極短編集
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短編63「ゆでたまご」
ピンポーン
と、チャイムが鳴る。また来たか!と、私はため息をつく。夫の海外への単身赴任になることから、義父母の近くに越たのだが、それからしょっちゅう義父母が孫に会いに来るようになった。
「目に入れても痛くない!」
「食べちゃいたいくらい可愛い!」
以前は、前もって連絡があったのだが最近は、突然来るようになった。そして今朝も・・・
ピンポーン
えっ!また~!?ドアののぞき穴から見るとニコニコした義父母が、卵を抱えて立っていた。玄関を開ける。
「新鮮なうちにと思って!」
ニコニコして義母が言った。はっきり言って迷惑だ。朝は朝でいろいろと支度があるのに。今だって、昨夜いろいろと遅くなってしまい、朝のシャワーを浴びようとしていた所だったのだ!!
「これ、ゆで卵にしたら美味しいのよ!そうしましょ~、ゆで卵~!」
ワーワーギャーギャーと、うるさい。作るわよ!作るわ、ゆでたまご!!
「20分ほどで出来ます」
私はそう言うと、風呂場へと向かった。お湯の温度を最大にし、湯を張った。
『そんなに食べたきゃ作ってあげるわよ。ゆでたまごを!!』
私は淡々と作業をした。20分経った。
「お待たせしました」
「こっ、これは……!?」
私は震える義父母を見て、あざ笑いながら言った。
「見ての通りの
ゆでた孫よ!」
おしまい
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