| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百七話 甲斐姫その十

「お見事です」
「わしの武芸なぞ知れておる」
「と、いいますと」
「慶次はより強い」
 彼はというのだ。
「あの者はな」
「前田慶次殿は」
「それに才蔵もじゃ」
「可児殿も」
「わしより強い、あの二人でなければ」
 それこそというのだ。
「御主は倒せぬな」
「面白いですね、それでは」
「それではか」
「そのお二人とも刃を交える日を楽しみにしております」
「そう言うか」
「さて、既にです」
 甲斐姫は大谷と一騎打ちをする中でも戦局を見ていた、既に堤は完全に壊され水は完全に城から離れていた。
 そしてだ、そのうえでだった。
 織田の軍勢もかなり逃げているのが見えた、そして自分の兵達もだ。
 今なら無事に逃げられる、こう見てだ。
 一旦薙刀の突きをこれでもかと繰り出してだ、大谷の動きを止めて。
 そしてだ、即座に後ろに跳んで間合いを離して。 
 踵を返して後ろに下がって駆けてだ、そのうえで。
 後ろ、大谷の方を振り向いてこう言ったのだった。
「ではまた」
「会いか」
「手合わせをしましょう」
「そしてじゃな」
「はい、そのうえで」
 さらにというのだ。
「前田慶次殿、そして可児才蔵殿とも」
「手合わせをしたいのじゃな」
「その為に私はこの戦生き残ります」
「城を守り抜きか」
「そのうえで」
 大谷に確かな顔で告げた言葉だ。
「また」
「会うか」
「それではな」
「はい、それでは」
 こう話してだ、甲斐姫は城に下がった、そのうえで。
 大谷は兵をまとめて自分達の陣まで下がった。幸い水は織田の軍勢を脅かさず石田達は無事だった。だが。
 このことを受けてだ、石田はこう言った。
「仕方ない、ここはじゃ」
「うむ、ではな」
「ここはですな」
「そうじゃ、城を囲みじゃ」
 そのうえでというのだ。
「敵を封じてな」
「北条との戦が終わるまでじゃな」
「そのままでいますか」
「忍城は陥ちぬ」
 絶対にというのだ。
「甲斐姫は強い、おそらく水攻め以外で攻めてもな」
「うむ、無理じゃ」78
 大谷がここで石田に言って来た。
「だからな」
「ここは兵糧攻めじゃ」
「あちらに兵糧が多くあろうともな」
「うむ、囲みじゃ」
 そしてだった。
「城を封じて戦が終わるのを待とうぞ」
「それではな」 
 こうしてだった、石田達は忍城を囲んだまま動かなくなった。成田も城の中からその織田の軍勢を見てだ。
 水攻めを防いだ甲斐姫にだ、こう言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧