極短編集
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短編65「大きな本屋」
「パパ!大きな本屋を見つけたよ」
3歳の息子が目を丸くして、外から帰って来た。ママとお使いの帰りだ。
「そっかあ!駅前の本屋が出来たか」
僕は、駅前に新しく本屋が出来るのを知っていた。そうか!そんなに品揃えが凄いのか~。僕は、ワクワクした。早速、息子と出かけた。行ってみると……
本当に……
大きかった!
「ねっ!パパ、大きな本屋さんでしょ?」
確かに、本がデカかった!本屋の入り口は普通なのに、中には巨大な本が陳列されていた。
「いったい誰が読むんだ?……巨人か?」
本の中身が見たくても、重たくて取り出せなかった。向こうで、棚から無理に出した人が、本の下敷きになっていた。お店の奥には、これまたデカい、2、3階分はあるかと思う本が壁に立て掛けられていた。
「ねっ!パパ、本当に大きな本屋さんでしょ?」
息子よ!ここは、大きな本屋ではない……ここは、「大きな本」の店だ!しかし、まあ……
「どうやって読むんだ、この本!?」
僕は、息子と小一時間、本の背表紙を見回った。帰り道、僕は、めくること叶わない本の事を思い……
「ああ、あのタイトルの本……読みたいなあ~!」
と、呟いたのだった。
おしまい
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