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戦国異伝

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第二百九話 もう一人の龍その五

「しかしです」
「それでもじゃな」
「はい、島津が九州の南を全て手に入れれば」
「それぞれの家の力を凌ぐ」
「それに加えてです」
 さらにというのだ。
「島津は将もいます」
「四兄弟か」
「島津の四兄弟はどの者も優れています」
 黒田は既にこのことを知っていた、それで信長にも言うのだ。
「その戦での強さは四人共無双です」
「その四兄弟が率いればな」
「大友も龍造寺も」
 そのどちらもだというのだ。
「敵いませぬ」
「そして九州はな」
「島津のものとなりましょう」
「そうなるな」
「はい、しかしです」
 ここでだ、こうも言った黒田だった。
「島津には四兄弟がいますが」
「大友、龍造寺にもな」
「まず龍造寺には鍋島がいます」
 黒田が最初に出した名はこの名だった。
「鍋島直茂が」
「龍造寺の家老じゃな」
「筆頭家老です」
「あの者がいるからな」
「龍造寺もそれなりに戦えます」
 その島津に対してだ。
「あの者の力で。しかし」
「それでもじゃな」
「やはり島津には負けます」
「そうなるな」
「龍造寺の当主龍造寺隆信は人の話を聞かぬところがあり」
 それに加えてだった。
「己自ら突っ込む癖がありますので」
「戦にな」
「しかも悪いことに」
 その龍造寺隆信にとってだ。
「あの御仁はどうやら」
「肥満しておるそうじゃな」
「それも馬に乗れぬまでに」
 そこまでというのだ。
「太っていますので」
「それで輿に乗って戦の場におるそうじゃな」
「これではです」
 輿に乗った状況ではというのだ、黒田が今度言うことは。
「何かあった時に」
「その時にじゃな」
「はい、逃げられませぬ」
「戦うことも大事じゃがば」
「逃げられなければ」
「終わりです」
「大将が死んでは終わりじゃ」
 それで、である。
「何もかもな」
「はい、ですから」
「あの御仁は何かあればな」
 その時にだった。
「逃げられぬからな」
「それが危ういです」
「それが龍造寺の弱みじゃな」
「はい、そして」
 次はというと。
「大友ですが」
「あの家はな」
「まず二人おります」
 そしてその二人はというと。
「立花道雪、高橋紹運」
「二人おるな」
「この二人が大友を支えています」
「あの二人が大友におり」
「そしtです」
 さらにだった。
「もう一人います」
「そしてその者の名は」
「立花宗茂」
 この者がいるというのだ。 
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