、夢に見るほどに「お前の身の上話なんてどうでも良い。こっちには時間が無いんだ、長々とお前の身の上なんてどうでも良い話をしているなら、オレが聖剣計画の全てを話してやろうか!?」なに?」
バルパーの言葉を遮り四季の声が響く。
「あの計画は失敗なんかじゃなかった。逆だ、成功していたんだよ」
「なっ!?」
それは木場にとって衝撃的な事実。己や仲間達は何のために殺されたのか……。
「聖剣計画……昔、オレのブラスター・ブレードを狙って教会の連中が鬱陶しい事も有って調べたけど……まさか、あんな事を考えて実行にまで移していたなんて思わなかったぜ、その時はな」
はっきり言って、超兵装ブラスター・ブレードは聖剣に分類できる。恐らくだが、完全な形で残っている大半の聖剣以上の力を持ち、匹敵する剣はそうそう存在して居ないだろう。だからなのか、教会の関係者に聖剣使いと見られた際に何度も渡せだの、聖剣使いなのだから教会に所属しろだのと鬱陶しかった。……黙らせるために情報面から責めることにした結果、聖剣計画の全貌を調べる事にした。
其処で一呼吸おき、四季は超兵装ブラスター・ブレードをバルパーへと突きつける。
「そいつは完成させたんだ……聖剣を使える者とそうでない者を分ける理由を調べ上げ、聖剣計画の被験者達の聖剣を扱うに満たない“聖剣使いの因子”を抜き取り、その因子を集めた。一つ一つは満たない物であっても、多く集める事で聖剣を扱えるレベルに高める為にな」
四季の中に居る守護竜が教えてくれた。……彼の龍が守護していた聖域の王国の騎士達は誰もが持っていた“聖なる因子”と聖剣の関係を。
……そうなると、四季も扱えるのではとも思うが、ブラスター・シリーズが二つあるのだから、態々聖剣を求める理由は無い。
「驚いたな、まさか其処まで調べ上げるとは……」
「情報屋の伝手と聖なる力に詳しいドラゴンの推測からの推測……。聖剣使いの祝福に使われる物の事も聞いていたからな」
驚いたと言っているが、狂ったような笑みを浮べているバルパーの顔には一種の『狂喜』が浮かんでいる。
「なるほど読めたぞ、聖剣使いが祝福を受ける時、体に入れられるのは」
「その因子の結晶。……とことん教会って連中には反吐が出る」
四季の言葉を聞いたゼノヴィアの顔に浮かぶのは嫌悪の表情。
「そうだ。聖なる因子を抜き取り結晶を作ったのだ」
そう言って嬉々とした表情でバルパーは懐から一つの結晶を取り出して四季達に見せる。
「こんな風に」
己の存在を主張するように輝く結晶に木場の表情が変わる。憎悪と怒りが頂点に達したと言うべき表情を浮べながら、バルパーを睨み付ける。
「これにより、聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。だが、教会の者共は研究資料を残し、私だけを異端として排除したのだ」
(……なるほど、追放だけで済ませたのは……研究を向上させた功績に対する対価って所か)
落胆の表情を浮べて言葉を語るバルパーに四季は嫌悪を浮べながらそんな事を考えてしまう。
「貴殿を見るに私の研究は誰かに引き継がれているようだな……。ミカエルめ、私を断罪しておいて」
「同志達を殺して因子を抜いたのか?」
ゼノヴィアの方を見ながらそう呟くバルパーに近付きながら、木場は超兵装ブラスター・ダークを抜き、憎悪の表情を浮べながらそう問う。
―憎メ―
「そうだ・三つほどフリード達に使ったがね。。これは最後の一つだ」
―奴ヲ許スナ―
「ヒャハハ! 俺以外の奴等は因子に適応出来ずに信じ待ったがな!」
―ソノ怒リノママ―
「自分の欲望の為に、どれだけ命を弄んだんだ! バルパァァァァァァァァァァア!!!」
―ワレヲ使イ、奴ヲコロセ―
超兵装ブラスター・ダークの闇が木場の服を漆黒の鎧に作り変えていく。腕から体全体へ、頭を除き漆黒の鎧に包まれた彼の姿はかつての暴力の支配する聖域の影に生きた騎士達に似ていた。
『シャドウパラディン』
力への誘惑が木場の心を蝕み、感情のままに超兵装の誘惑を彼は受容れてしまった。
「四季……あれって」
「あいつ……力に飲み込まれた」
詩乃の言葉に四季が答える。四季が辛うじて戻れていた一線を遥かに超えた木場は黒く染まり、赤く輝く瞳でバルパーとエクスカリバーを持つフリードを睨み付ける。
「私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに、私の研究を見せ付けてやるのだよ」
そんな木場の変化を……四季の例もある為か、気付いていないバルパーは狂気に染まった笑いを挙げている。
「それがコカビエルに加担する理由……そんな事で」
そんなバルパーの言葉に怒りを露にするリアス。そんな彼女達を一瞥しながら、バルパーは結晶を投げ捨て、
「どうせ余り物だ、これはくれてやろう。貴様の同士とやらの成れの果てだ」
はき捨てる様に、嘲笑うように告げられる言葉……それがバルパーの最大のミス。
「みんな……バルパァァァァァァァァァァァァァァア! お前だけはぁ!!!」
―存分ニ使エ、我ガ力ヲ。奈落竜ノ腸ニヨリ鍛エラレタ、ブラスター・シリーズヲ―
木場の鎧が寄り禍々しいものへ、背中にはドラゴンの翼のような意匠が現れる。ゆっくりと立ち上がる黒い影が彼を包み込む。
『彼の憎悪が呼び出してしまったのですか……あの龍の力を』
四季の中に眠っていた守護竜が呟く。光と影を束ねた英雄の手によって討たれた奈落竜の悪意より生まれた、悪意の集合体……。木場の憎悪が、超兵装ブラスター・ダークの中に潜んでいた微かな悪意の一部が、不完全ながら……その龍の形を象ってしまった。
『……『ガスト・ブラスター・ドラゴン』』
静かに守護竜はその名を呟く。
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