劇場版・少年少女の戦極時代
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ドライブ&鎧武 Movie大戦フルスロットル
別たれた友情は二度と戻らないのか?
光実と碧沙を先に行かせてから、斬月とデュークは熾烈なまでに切り結んだ。
戦極ドライバーではゲネシスドライバーに敵わないと言われたが、斬月は決してそうは思わなかった。斬月は一度、まさにこのメロンアームズで、ゲネシスライダーのシグルドを圧倒したことがある。
だが、その読みは甘かったと思い知る。
元より威力の高いドラゴンフルーツの、エナジーロックシードによる強化。
さらには、デューク自体が機械であるゆえの、人体を凌駕したポテンシャル。
それら全てが斬月を追い詰める。
『つくづく分からない男だなあ、キミは』
デュークはエナジーロックシードを創世弓にセットした。
《 ロック・オン 》
放たれた赤黒いソニックアロー、そして龍の息吹と見紛うエネルギーショットをまともに食らい、斬月は地面に倒れた。防御に秀でたメロンアームズでさえ、凌げなかった。
『私の研究があればキミは神にだってなれたはずだ。今度は偉大なるメガヘクスとの融合を拒んでいる。何がキミをそこまで頑なにさせるのか。ま、分かりたいとも思わないがね』
分かりたいとも思わない。
凌馬は無自覚に発しただろうフレーズに、貴虎の中で、ある回顧が起きた。
――まだ戦極ドライバーさえ完成しておらず、貴虎と凌馬が本当の意味で親しい仲にあった頃のことだ。
自身が導き出した神話起源論を熱く語る凌馬に、ふと、言ってみたことがあった。
“永遠に正解が分からないものを追究することの、どこが楽しいんだか”
これに対し、凌馬は眼鏡の奥の瞳をキラキラさせて貴虎に詰め寄った。
“えー!? 何で!? 分からないほうがワクワクするじゃないか!”
斬月は痛む全身を押してどうにか立ち上がった。
『あの頃のお前は“分からないもの”を追い求めることをこそ至上としていたな。俺はそんなお前を、意外と嫌いじゃなかったんだよ』
デュークが、仮面があっても分かるほど、怪訝そうにした。
『だが今のお前は違う。メガヘクスの奴隷に成り下がって、システムという檻を全知だと思い込んでいる』
『――黙れ』
デュークにも斬月が訴えようとしている内容が分かってきたようだ。
『何故追い求めることをやめてしまったんだ。神になって全知の存在になりたかったのか? 機械の一部になってまで全能感を得たかったのか?』
『黙れと言ってるだろうが!』
『黙らない。お前は――俺が知る戦極凌馬はそんな小さい男じゃなかった』
『うるさいッ!!』
デュークはまるで伸べた手を叩き払うように腕を振った。
『君に私の理想を理解してもらおうなどとは、もう思っていないよ。――さあ。全てを終わりにしよう』
デュークがドライバーのコンプレッサーを1回押し込む。
『――そうだな。終わらせよう』
斬月がカッティングブレードを1回切り落とす。
一瞬の、静寂。
斬月は、デュークは、同時に互いへ向けて足を強く踏み出した。
斬月が投げたメロンディフェンダーを、デュークは弓で叩き返す。
図ったように、無双セイバーと創世弓は互いを等しく斬った。
だが、それでは終わらない。この男がこのような一撃で膝を突くはずがない――という、長く共に過ごしたからこその、信頼にも似た、皮肉な確信が、両者をふり向かせた。
斬月が無双セイバーを突き出した。
デュークが創世弓を振り下ろした。
――先に膝を屈したのは、斬月のほうだった。
されど、斬月の無双セイバーは、過たずデュークの腹を貫いていた。
無双セイバーを引き抜いた拍子に、デュークは苦悶の声を上げながらまろび、引いた。
荒い息をしながらも、目を逸らさなかった。
凌馬の、変身が解けたことで剥き出しになった、顔面の機械部分から。
凌馬の、火花を散らしてショートする、全身から。
「貴虎……やっぱりキミはすごいや……さすがは僕が、一度は見込んだ男、だよ……」
手が伸びたのは無意識だった。
伸ばした手の先。かつては確かに友だった戦極凌馬――を模した機械人形は、爆散し、粉々になった金属片を残し、この世のどこからもいなくなった。
後書き
未来パラレル編での凌馬の「みんなキミが意外とスキだった」の対句的な。
凌馬に対する貴虎の訴えは、あんだるしあの中での戦極凌馬像ですので、違うと思われる方は、遠慮なくこの回をスルーしてください<(_ _)>
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