魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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後日談1 ゆりかご事件の裏で………2
前書き
お久しぶりです、blueoceanです。
本当に遅くなって申し訳ないです、パソコンも受験生の弟に独占されてかなり進行スピードが遅くなってしまいました………
次こそなるべく早く投稿したいな…………
「はぁ、はぁ、はぁ………」
公園を離れた後、アリサは自然と駆け出していた。目的地などない。ただ、走っているうちに目的の人物が見つかるようにと願って………
「コウ………!!」
いきなり見せつけられた惨事にアリサの頭はまだ追いついていない。ただただ、コウに会いたかった。
「えっ?」
「きゃ!?」
その内、交差点を飛び出した際に、右の道から歩いてきた人が現れた。
互いに無意識であった為、避けられもせず思いっきりぶつかった。
「痛たた………」
「セッテ、大丈夫!?」
「大丈夫だよ、僕達以上に丈夫だし。むしろ少し壊れた方がそのバトルマニアの頭が柔らかくなるかもね」
「オットー!!」
「セッテ落ち着いて……」
毒を吐くオットーにセッテが喰いかかろうとするが、ティードが懸命にセッテを抑えた。
「オットーも言い過ぎよ………」
「………」
そんなティードの言葉もオットーには届かず、無反応でそっぽを向いていた。
「全く、ごめんなさい、大丈夫ですか?………ってアリサさん?」
やっとぶつかった相手の方に視線が向き、ティードが手を差し伸べる。
「セッテ、オットー、ティード………」
アリサはこの3人とは深い接点は無かった。単純にフェリアの妹達だと説明され顔を会わせた程度である。
だが、今この瞬間はありがたかった。
「ね、ねえ!!零治………いや、零治に似た男の人を見なかった!?」
「師匠?師匠ならクレイン・アルゲイルの罠に嵌って敵に操られ………」
「セッテ!!」
つい口走ってしまい、慌てて口を噤んだが既に遅かった。
「敵の罠に嵌った………?じゃあ零治は?星達は………?」
不意に得られた情報のせいでアリサの頭の中はパンク寸前であった。
「アリサさん、実は………」
流石にごまかせないと思ったティードは重い口調で事件の事を話そうとした。
「3人共、協力して欲しいんだけど………」
しかしアリサの選択は零治達よりもコウを選んだ。
「協力?」
「何かあったんですか?」
「実は………」
「よし、準備はこれでいいわね………」
自宅で荷物を確認し終わったシャイデは荷物を持ち、リビングへ向かう。
「お母さん………」
「リンス、考えを変える気は無いの?」
「うん、私も零治さん達を助けたいから………」
シャイデと同じ様に直ぐに動ける体勢でいるリンスにシャイデは少々納得しない顔をしながらもそれを飲み込み、頷いた。
今回は優理も零治の為に戦うのだ、親友でもあり、自分もお世話になっている零治の為に何か出来ないかと考えるのは当然だろう。
「だけど無茶はしないでね、相手は零治のブラックサレナが大勢いると考えていた方が良いわ」
「うん、分かってる。私も自分の出来る事をするよ。そして私のこの力も役に立つと思うし………」
「リンス…………」
そう言って作った拳を見つめるリンスにシャイデは目線を合わせ、心配そうな顔で話し始めた。
「分かってると思うけど、その力は私の指示があるまで絶対に使わないでね、それが出来なければあなたは連れて行かないわ」
「分かってるよお母さん」
その返事を聞いて安心するシャイデ。シャイデはリンスにその力を使わせるつもりは無かった。
(マリアージュシステム………今度使えばリンスはどうなるか………)
既にジェイル・スカリエッティからは使わない様に念を押されているのだ。それでも安定していた影響なのか、リンスは自分の力の一部として最終手段で使う事を考えていた。
(零治達の事も大事だけど………私は母親としてこの子を………)
とそんな事を考えている時、不意にポケットに入れていたスマホが鳴った。
「誰………?」
「セッテね。あの子まだ付いて行きたいとか考えてるのかしら………?」
セッテ、オットー、ディード。
この3人に関してはジェイル・スカリエッティは地球での待機を命じていた。
理由は色々とあるが、一番の理由としては戦闘経験の無さが理由と言える。
セッテに関しては零治を師事し、戦闘訓練をしていたので実力から言えばクアットロや、ノーヴェとも並ぶか、それ以上の実力はあった。しかし実戦での経験は皆無でそれが待機と言う判断となった。
「もしもしセッテ?何度言っても駄目よ、貴女を連れて行く気は………」
『それどころじゃないです!!実は………』
「さて、これからどうするか………」
あの場から急いで逃げ、視界の隠れた物陰に隠れ、息をひそめる。
何処かの室内に隠れる事も考えたが、もし見つかった時に周りに巻き込む事は避けたかった。
「あの場に居た家族は大丈夫だったか………」
01は狂っている。あの捨てられた世界で2人っきりでいたせいか、自分達しか世界には必要ないと思っている節がある。
コウが捨てられた世界。そこには豊かな自然や様々な近代的な建物、生気溢れる人々が生活している様な世界では無く、正に捨てられた物が集まった世界と言えた。
様々なゴミが捨てられ、それが溜まり、異臭を放つ。緑など全く無く、見渡す限りゴミの山。もしコウだけがあの世界に居れば直ぐに死に絶えたであろう。
「01………」
コウにとって01は姉と呼べる存在だ。
何も無い世界で自分の知識から先ずは生きて行くために必要な物をその場にあったゴミから作り出した。
ゴミは機械から残飯まで様々な物があった事も救いだったのかもしれない。
そこから01は食量、水、生活スペースを作り出し、先ずはライフラインを整えた。コウの質量転移も相成って作業にさほど時間はかからなかった。
彼女は天才だ。それも元となった人物以上かもしれない。
01は『いずれ、自分に牙を向くと思われ、捨てられた』とコウに語っている。
「あれくらいで動けなくなってくれていればいいのだが………流石に無理か………」
彼女は既に常識を逸していた。
環境に合わせる為に、コウとは違い戦闘機人では無い彼女は過酷な環境に対応出来なかった。だからこそ彼女は先ず自分の身体を自身で改造する事を考えたのだ。
「その結果、01は身体能力で言えば戦闘機人の俺と比べられないほどの能力を得た。やっぱりあれくらいで動けなくなるわけないか………」
そう呟いて深くため息を吐く。彼女に対応する事の難しさにため息を吐かずにいられなかった。
「どちらにしてもこの街を巻き込むわけにはいかない、先ずはこの街を出て………!?」
そう思った瞬間、街を異質な空間が包み込む。
「何だ!?」
完全に包み込まれると街にあった音が消え、人が消えた。
「これは結界?だけど何かが………」
「見つけた………!!」
「!!」
その瞬間、声のした方へ、近くの物を転移させる。
「こら、いきなりそんなもの飛ばしたら危ないでしょ?」
しかし01は不意に転移された自動販売機を一刀両断した。
「なっ………!?」
「そう言えばコウにはまだ見せていなかったっけ?私としては別に素手でも良いんだけれど、一応強化されたからって無敵って訳じゃ無いのよね。かと言って申し訳程度にあったリンカーコアも改造しているうちに消えちゃったし。………だから」
青白く光る両刃の剣はまるで水晶の剣の様に透き通って美しかった。しかも冷気を纏っており、周辺の空気が冷えていくのを感じる。
「その剣は………?」
「名前はね、ヴォ―バルソード、氷の魔剣よ。この剣の凄い所はね、見ての通り冷気を操る剣。………ってだけじゃなくてね、この剣を使えばたとえ魔力を持たない人でも魔法を使える様になるの。だって、デバイスの様な人が造った紛い物じゃなく、本物の魔剣だからよ」
「そんなもの………」
「あるのよ。管理外世界の人の訪れない氷河世界。銀色に色づく世界に一層冷気が集う生物の存在が場所に突き刺さっていたの。管理局風に言えばロストロギアに当てはまるのかしら………?まあ研究所の古い文献にその様な記述があったのを思い出してわざわざ探しただけなんだけどね。だけど性能は………ほら!!」
そう言って向かいのビルにヴォ―バルソードを一振りした。
すると刃から巨大な氷の斬撃が飛び、ビルを斜めに斬り裂いた。
「なっ………!?」
「ねえ凄いでしょ!!」
「何をしているんだ01!!」
「何をって………この剣の性能を見せただけよ?」
「そうじゃない!!何故街を破壊する!!」
そうコウが叫ぶと今まで嬉々として説明していた01の顔が一気に不機嫌に変わった。
「………コウこそ何でこの街に肩入れするの?」
「関係無い人を巻き込む必要は無いだろう!!」
「確かに関係無いわね。だからこそどうでもいいじゃない。それにこれは私が作り出した新しい結界の中よ?いくら破壊されても外に影響は無いわ。その代わり、そう簡単に出られもしないし、入れもしない。分かる?あなたはもう私から逃げられない」
「01………!!」
こう言った考えになる01をコウは嫌いだった。
01はコウ以外の人間が景色の様に視界に入らないのだ。
まるで世界は2人だけと思っているかの様に。
「もう、そんなに睨まないでよ………私はあなたの為にしているのよ?」
「俺の為だと………?」
「そうよ、あなたに必要なのはこの世界じゃなくわ・た・し!!」
と最後をわざとらしく強調する01。対してもコウは警戒を解かない。
何時どんな時でもチャンスがあれば逃げるか、迎撃するか………。後者はほぼ可能性はゼロなのだが、それも視野に入れ、油断しない様に心掛けていた。
「その目……気に入らないわ。この世界に来てから一層私に対抗してきてるし………まあそれはそれでちょっと面白いけど。…………これ以上私の02をおかしくしたくないし………決めた!!!」
ぶつぶつと呟いていると思っていると不意に大きな声でそう叫んだ。
「何を………」
「この世界を消滅させるわ」
「なっ………!?」
01のこの決定の意味がコウには理解出来なかった。
自分を探してきた筈なのに、何故この世界を消滅させることを決めたのか………
「何故!!何故だ!!」
思わず我を忘れて叫んでいた。
「貴方の為よ。だって貴方、昔よりもずっとつまらない人間に変わってしまったもの。………そんな02を変化させた世界なんて消滅させた方がスッキリするわ」
「01………!!」
01がそう言うと言う事は既にある程度準備が出来ている筈だ。
「さて、そうと決まれば準備しなきゃね。数日中にクレイン・アルゲイルも動き出すでしょうし、遅れないようにしなきゃ」
「待て、話はまだ………」
「それじゃあ準備が出来たらまた会いに行くわ。もう貴方を捕捉したからどこへ逃げても無駄だからね」
「01!!」
「バイバ〜イ」
そう言って手を振りながら笑顔で01は消えた。それと同時にコウを閉じ込めていた結界も解け、再び元の状態へと戻った。
「冗談じゃない………!!」
短い間だったが、この世界、この街での生活がコウにとって一番居心地がよく、心安らぐ時間だった。
記憶とは関係無くもうこの街は帰るべき場所となっていたのだ。
ざわざわと周りから奇異な目で見られている事に気が付いたコウは俯いたまま、人の居ない方へと歩む。
「絶対に守る………その為なら………」
路地裏に差し掛かった辺りでそう呟く。歩きながらも色々と頭をフル回転させて01をどう止めるかを考えていた。そしてそう決意した所で、こちらに来る人影があった。
「来たか………」
「動かないで」
その言葉と同じタイミングでコウは魔力の糸でグルグル巻きにされ、身動きが取れない様にされた。
「………」
「うそ………」
「本当に師匠にそっくり………」
コウの顔を見て、オットーが険しい顔で警戒し、ティードとセッテは驚きその場で立ち尽くしていた。
「セッテの言う通りね。まさかこの世界にも何かしようとしていたなんて………」
そんなシャイデの呟きを聞きながらもコウは反抗どころか身動きすらしていなかった。
「さて、幾つか聞きたいんだけど良いかしら?」
「ああ、シャイデ・ミナート」
名前を言われ、怪訝そうな顔をしたシャイデだが、気を取り直し、質問を始めた。
「あなたは何者?」
「俺はクレイン・アルゲイルによって有栖零治を元に造られた戦闘機人だ。コウと名乗っている。名前を名付けられていなかったんでな」
「クレイン・アルゲイルが造った戦闘機人………」
それを聞いて、ますます警戒の色を強める3人。しかし質問をしていたシャイデは冷静にコウの言葉に耳を傾けている。
「何の目的でこの世界に来たの?」
「俺は前に居た世界から逃げ出す為に、一緒にいた人造魔導師の造った転移装置で目的地を適当に決めて転移した。そうしたらたまたまこの世界に辿り着いた」
「………そんな与太話信じられると思う?」
「ぐっ………」
そう言うと同時に締めていた糸が徐々にきつくなっていく。
「さあ、正直に話なさい。でないとどんどん糸が貴方を苦しめるわ。最後にはミンチになるかもね」
「そう言われても俺は嘘偽りは話していない………転移装置も逃げるのに必死でちゃんと見てもいなかった。元々設定されていたのかもしれないし、本当に偶然かもしれないんだ」
そんなコウの言葉もシャイデは信じる事が出来ず、糸がどんどん食い込んでいく。
「ぐぅ!!だから俺は………!!」
苦しくなっていく中、それでもコウは言い続ける。
「俺は嘘を言っていない!!信じてくれ!!」
「………」
コウは必死に訴えるがシャイデは冷徹だった。
「シャイデ先生!!」
そんな中、シャイデを呼ぶ声があり、シャイデは思わず締め上げた糸を緩め、声の方を向いてしまった。
「アリサ!?………セッテどう言うこと?私は連れてくるなって言った筈よ?」
「私達はちゃんと待っているように言いましたよ!!」
「私がここまで自力で来たんです。何か嫌な感じがしたから………シャイデ先生、コウを離して!!」
「アリサ………」
「………01の影響か」
シャイデが困惑していると横からコウが話に入ってきた。
(しまった…!!)
シャイデは逃げられたと思い、慌てて糸を確認したがコウはその場から逃げる事無く、一歩も動いていなかった。
「………01って誰?」
慌てた事を表に出さないように警戒して話すシャイデ。
「コウ!!」
「助かったよアリサ。お陰で落ち着いて話を聞いてもらえそうだ」
「………」
アリサに見せた優しそうな顔を見てシャイデは魔力の糸を解いた。
「コウ、一体何が起こってるの?」
「それをこれから話すよ。そして出来れば協力してほしい。この街………いや、この世界を守る為に」
普通ならば冗談だと笑ってからかわれるだけかもしれない。
しかしここにいる零治ではない瓜二つな人物に、ミッドチルダで大きな事件を起こそうとしているクレインの存在が、皆の深刻そうな顔を作り出していた。
「分かったわ、話してみなさい」
「ありがとうございます」
シャイデの言葉にコウは深々とお辞儀したのだった………
「皆、飲み物はいった?」
「は、はい、ありがとうございます」
話すことになったコウだが、流石にあの場で長話をする訳にもいかず、場所を変えることになった。
そして提案された場所はアルピーノ家であった。
「………」
ゼストは静かにコウを見ていた。その瞳は睨んでいるわけでもなく、だからと言って好意的な眼差しでも無い。見定められているような視線に居心地の悪さを覚えたが、コウは逃げるわけにもいかず、皆の準備が出来たのを確認してコウは話し始めた。
「先ずは俺の事だけど、先ほど言ったようにクレイン・アルゲイルによって造られた有栖零治を基にした戦闘機人だ。名前も無く番号で呼ばれていた。番号は02」
「02って事はさっき言った01は………」
「ああ。俺より先に造られた人工魔導師だ。そしてそいつが敵に当たる」
オットーの質問にコウは敵だと答えた。
(コウ………?)
そしてそう言ったコウの表情にアリサは違和感を覚えた。言い方も表情も倒すべき敵だと言っているように見える。
しかしアリサには01と呼ばれた存在に怯えているように見えたのだ。
「そもそもクレインは何故貴方達を造ろうとしたの?」
そんなアリサの疑問を聞く前にシャイデが話を進めた。
「01は自身に何かあったときに計画を託せる者をつくるため、俺は有栖零治の転移能力を得るためだと思う」
「零治の転移能力?」
「師匠にはレアスキルって言う特別な能力があって、師匠の場合は距離は短いけれど一瞬で違う場所に移動できるんです」
「えっ!?そんなの聞かされていないんだけど………」
「そうなんですか?」
「でも転移魔法もあったはずよね?昔にはやてに教えてもらったような………」
「はい。魔法にも転移魔法はあるんですけど、零治さんの場合は瞬間転移なのでとても便利なんです」
アリサの問いにセッテとディードは答えた。
「ただし俺の能力は劣化品で、『付近の物を自分の周辺に転移させる事が出来る』能力になってしまった。ある意味便利だけど、クレインの思い通りにはならなかったんだ」
「?でもそんな便利な能力、手放すとは思えないんだけど………」
「使えるようになったのは捨てられた後だったからな………」
そう返され、質問したオットーは返す言葉を失ってしまった。
「だけど01は違う。俺は有栖零治がバルトマンと戦った際に飛び散った血液から造られた戦闘機人だが、01はクレイン・アルゲイル自身が遺伝子を提供し、プロジェクトFを利用して造ったクローンなんだ」
「なっ!?」
コウのその答えにアリサを除いた皆が驚きを隠せないでいた。黙って聞いていたゼストも思わず声を上げ、立ち上がったほどだ。
「そしてさらに言えば、成功した失敗作とも言えるんだ」
「成功した失敗作………?それってどう言う………」
「要するに失敗作だった俺とは違い、成功したが、クレイン以上に優秀であった為に危険だと判断され、処分された」
「クレイン・アルゲイル以上だと………!?」
次々に語られる衝撃的な事実に皆の表情もどんどん固くなっていく。
「そして、捨てられた先の過酷な環境を生き抜く為に自分自身を改造し、戦闘機人の様な強靭な身体を得た。だがその代わりに後遺症からかリンカーコアを失っているので魔導師では無くなっている」
「でもかなり強大な魔力を感じました、だからこそ私達はコウさんの場所までこれたんですけど………」
ディードが恐る恐る質問をする。
「ヴォーバルソードって言う魔剣を使っていた。それを使えば魔力が無くても魔法に近い戦い方が出来るみたいだ。多分感じた魔力のその魔剣によるものだと思う。」
「ヴォーバルソードだと!?」
皆が聞いたことの無い名前に首を傾げている中、ゼストは驚きながら立ち上がっていた。
「名前だけ聞いた事がある。確か俺がまだ現役だった頃、強大な魔力を帯びた剣が管理外世界で発見され、危険だと言うことで回収チームを結成し厳重に封印する筈だった………」
「あっ、私も思い出したわ。回収チームが魔剣に着く前に全員氷漬けになって回収は諦めたのよね………」
ゼストの言葉を聞き、思い出したメガーヌもそれに付け足すように説明した。
「だがあれは使用者も凍らせるほど強力な魔剣だと分析されていたはず………だが奴は使っていたようだがどういう事だ?」
「俺にも分からない。だけどそれくらい01ならどうにでも出来そうだ」
「それほどの相手って事ね………」
シャイデの言葉に空気が重くなる。
今の地球に戦える者は今居るこのメンバー。更に言えばセッテ、オットー、ディードの3人は戦闘の経験が無い。援軍を求めるにしてもミッドチルダも決戦前だ。並の魔導師では相手にならないだろうし、強い魔導師を送ってもらう余裕も無いだろう。
「………世界を守る為にと言ったが、01は何をするつもりなんだ?」
そんな空気の中、ゼストは態度を変えず再び質問を始めた。
「分からない、だが01はこの世界を消滅させると言っていた。言ったからには何か手段があるはずだ。01は軽はずみにあんな事は言わない」
「そうか………何か情報があれば対策も立てられると思ったが………」
「対策か………対策になるか分からないが、01には1つ特徴がある」
「特徴………?」
「01は自分で新たな物は作れない。いや作れないかは分からないが、今まで作った物は全て元にした物があるんだ」
「そうなると、消滅させる手段も何か元になった物があるかもしれないって事?」
「恐らく」
コウの返事を聞いて、シャイデの脳裏にある物が浮かび上がる。
かつて自分の叔父が関わっており、その元の組織は既に無い。………だが1つまだ見つかっていない物もある。
「………考えたくは無いけど消滅させる手段に1つ心当たりがあるわ」
「シャイデ先生?」
そう話し始めるシャイデの顔は青かった。そしてアリサも察する。
「………俺も1つ心当たりがある。恐らくシャイデと同じだろう」
シャイデの反応を見て、ゼストもそう話す。その言葉は重々しかった。
「………シャイデ・ミナート、心辺りとは………」
「コウ、貴方も零治の記憶があるなら貴方は身近で見た事がある筈よ。あれはまだ試作品でもあった。だけど最近捕まった彼等が言うには既に新作の物は出来ていたと言っていたわ。だけど開発者があまりにも危険すぎる為、そのデータを持って逃げ出したともね」
「あまりにも危険すぎる………?」
「一体何の話をしているのだ!!」
遠回しに話すシャイデとゼストに我慢できなかったセッテが叫ぶ。
「べヒモス。………冥王教会が生み出した、最悪の爆弾の事よ………」
その日の深夜………
「ふふ、準備できた」
海鳴市の海辺。
その上に佇む01は満足げにそう呟いた。
「新型を実際に作ったのは初めてだったけど、案外小さいのね」
手の平に乗った箱状の物体を見つめつつ呟く。
「真白リクは良い発想をしてるわ。爆発で消し去るより消失するようにする。そうすれば余計なエネルギーは必要とせずこの箱のようにコンパクトに出来る。そして………」
そう言いながら箱を手の平から下に落とした。
「爆発はせずとても静かに事が終わる………」
海に落ちていった箱は接触すると同時に解放。
小さな黒い渦が見る見るうちに大きくなっていき海の水をどんどん飲み込んでいく。
「中に封じ込めた擬似ブラックホールは如何なるものも飲み込んで消滅する。消え去るまで………あはは!!凄いわねこれ!!これなら6割で街の殆どを消し去れそうね!!」
海の水が飲み込まれていく様を見ながら1人暗い海の上で笑う。
「善は急げね。とっとと準備して実行しましょう………」
翌日………
「おはようコウ」
協力を申し出た翌日、コウはアリサの家に再び戻っていた。
「おはようアリサ」
朝の挨拶に返事を返す。おはようとアリサは言ったが、とても眠そうだった。
(無理もないか………)
前にも巻き込まれた事があるとはいえ、彼女は一般人なのだ。
そして今回は情報が少なく、後手に回る事は確実だ。ベヒモス云々の話も憶測でしかない。
「よく眠れた?」
「ああ」
コウ自身驚いているのだが、ベットに入って直ぐにコウは眠りについた。
色々と考えたい事はあったのだが、それを忘れさせるように直ぐに睡魔が襲ってきたのだ。
「私は全然………前はいきなり巻き込まれてだったけどこれから何かがあると思うと中々寝付けなかったわ………」
小さく欠伸をしつつアリサが呟く。
「ねえ、本当に01って人はこの世界を…………」
「ああ、言った以上必ず実行してくる」
(そして何より俺が絡んでいる……)
「コウ………」
俺の顔を見て更に不安になったのか、いつもの元気なアリサは何処にもいなかった。
「………大丈夫だアリサ。俺が絶対にお前を守るさ」
「コウ………」
頼もしくもあり、そして何故か儚げに感じるコウの言葉に若干不安が募るがそんな事を気にしていられる余裕は無かった。
『次のニュースです。海鳴市の海で水位が急激に下がっていた事が確認されました。原因は未だ不明で、地震等は確認されず波も穏やかでありますが、津波になる危険もあるので、沿岸部に行く方は注意して下さい………』
「水位が下がった………?」
ニュースを聞いたコウの表情が変わった。
「コウ………?」
心配そうな顔で見つめるアリサへと視線を戻し、コウは口を開く。
「01が動く。みんなと連絡を………」
アリサは頷き、それぞれに連絡を始めた………
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