美しき異形達
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第四十八話 薊の師その十四
「外で気軽に遊べるな」
「空き地?」
「空き地っていってもまた違うよ」
「また別の場所なの」
「ああ、とりあえずな」
「そこに行くのね」
「今からな」
こう言ってだ、薊は実際に一行をそこに案内した。そこはというと。
周りに古ぼけた倉庫があり短く痩せた草がまばらに生えている。そしてもう使われていない線路が錆びたままある。
そこに来てだ、黒蘭は薊に尋ねた。
「ここが薊ちゃんの」
「ああ、ガキの頃の遊び場なんだよ」
「確かに子供が遊ぶには」
「面白い雰囲気があるだろ」
「そうね、特に」
黒蘭は下の錆びた線路を見つつ話した。
「これがね」
「線路がな」
「想像させてくれて」
「面白いだろ、昔はどんな使われ方したんだろうな」
「そのことを考えると本当に面白いわ」
黒蘭は微笑みつつ話した。
「これが」
「だよな、それであたしもよくここで遊んだんだよ」
「こちらのお友達と」
「そうなんだよ、今もダチとは連絡取ってるよ」
横須賀、つまりこの街にいた彼等とはというのだ。
「携帯でさ」
「そうなのね」
「ただ、今回はさ」
薊は寂しそうに笑って述べた。
「皆それぞれ用事があって」
「会えないのね」
「そうなんだよな」
薊は寂しい笑みになっていた、そうして言うのだ。
「ここで本当によく遊んだよ」
「鬼ごっこをしたり?」
「缶蹴りもしたし達磨さんが転んだもな」
「色々してたのね」
「あとカード遊びもな」
それもというのだ。
「してたな」
「薊ちゃんカード遊びしてたの」
「小学校の頃はな」
そうだったとだ、薊は裕香に答えた。
「してたよ」
「そうだったのね」
「今はしてないけれどな」
高校生になった今はというのだ。
「昔はよくしてたよ、これでも強かったんだぜ」
「薊ちゃん駆け引き上手だからね」
「そうそう、カードって駆け引きなんだよ」
「遊戯王とかバディファイトでもね」
「トランプでもそうだしな」
薊はトランプについても言った。
「まあトランプはここではしなかったけれどな」
「お家の中でとかするものだから」
「カードは。まあメンコの要領で外でもしてたよ」
「じゃあメンコもここでしてたのね」
「してたよ、それも」
「ここで色々してたのね」
「本当にいい遊び場だったよ、他にも遊び場あったけれどな」
薊は昔を懐かしむ顔のまま語るのだった。
「横須賀は遊ぶ場所多いんだよ」
「それ羨ましいわ」
裕香はここでもこう薊に言った。
「遊べる場所多いって」
「裕香ちゃんのところ遊び場もなかったのかよ」
「山よ、山で遊べばいいけれど」
「山って危ないだろ」
「ええ、蝮もいるし蜂もいるし」
裕香はその顔を曇らせて薊に答えた。
「それもスズメバチね、あとヤマカガシも毒持ってるし」
「ああ、そうらしいな」
「そう、だから気をつけないといけないの」
蝮だけでなくこの蛇にもというのだ。
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