ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十一話 継承
前書き
継承式編です。
ちなみに書くにあたり色々調べましたが、あまりにも色々ありすぎたので「たぶんこんなものだろう」と作者の想像で書きました。
ご了承下さい。
「私、オジロニア・エル・ケル・グランアバニアがパパス・エル・ケル・グランバニアに代わりてアベル・エル・ケル・グランバニアに王位を継承する。前へ」
アベルはオジロンさんの前に出、跪いた。
「汝、アベル・エル・ケル・グランバニアはグランバニア王位を継承する。汝は王冠を被る覚悟はあるか?この国を支える覚悟はあるか?」
「この身朽ちるまで」
アベルはオジロンさんの問いに即答した。オジロンさんは頷くと、アベルの頭へ王冠を被せた。
「マーサ・エル・シ・グランバニアに代わりてビアンカ・エル・シ・グランバニアに尋ねる。そなたは王妃となり、王をそして国を支える覚悟はあるか?」
「永遠に」
その言葉も、眼差しも凛としていた。オジロンさんは再び頷くとビアンカの頭にティアラを被せた。
「では、新王の演説を」
アベルは頷くと前に出た。
「この度、グランバニアの新王となったアベル・エル・ケル・グランバニアです。
正直に言ってしまいますが私は政というものが何なのか、王というものがどうあるべきなのか、国というものがどんなものであるのか全く知りません。私は無知な王です。
しかし、私は先王であったパパスに憧れています。パパスに追いつき、パパスが見てきたものがなんなのか理解したいのです。父の遺志を受け継ぎ、父がいた場所に立つことで何かを知りたい、何かを感じたいのです。
こんな国王で頼りないと感じるかもしれませんがどうか、アベル・エル・ケル・グランバニアをよろしくお願いします。
願わくばこの国が皆様と共にあらんことを」
アベルの演説が終わると、拍手が起こった。最初は小さな拍手がまばらに聞こえるだけだったがだんだん大きくなっていき、ついには拍手の洪水が起こった。
オジロンさんはどことなく嬉しそうな顔をしていたが、その顔を厳粛なものにすると荘厳な声を出した。
「今、この時より新たな王と王妃が誕生した!アベル・エル・ケル、グランバニア、ビアンカ・エル・シ・グランバニア。両者の繁栄を願って、祈りを」
私は新たな王と王妃が果てなく栄えることを祈った。それだけじゃない。アベルの人生がもう何者にも引き裂かれないことを。私みたいに第三者に日常の温もりを奪われないことを心から祈り、願った。
*
継承式が終わるとパーティが始まった。
私はドリスやモンスター達と一緒に料理を食べたがこれがまた絶品だった。
その後皆と食後の紅茶(もう酒を間違って飲みたくないので飲み物はお茶にしている)を飲みながら他愛ない会話をしているうちにパーティはお開きとなった。
自室に戻ろうと廊下を歩いていると誰かとぶつかりそうになった。
「ごめんなさい、大丈夫でしたか」
その人は少し太っていた中年の男性で、豪奢な服を着ていた。確かゲバンという名前の大臣だったっけ。
「いえいえ、なんともありませんよ。それよりあなたは……。」
「ミレイです」
その時ゲバンさんの目に何かが宿ったのを私は見た、決していいものではないような何かが。
「ほう、あなたがミレイさんですか。確か強力な魔法の力があるとか」
口から出た言葉がそれだったのが嫌だったが顔に出さないようにした。
「はい。でもそれがどうかしましたか?」
「いやなんでもないのだよ、ミレイさん。それではお休み」
「お休みなさい」
私はゲバンさんに挨拶をして、その場を立ち去った。
その時私は確かに聞いたのだ。
「魔法の力……。どんなものでも使いよう、か」
といった声を。
ページ上へ戻る