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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
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SAO編 主人公:マルバ
ありふれた冒険譚◆冒険の始まり
  第九話 武具屋リズベット

 
前書き
前回ちらっとでてきたリズが主体の話です。といっても前回はセリフもなにもありませんでしたが。
 

 
「ふうん、いいインゴットじゃない。これ、あたしが頼んだのより二つはランクが上よ。こんなの、どこで見つけたのよ。君、探索スキルなんて持ってないでしょ?」
リズベット武具店、と掲げた看板の持ち主……つまりこの露店の店主はマルバを驚いた目で見つめた。彼女の買ったばかりの新しい携帯炉の中にはマルバが凍傷にかかりながら苦労して採ってきたインゴットが熱せられている。

「これ、僕が見つけたんじゃないんだよ。ほら、ちょっと前に仲間になったこいつがさ、小さなクリスタルの塊の近くで立ち止まったもんだから気になって叩き割ってみたら出てきたってわけ。」

ユキがマルバの足元で嬉しそうに手柄を主張した。

「へぇ~、スノーヘアに探索能力があったなんて知らなった。見つかったらすぐに逃げられちゃうから情報少ないのよね。他になんか隠し技とかあるの?」
「いや、あんまりないよ。ハイディングはできるけど、他には……ユキ、七変化」

水風船が割れるようなポンという小さな音と共にユキの周りに細かい毛が飛び散り、ユキの身体を覆い隠した。モンスター専用スキル『幻惑』だ。真っ白の綿毛の中から飛び出してきたユキはすでに茶色い普通のウサギの姿をしている。

「へぇ、すごいじゃない。でも白くなかったらスノーヘア(雪うさぎ)じゃないわね。」
「その綿毛の雲も一応スキルなんだよ。『幻惑』ってやつ。せいぜいユキの半径二メートルくらいしか効かないけど、視界が遮られて中が見えなくなるでしょ?」
「でも、そんなのなんの役に立つのよ。」
「『幻惑』は敵から逃げるのにすごく役に立つよ。『七変化』だってただ身体の色が変わるだけだけどさ、草原でも雪原でも洞窟でもハイディングボーナスは完璧」

マルバが説明している間にユキはもう一度『七変化』を使うと真っ黒の身体になった。得意げにくるっと回って見せる。もはや雪うさぎじゃなくて黒ウサギだ。

「そう言われてみればそうよね。洞窟とかだと真っ白だと目立っちゃうしね。それはそうと、そのウサギ、他の人にはあんまり見せないほうがいいわよ。まだビーストテイマーって珍しいからね。」
「そうだね。あんまり目立つのは嫌だから、忠告に従うことにするよ。ユキ、ちょっと隠れてて」

ユキはもう一度ポンと煙幕を張った。綿毛が消滅すると、もうそこにはなにもいない……ように見える。

「え、どこいったのよ」
「ユキがいたとこあんまり見つめないで。視線があるとどんどん隠れ率(ハイディングレート)が下がるから」
「ああ、ハイディングね。了解、了解。ところでこのインゴットどうするの?短剣にするんだったよね。」

リズベットは鍛冶台の横のハンマーを手にとって炉の中のインゴットを見つめる。

「うん。スピード系の短剣にしといて。サブカテゴリはナイフで。鋭さと重さは小さめでいいから、正確さと素早さに特化したやつ。丈夫さは並程度で、リーチは短くて構わないよ」
「了解。このインゴットならうまくいけばこの層では最高級のができると思うわよ。あたしのスキル熟練度はまだそんなに高くないからうまくいかなくても文句言わないでよね。いい?」
「うん。よろしく。」

店主はインゴットを炉から取り出し真剣な視線で一瞥すると、ハンマーを振り上げる。カーン、という音と共に青色の火花が散った。二度、三度、四度。十三回目の一撃でインゴットは輝きを変えた。小ぶりの短剣に姿を変えるのを軽剣士と鍛冶屋は息を飲んで見つめる。二人の視線を浴びながら、武器は完成した。



「ふう。変な形の武器ね。攻撃力は……予想通り、あんまり高くないわね。敏捷力はかなりあるけど、それでもこのインゴットにしては低め。うーん、期待したほどよくなかったかな……、っ!?」
剣のプロパティを見ていたリズはそこで驚いたように目を見張る。

「これ、耐久値の最大値が半端じゃない。何時間戦っても刃こぼれしないでしょうね。それに幸運の値にすごいボーナスがあるわよ。祝福効果も最初からかかってるわ。ちょっと、これ何個特殊効果付いてるのよ……。なになに……?武器防御スキル効果にボーナス、投剣として使った時の耐久値減少半減・命中精度上昇、スキル冷却時間(ヒーリングタイム)-30%。あと、ええと、短剣装備時の素手攻撃にボーナス。」
「うわ、なにそれ。チートすぎない?」
「でも攻撃力低いしかなり使い手を選ぶ武器よ、これ。使いこなせそう?」
「うーん、僕けっこう装備した短剣投げたりするから使えるかも、これ。」
「あ、よく見たらこれ短剣だけど投剣のカテゴリにも含まれてる。複属性武器ってやつなのかな、あたしも初めてだわ、こんなの。サブカテゴリは《片刃円月輪(チャクラムナイフ)》ね。聞いたことある?」
「チャクラムは第二層のボス攻略でかなり活躍したって聞いたけど、僕は参加できなかったからね、あんまり知らない。チャクラムナイフなんて聞いたことないよ。」
「プレイヤーメイドの武器だとたまに二つ以上の別の種類のスキルが使える複属性武器ができることがあるって聞いたけど、あたしも実際に見たのは初めてよ。これは情報屋で買った話だけど、ベータテストの時には細剣+直剣でサブカテゴリ《レイピアソード》とか投剣+爪で《スローナックル》なんてのができたらしいわ。」
「スローナックルって……どんな武器だろ、それ。」
「さあ……」

二人はスローナックルなる武器が使われるシーンを想像してみる。
マルバの脳裏に、手から次々と発射される爪が浮かぶ。

「……役に立たなそうだね。」
「……実際に使ってるとこが見てみたいわ……」

二人揃ってため息。

「これもかなり独特な武器だけどスローナックルよりは使えるでしょ。珍しいもの見せてもらったし、二割引いておくわよ。63000コルの二割引きで50400コルね。」
「ありがと、リズベットさん。」
「リズでいいわよ。階層が上がって使えなくなったらまた持ってきてね。インゴットに戻してあげる。武器の特性は戻したインゴットに残るから気に入ったらまたチャクラムナイフにしてあげるわ。他になにか用事ある?」
「他にも何個かインゴット採れたから、予備用の短剣もお願いしようかな。投げちゃったら回収するまで使えないからね。あとこの籠手の強化と整備も。素材はこれで。残りのインゴットは売却で、差額だけ払うからよろしく」
「チャクラム系は投げたら戻ってくるからその点は大丈夫よ。でも予備は重要よね。次は割引しないわよ?」
「あはは、そんなにケチじゃないよ。それじゃあお願い。短剣の注文はさっきと同じで、籠手の強化は丈夫さに二つ」
「了解、任せといて」


青空の下、店主リズベットのハンマーがリズミカルに振り下ろされた。
 
 

 
後書き
次回は少し話が飛ぶ予定です。二十五層の話にしようか月夜の黒猫団を登場させようか迷っているところです。このままだとマルバがソロじゃなくなるのがかなり先になってしまうので……w

誤字脱字等ありましたら感想板にて報告していただければできるだけ早く直します。


*更新報告*
主人公設定を更新しました。装備の設定もきっちり書いてあります。Modまで書き込んでおきました。ステータス考えるの楽しい! 
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