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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第百四十八話 愚かな希望

ホーリーストーンがあると言われている谷にタケル達は来ていた。
ヒカリと京が吊り橋を渡り、伊織とタケルが吊り橋を渡ろうとした時。

太一「おーい!!」

タケル「太一さん!!それにお兄ちゃん達も!!」

声がした方を見遣ると、太一達がパートナーデジモンと共に来ていた。

ピヨモン[私達も何かお手伝い出来るかなと思って…]

パルモン[私達も一緒に戦う!!]

タケル「あ、ありがとう。心強いよ!!」

兄達の加勢に仲間達の士気もきっと上がるだろう。
デジモンカイザーがいなくなり一時は平和が戻ったデジタルワールドだが、アルケニモン達の出現やダークタワーデジモンの襲来などがあり、彼らが再びエリアを守ってくれているようだ。
何より今は大輔達も敵対している現状で兄達の手助けは有り難い。

伊織「出来るなら大輔さん達と話が出来ればいいんですけど…」

タケル「…どういうこと伊織君?」

伊織「それは…どうしてホーリーストーンを消すのか。それを聞きたいんです。きっと何か事情が。」

タケル「どんな事情があろうと関係ないよ。奴らは敵なんだ。敵のことを知る必要なんかないよ。」

伊織「でも…」

タケル「奴らは闇なんだ。闇を放置しておく訳にはいかない」

それでも尚、タケルはそう言い切る。
何故、タケルはこうも闇を憎むのだろうか?
伊織は知りたい。
光子郎の知識の紋章を受け継いだからというだけではない。
伊織は一個人としてタケルの思いを知りたかった。


































山の谷間に見え隠れする聖石を見つけ、子供達達は急降下した。
ホーリーストーンはそれぞれ形が違うようだ。
今度のものは磨き上げられたクリスタルのように鋭く尖っている。
ともあれ、近くに大輔達の姿は無い。
どうやら間に合ったようだ。

太一「どうやら大輔達はまだ…」

大輔「いえ、もういます」

全員【!!?】

声がした方を見遣ると大輔達とパートナーデジモン達の姿。

大輔「そろそろ来るかなと思ってたんだけど、ああ、八神さん達と合流していたのか。」

ヒカリ「大…本宮君」

大輔「大方俺達を止めに来たんだろ?悪いけどそれは出来ない。時間を無駄にしたくないし、退いてくれないか?」

タケル「ふざけるな!!お前達は此処で倒してやる!!エンジェモン!!」

エンジェモンが大輔達に突撃するがブイモンが前に出ると同時にエンジェモンを殴り飛ばした。

フレイモン[おい]

ブイモン[悪い悪い。でも仕掛けてきたのは向こうだぜ。仕方ない。相手してやるか。さあ、来いよ]

人差し指をくいくいと動かし、挑発するブイモンにタケルは歯軋りし、エンジェモンに指示を出す。

タケル「後悔するなよ!!エンジェモン、攻撃を!!」

エンジェモン[ヘブンズナックル!!]

ブイモンに向かって一直線に伸びる光。

ブイモン[ケッ!!]

それを鼻で笑うと、ブイモンは拳で光を弾いた。

エンジェモン[何!?]

ブイモン[反撃ターイム!!]

ブイモンが凄まじいスピードでエンジェモンに肉薄すると、渾身の右ストレートをエンジェモンの鳩尾に叩き込んだ。

エンジェモン[がは!?]

ブイモン[そらそらそらそら!!]

仰け反ったエンジェモンに拳のラッシュ攻撃。
避ける暇さえないのか為す術なく攻撃を受けるエンジェモン。

タケル「エンジェモン!!」

ミミ「ブイモンは成長期なのに何でこんなに強いの!?」

京「反則よ反則!!」

ブイモン[強いのは当たり前だ。俺はスペックに頼りきりのお前達とは違って、血反吐を吐くような特訓をしてきたんだからな!!]

強烈な回し蹴りがエンジェモンに炸裂し、岩壁に叩き付ける。
成熟期が成長期に手も足も出ない。
それは太一達の今までの常識を覆すことであった。

エンジェモン[くっ!!]

苦し紛れのホーリーロッドの一撃。
しかしそれはブイモンのロングソードで切断された。

ブイモン[ブイモンシュート!!]

エンジェモンをまるでサッカーボールのように蹴り飛ばす。
そして何度もバウンドして、ようやく止まった。

ブイモン[よーし、終わり~]

パンパンと手を叩きながら大輔の元に向かうブイモン。
しかしエンジェモンは立ち上がり、必殺技を繰り出した。

ブイモン[粘るなあ。ほらもっと頑張れ。]

エンジェモンの必死の攻撃を軽く捌いていき、お返しとばかりに頭突きを喰らわせた。

エンジェモン[くっ…]

ブイモン[悪いことは言わないから止めときなさい。レベルが違いすぎる]

タケル「何だと!?」

ブイモン[実際その通りじゃないか。成熟期で成長期とまともにやり合えないなんて恥ずかしくないか?どんだけ特訓しなかったんだよ。大輔、時間の無駄だからやってしまおう]

大輔「そうだな。まさか此処まで弱いとは俺も思わなかったぜ」

ブイモン達がホーリーストーンに歩み寄ろうとした時。

タケル「許さない……許せない!!恐怖や憎悪……戦慄や暗黒……!!そんな力で世界を変えようなんて……世界を手に入れようなんて……許せない!!」

ブイモン[ん?何だ?まだやる気か?諦めの悪さだけは認めてやるかな?]

エンジェモン[タケルの…タケルの言う通りだ…どんな理由があったとしてもホーリーストーンはやらせない!!]

ブイモン[はあ…話していないから仕方ないのかもしれないけどな。いい加減…]

いい加減、付き合いきれないと感じたのか、ブイモンの動きは早かった。

ブイモン[しつこいんだよ!!]

顔面に強烈な蹴りを叩き込み、足を掴んでホーリーストーンに叩き付けた。
エンジェモンが叩きつけられたホーリーストーンが、何の前触れもなく青白い光を放った。
それに呼応するように、その下に倒れ伏したエンジェモンも光に包まれる。

アリシア「え?何?」

ユーノ「多分エンジェモンとホーリーストーンが共鳴したんだ。どっちも神聖の力を持っているし」

エンジェモン[エンジェモン超進化!ホーリーエンジェモン!!]

神々しい光を纏って現れたのは、エンジェモンの完全体、ホーリーエンジェモンであった。

ブイモン[へえ]

感心したようにホーリーエンジェモンを見つめるブイモン。

タケル「よし、行け!!ホーリーエンジェモン!!」

大輔「やれやれ、エリオ。ダスクモンを」

エリオ「はい。ダスクモン、父さんと一緒に」

ダスクモン[仕方ない…ブイモン、俺と代われ]

ブイモン[はいはい]

ダスクモンとチェンジするブイモン。
ダスクモンは大輔と融合するとホーリーエンジェモンと向き直る。

ホーリーエンジェモン[凄まじい闇の力………お前は、このデジタルワールドにあってはならない]

ダスクモン[ふん。お前に俺の存在を否定する権利があるとは到底思えんがな]

ホーリーエンジェモンとダスクモンが同時に剣を構えた。
ホーリーエンジェモンの聖剣エクスキャリバーとダスクモンの妖刀ブルートエボルツィオンが輝きを放つ。

ホーリーエンジェモン[闇は闇に還れ!!]

ホーリーエンジェモンがエクスキャリバーを振り下ろすが、ダスクモンは余裕の表情で受け止める。

ダスクモン[どうした完全体?俺は成熟期だ。しかも属性ではお前が有利だ。お前が有利なのだぞ?]

ホーリーエンジェモン[ぐっ!!]

このままやっても押し切れないと考えたのか距離を取る。

ホーリーエンジェモン[ヘブンズ]

ダスクモン[デスゲーズ!!]

瞬間移動のゴーストムーブでホーリーエンジェモンの背後を取るのと同時に光線を喰らわせ、ホーリーエンジェモンを地面に叩き付けた。

ヤマト「は、速い…」

ダスクモン[その技は完全に発動する前に使用者を叩き潰してしまえばいい。そんな隙だらけの技が通用するわけがないだろう]

戦いは再び一方的。
ホーリーエンジェモンは完全体の光属性でダスクモンは成熟期の闇属性。
しかし、まるでホーリーエンジェモンが赤子のように叩きのめされてしまう。
太一達はまるでヴァンデモンやダークマスターズの時のようだと思った。
まるで手も足も出ずにやられてしまう。

ダスクモン[ダスクモン、スライドエボリューション!!レーベモン!!]

レーベモンにスライドエボリューションするとホーリーエンジェモンの体勢を崩すのと同時に必殺技を放つ。

レーベモン[エントリヒ・メテオール!!]

必殺技のエネルギー弾がホーリーエンジェモンに炸裂し、ホーリーエンジェモンは錐揉み回転しながらタケルの元に転がる。

タケル「ホーリーエンジェモン!!」

ホーリーエンジェモンに駆け寄るタケル。
悔しげに唇を噛み締める。
悔しい。
何で勝てないんだ。

タケル「あんな奴らにどうして勝てないんだ…あんな闇の力で世界を滅茶苦茶にしようとする奴らに…」

ティアナ「まだ言ってる…」

妄想もここまでくれば立派だ。
どうやらタケルの中では闇=世界を破滅させようとする悪。
というのが出来上がっているらしい。

タケル「負けるなホーリーエンジェモン!!あんな奴らなんかに!!」

タケルの言葉に呼応するように、ホーリーエンジェモンが更に光に包まれた。

ダスクモン[………]

ダスクモンはホーリーエンジェモンの変化が終わるまで待っていた。
そこには蒼い甲冑と、10枚の金翼を生やした究極体の天使型デジモン。

ダスクモン[セラフィモンか]

タケル「やった!!究極体に進化した!!これで奴らを倒せる!!」

セラフィモン[…………]

歓喜するタケルとは正反対にセラフィモンは無表情、無言である。

大輔『まずいな…』

闇への憎悪が強すぎるためか、パートナーの気持ちを蔑ろにした進化。
それによって暗黒進化一歩手前の状態だ。

大輔『世話が焼けんな…』

大輔は呆れ果てながら、セラフィモンとタケルを見つめていた。 
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