オズのベッツイ
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第八幕その四
「王女はお好きですね」
「好きよ、うちのシェフはパスタも得意だから」
「それは何よりですね」
「私はフランス料理とイタリア料理をよく食べてるの、というか」
こうも言うアンでした。
「うちのシェフはその二つが専門だから」
「その二つのお料理以外はですか」
「食べないの。あとドイツ料理も作ってくれるけれど」
「三国ですね」
「ドイツ料理は専門じゃないの」
そのシェフの人はというのです。
「そちらはね」
「欧州系ばかりですね」
「そう、だから中華や今のアメリカ料理はね」
そうしたお料理はとです、アンは恵理香達にお話します。
「私は殆ど食べたことがないわ」
「和食もですね」
恵理香もアンに尋ねるのでした。
「天麩羅とかも」
「ウーガブーの国では食べたことがないわ」
「やっぱりそうですか」
「お蕎麦とかおうどんもね」
所謂麺類も、というのです。
「殆どないわ」
「美味しいですから」
「それはね、私も知っているわ」
「召し上がられたことはあるんですね」
「中華にしてもハンバーガーにしてもね」
「それでもですか」
「そうなの、ウーガブーの国から出た時だけよ」
そうしたお料理を食べる時はとです、アンは恵理香にも答えました。
「私の場合は」
「ボルシチもないのですね」
最後にナターシャが尋ねました。
「それでは」
「ええ、ロシアのビーフシチューよね」
「あれも」
「そう、ないわ」
「じゃあビーフシチューも」
「そうなの、普通のものよ」
アンが普段食べているビーフシチューはです。
「そちらよ」
「私もああしたシチューは好きだけれど」
「貴女はボルシチの方が好きなのね」
「食べ親しんできましたから」
それがナターシャがボルシチを好きな理由です。
「ですから」
「それぞれのお国が出ているわね」
アンは五人の子供達のお話をここまで聞いてです、しみじみとして言うのでした。
「貴女達のね」
「そうですね、言われてみれば」
「私もそうね」
他ならぬアンもと言うのでした。
「私もね、王宮のシェフのお料理を食べてきたから」
「フランス料理かイタリア料理なのね」
「それかドイツ料理よ」
そういったお料理が好きだというのです。
「あと飲みものはミルクで」
「今飲まれている」
「それとアップルティーやコーヒーよ」
「あっ、そういえば」
ナターシャはアンがコーヒーを好きと聞いてふと気付いたことがありました、その気付いたことはといいますと。
「フランスやイタリアはコーヒーでしたね」
「ドイツもそうよね」
「だからですか」
「王宮のメイドがコーヒーを淹れてくれるの」
そしてそのコーヒーをというのです。
「それを毎日飲んでるの」
「そうですか」
「コーヒーはいいわよ」
アンはにこにことして皆にお話します。
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