ムームー
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第一章
ムームー
ハワイは暑い、だがそのハワイでも季節がある。冬はやはり夏に比べて幾分涼しい。
その冬の朝にだ、ホク=リチャードソンは起きて食事の時にだ。母のハリアに問うた。父のマイケル譲りの青い目に彫のある顔と母譲りの黒髪と褐色の肌を持っている。白人とハワイアンのハーフだ。
その彼女がだ、ハリアに問うたのだ。
「ねえお母さん、今度学校でパーティーするけれど」
「いい服あるかっていうのね」
「何かない?」
トーストにパイナップルのジャムを塗りつつ問うた。
「いい服ね」
「ドレスならあるでしょ」
「ううん、ドレスね」
「そうよ、あるでしょ」
「何か持ってるドレスね。どれもね」
どうかとだ、ホクは母に答えた。
「生地が厚くて」
「今は冬よ」
「冬だけれど最近暑くない?」
「あんた暑がりだからね」
「うん、だからね」
それでというのだ。
「生地の薄い服が欲しいの」
「そうなの」
「何かない?それで」
「じゃあいい服があるわよ」
ハリアはすぐにだ、娘の自分のものではない青い瞳を見つつ言った。奇麗できらきらとした輝きを放つ目だ。
「丁渡ね」
「あっ、あるの」
「ムームーどう?」
「ムームー?」
「そう、お母さんが持ってるね」
「お母さんが持ってるって」
ここでだ、ホクは。
母のそのでっぷりと太った、中年のハワイアンに多いその堂々たる体格を見てそのうえでこう母に言葉を返した。
「私にサイズ合わないんじゃ」
「今のお母さんのじゃないわよ」
「昔?」
「丁渡あんた位の歳に着てたのよ」
「あの頃お母さんは痩せていたんだよ」
ここでだ、一緒に食べている父のマイケルが言って来た。
「今の御前みたいにな」
「そうだったの」
「ああ、それでな」
「その時のムームーもなの」
「絶対に御前に合うからな」
「着てもいいのね」
「暑いのが苦手なんだろ」
父は娘にこのことを問うた、娘が今言った言葉を。
「そうだろ」
「ええ、何か最近冬でもね」
「御前にとっては暑いからか」
「今度のパーティー外ですから余計にね」
「外だと暑いからだな」
「涼しい服でいきたいの、それもデザインのいいね」
お洒落も忘れないのは年頃の女の子だからだ。
「それが欲しいの」
「デザイン?いいわよ」
ハリアは娘にこのことも保証した。
「絶対にあんたが好きになるものよ」
「それじゃあ着てみようかしら」
「いいと思うわ、丁渡あんたもハワイにいるし」
「ハワイアンの血も引いてるしね」
「お母さんからね」
まさにその母からだ。
「だからね」
「ええ、じゃあそのムームー着てみようかしら」
「というかそういえばあんた今までムームー着なかったわね」
「そういえばそうね」
ホクも言われて気付いた。
「私持っている服は洋服ばかりで」
「ムームーは持ってなかったわね」
「ハワイ人の血を引いてるのに」
「アロハシャツは持ってるのに」
「あれは何着か持ってるわ」
それでよく着ている、ホク自身お気に入りだ。
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