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無能騎士の英雄譚

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一話

 
前書き
天才と無能の邂逅 

 
此れから生活する寮の部屋の鍵をもらいその部屋の前に向かうと、なかに人の気配があった

(……あれ?)

神は首をかしげた

(……変だな)「すいませ~ん、此処の部屋の人なんですが、入って良いでしょうか?」

ノックしながら言う神

「え? 少し待って!!」

答えてきた声からして女性、発音の違和感からして外国人かな?衣擦れの音がするので着替えていたのだろう

神はそう考えていたと同時にこう思った

ー入らなくて良かった

そう思っていると、部屋の扉が開き女性が顔を出す

ウェーブの掛かった紅蓮色の髪に深紅の瞳

制服の上からでも解る起伏の大きい肢体

そして、初雪のような淡く白い肌

簡単に言うと物凄い美少女である

「……なんか用?」

「なんか用も何も此処は俺の部屋なんだが……鍵もあるし」

そう言いながら鍵を見せる神

「部屋間違えたんじゃないか?」

「私はここの部屋使っていいって言われたの。鍵も貸してくれたし、入ってたけどあんたの荷物なんて見当たらなかったけど?」

そう言いながら鍵を見せる少女

「今持ってるからな、その鍵は誰に渡された?」

聞く神

「理事長よ」

「へ?」

その言葉に固まるのだった……

○●○●

「あぁ……すまない、相部屋になることを言い忘れた」

時と場所が変わり、神は理事長に話を聞きに来ていた

どちらかが部屋を間違えられて鍵を渡されたと思ったからである

「相部屋? 女性とですか?」

それに対して疑問を出す神

「そうだ、因みにあの子は魔導騎士界では有名人だぞ?」

「? へぇ……」

そう言いながらスマートフォンがかざされる。その画面には『十年に一度の「皇女」騎士、
来日』という見出しと共に、豪華なドレスを着た先程の少女が載った新聞記事が映し出されていた

「ふーん」

「いやそこは驚くところなんだがな……」

呆れ顔になりながらも理事長は幾つかの記事を見せる。ヨーロッパの小国の一つであるヴァーミリオン皇国の第二皇女であること、破軍学園に歴代最高成績での首席入学をすることなどが書かれていた。

「どうせ"元から人より多い魔力を上手く扱えて、剣が中々上手いだけだろ"?」

「ず、随分辛口だな……」

神の言葉に苦笑を浮かべる

「12才の時に出会った"あいつら"に比べたら……ね」

そう言いながらその人達の事を思い出す神……

其々が別の世界から来たと言い、何よりも様々な事を教えてくれた人達の事を……

神が思い出していると同時に外からドアが四回ノックされる。

「どうぞ」

理事長が入るよう促すとドアがゆっくりと開く

「…………失礼します」

ドアをこちらから見えないように斜め立ちで閉め、室内で学長に頭を下げる

先程と同じ破軍学園の制服を着たステラその人だった

「遅いから来たわ、で、どうだったの?」

そう聞くステラ

「どうやら相部屋だそうです」

そう答える神

「はぁ!? どういうことよ!?」

「あとで話すつもりだったんだが。天地、ヴァーミリオン両名は今年度から同じ部屋で寮生活をして貰う」

「「意義ありだ(です)、理事長先生」」

「……まあ、そうなるな」

理事長の言葉を遮りステラが反論する

「幾らなんでも男と一緒の部屋なんて嫌です。まだ嫁入り前ですし」

「俺もだ。そもそも寮は二人一組ですが男女一緒の部屋ははないはずですよ」

「私が理事に就任する前年の話だ。天地、私の教育方針を言ってみろ」

黒乃に当てられ神は黒乃の方針を聞いたか思い出す

「完全の実力主義に徹底した実戦主義、ですよね?」

「そうだ。それが私の方針、学園の方針だ。破軍は他の学園に比べいいところが一つもない。しかも『七星剣武祭』でも優勝はおろか一回戦すら勝てない。理事会は立て直しを決め、私を理事に推挙した。部屋割りもその一つ。出席番号、性別、果ては学年関係なく力の近い者を同じ部屋にすることで、同等の存在同士で切磋琢磨させ競争を生
じさせる、というわけだ」

腕を横に広げ、ふてぶてしく己の思惑を明かす

「だったらステラさんは同じ力の学生とペアになればいいと思うんですが?」

「そうね、Aに届かなくてもBランクならいいと思う」

「生徒会なら何人かいるんじゃないか?そもそも多分俺と皇女様じゃランクが違いすぎる」

「ランクが違う?ちょっと、あなた何ランクなの?」

神の話にステラが神に問いかける

「恥ずかしいけど、Fランクだったよ」

「え、Fランク!?Fランクと一緒の部屋なの!?どういうことですか理事長!」

理事長に詰め寄り、机を叩き苛立ちを見せる。が
黒乃はにやけ顏を変えずに言う

「君達の場合は特別だ。実はウチにはヴァーミリオンほど優れた者がいない。かといって一人で部屋を使わせるとそれは勿体無い。そこで、一人だけの天地と組ませる事で無駄をなくす。余り同士で組ませる事になるが我慢してくれ」

その言葉にステラは眉をひそめ、手を顎に当て考える

「……もし私と同じぐらいの力をもつ学生が入学して、その人と部屋を同じにしてくれるなら……構いませんが」

「もしも、の話だがな」

Aランク伐刀者は十年に一度の逸材と呼ばれる程希少。それがこの学園にやって来るのは限りなくゼロに近い。理事長は断言は出来ないが出来るだけ希望に添えるよう手配はするつもりだ

「……分かりました」

「話は以上だ。行っていいぞ」

「理事長。一つお願いがあります」

退室を促されたにも関わらず、ステラはその場に留まる

「内容にもよるが、言ってみろ」

「訓練場を貸していただけますか?今から」

「構わないが、使用目的がないと貸せないな」

「すぐに終わります。私は、この男と勝負します」

腕をピンと伸ばし、神を指差した。

「一緒の部屋になるのに、相手を知らないままっていうのは失礼だと思います。お互いのためにもまずは戦いをしたいと思ったのですが、よろしいですか?」

「ふむ……いいだろう。第三訓練場天地もそれでいいか?」

神も少し考えてから頷き、

「はい、Aランクと戦えるのは俺にとってもいい経験になるし」

そう言いながらステラを見る神

「……では先に行ってます」

しかし、ステラはそれを流し理事長室を退室した。ドアが閉まり、足音が遠くなったのを壁越
しで確認した二人は互いに見る

「いいのか天地?相手はAランクだぞ、此処に来て初めての相手には重いのでは?」

「いずれにしろ戦う相手になるし構いません。ってかあいつらに比べたら……それにさっき言った通りAランクと戦ってみたいのは本心です」

「……確かにお前の能力ならいい線いくだろうな、あんな技術もあるのだし」

「そう言うことです、では失礼します」

そう言って退室する神

「……Fランク"だった"、ね……」

部屋に一人、理事長の呟きが響くのだった…… 
 

 
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