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戦国異伝

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第二百九話 もう一人の龍その二

「相当に難しいですが」
「それをさせるだけの鍛錬をしてじゃな」
「使っている者達です」
「まさに伊達の切り札じゃな」
「その者達が来ているとなると」
「この十万の兵でもじゃな」
「兵の数の差はあります」
 それは確かにだ。
「ですが伊達の兵は元々強く」
「しかも敵将もじゃな」
「伊達政宗を総大将としてです」
 兼続は引き締めた顔でだ、信長に答えた。
「片倉小十郎、伊達成実とです」
「優れた者達がおるな」
「他にも優れた将帥が多く」
「油断出来ぬな」
「その者達が強兵をさらに鍛えましたので」
「相当に強いな」
「その中でも特に」
 まさに、というのだ。
「騎馬鉄砲隊がです」
「強いな」
「ですから」
「この度の戦はじゃな」
「幾ら兵の数が多くとも」
 それでもだと言う兼続だった。
「油断はなりませぬ」
「そういうことじゃな」
「それで殿」
「騎馬鉄砲隊じゃな」
「あの者達への策は」
「それじゃ」
 兼続にもだ、信長ははっきりとした声で答えた。
「ある」
「ではどうされますか」
「普通鉄砲隊は止まって撃つ」
 まずはこのことから言う信長だった。
「それを騎馬鉄砲隊は駆けつつ撃つな」
「馬に乗っているが故」
「それがあの者達の強さじゃな」
 このことをあえて言うのだった。
「まさに」
「はい、鉄砲だけでも騎馬だけでも厄介ですが」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「しかしとは」
「操ることは容易ではないわ」
 ここでこのことも言った信長だった。
「到底な」
「しかしそれをあえてさせたことにです」
「伊達政宗の強みがあるな」
「はい」
「そうじゃ、しかし」
「それでもですか」
「馬に乗りつつ鉄砲を使う、そうなれば他のこといはどうなる」
 馬と鉄砲に全神経を集中させる、そうなればというのだ。
「周りを見ることも容易ではないな」
「では」
「まあ伏兵が難しくともな」
 それでもというのだ。
「あの兵についてもじゃ」
「戦の仕方がありますか」
「正面からぶつかり合うだけが戦ではない」
 むしろそれを避けることが多いのが信長の戦だ、少なくとも何の策もなくそうしたことはしない。
「今回もじゃ」
「そうですか」
「ましてこの度の戦は十万」
 織田の兵の数はというのだ。
「この十万の兵をどう使うか」
「伊達の二万の兵に対して」
「それが勝ち負けの分かれ目となるわ」
「左様ですか」
「見ておれ、勝つ」
 伊達との戦もというのだ。
「そして伊達政宗も家臣とするわ」
「殿、そう仰いますが」
 佐々がだ、ここで信長に強張った顔で言って来た。
「あの者は」
「危険だというのですか」
「信玄殿も天下を望んでおられました」
 佐々は彼のことにも言及した。
「しかしそれは野心以上に」
「遥かにじゃな」」
「天下泰平を望まれてでした」
 天下を一つにしてだ。 
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