美しき異形達
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第四十七話 院長の話その二
「皆そうなんだよ」
「孤児なんだね」
「皆ご家族はいるけれどさ」
「本当のご両親は、だね」
「わからないんだよ」
「そう、八人だね」
院長はここでしみじみとして言った。
「君達はやっぱり会ったんだね」
「やっぱり?」
「薊ちゃん、今まで黙っていて御免」
院長は不意に薊に頭を垂れて謝罪した。
「本当のことを隠していて」
「本当のことって」
「私に薊ちゃんを預けてくれた人は」
「あたしの本当の親かい?」
「薊ちゃんに親はいないよ」
院長は薊にこうう返した。
「誰もね」
「!?どういうことだよそれって」
「薊ちゃん、そして君達八人は皆親がいないんだ」
言ったのは薊に対してだけではなかった。
「本当の親はね」
「わかっていないっていうのかい?いや」
「そう、違うよ」
「そうだよな、まさか」
「薊ちゃん達は普通に産まれてきていないんだ」
院長が言うのはこの事実だった。
「皆ね」
「それどういうことだよ」
「うん、それはね」
一戸級置いてからだ、院長は薊にこう言った。
「薊ちゃんは。どうやら」
「どうやら?」
「実は薊ちゃんが十歳の時にある人がこの孤児院を尋ねてきたんだよ」
薊のその目をだ、強く見詰めての言葉だった。
「赤い服を着た小柄な。緑色の猫みたいな目の人がね」
「その人はまさか」
菖蒲はその服と目の色を聞いて院長に問い返した。
「白人の人ですか」
「うん、そうだったよ」
「そうですか、やっぱり」
「まさか本当にいるとは思わなかったよ」
こうも言う院長だった。
「あの人がね」
「伯爵ですね」
「そう、サン=ジェルマン伯爵と名乗ったよ」
院長もこの名前を出した。
「この人のことは私も本で読んで知っていたけれど」
「その人のことはあたしも聞いたよ」
薊もここで言う。
「錬金術を極めた不老不死の人だよな」
「そう、実在すると言われていたけれど」
「本当にいてか」
「うん、そしてね」
そのうえで、というのだ。
「その人が来てね」
「この孤児院にか」
「深夜にね。この部屋とはいっても建て替える前のこの部屋に来たんだよ」
院長は薊達に真剣な顔のまま話していった。
「そして薊ちゃんのことを。私に話してくれたんだ」
「普通に生まれた人間じゃないってか」
「人造人間だとね」
「そうか」
「驚かないんだね」
「実はこっちの学校である人達に会ってさ」
智和、そして博士の二人だ。
「そんな話をしてもらってさ」
「そしてだね」
「ああ、あたし達の身体のことも調べてもらってるけれど」
「薊ちゃん自身が気付いていたんだね」
「だってよ、おかしいだろ」
こう言うのだった。
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