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戦国異伝

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第二百八話 小田原開城その四

「相変わらずか」
「はい、こうして我等が関東を攻めている間も」
「その間もです」
 まさにと答える二人だった。
「奥州で暴れ回り」
「最上氏と戦をしているとか」
「そして関東の方にもです」
「迫っております」
「左様か」
「はい、ですから」
「やはり」
 伊達はだ、そうなっているというのだ。
「佐竹殿のご領地にもです」
「近寄っています」
「そもそも佐竹家と伊達家は宿敵の間柄」
「これまで何度も衝突しております」
「そして、です」
「いよいよ」
「最早佐竹は織田に降った」
 信長は二人にこのことから答えた。
「即ちじゃ」
「はい、佐竹殿のご領地に攻め入ることは」
「そのまま織田家に攻め入ること」
「そうなりますな」
「やはり」
「それは許さん」
 断じて、という口調での言葉だった。
「だからじゃ」
「はい、ここは」
「若し伊達が佐竹殿のご領地に入ろうとするならば」
「やはり、ですか」
「戦に」
「そうする。しかし今は北条じゃ」
 この家のことというのだ。
「是非じゃ」
「北条氏康殿と」
「会われますか」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「あの者もじゃ」
「家臣とされますか」
「そうされて」
「北条家も全て」
「織田家に加えられますか」
「そうする、では会おうぞ」
 こう言ってだった、信長は自身の本陣に氏康を呼んだ。そうして氏康も信長のその申し出に応えてであった。
 白の服に具足、陣羽織という北条家の身なりで信長の前に出てだ、まずは深々と一礼した。そのうえで彼に言った。
「この度は織田殿のお招きに応じ」
「来てくれたな」
「左様、そして」
「降るか、当家に」
「それがしの命で」
 氏康はすぐに顔を上げていた、そのうえで信長を見据えて言うのだった。
「他の家臣、民達は」
「いやいや、貴殿もじゃ」
「それがしも」
「欲しいからこそここに来てもらった」 
 こう氏康に言うのだった。
「だからじゃ」
「それ故に」
「よいか」
 こう氏康にだ、信長は問うた。
「生きてじゃ」
「そのうえで」
「わしの家臣となり」
 そのうえでとだ、信長は氏康に語っていく。
「天下の為に働いてくれるか」
「それがしを」
「御主は関東だけにおっては勿体ない」
 信長もだ、氏康を見据えて言う。 
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