マンホールの中
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4部分:第四章
第四章
「お客さんじゃないんですか?」
「いや、お客さんって」
「俺達はだ」
ここで彼等は自分達の事情をこの怪しい何かに対して語るのだった。
「マンホールの中に何かがいるって聞いて」
「それで開けただけだが」
「ああ、じゃあ私達のことですね」
この怪しい存在は今度は二人の言葉に頷いてきたのだった。
「私達の」
「私達って!?」
「じゃああんた達はまさか」
「そうですよ、マンホール人ですよ」
楽しそうに笑いながら二人に対して言ってきた。
「そのマンホールの中に住んでいる。私達がですよ」
「ほら見ろ」
昇はここまで聞いて笑顔で翔に対して言ってきた。
「マンホール人は本当にいただろ?本当にな」
「そんな筈がない」
しかし翔は実際にそれを見てもまだ信じようとはしなかった。
「マンホール人なんてそんな馬鹿な存在がいる筈がない」
「けれど実際にこの人がそう言ってるじゃないか」
「大体どうしてマンホールの中に人が住んでいるんだ?」
彼は現実的な視点からこう語るのだった。
「大体。どうしてなんだ」
「ああ、そういえばそうだよな」
そして昇は今それに気付いたような顔を見せてきた。
「考えてみれば。おかしいよな」
「そんな筈があるか」
翔はまた言うのだった。
「マンホールの中に人が住んでいるなんてな」
「まあまあ落ち着いて下さい」
しかしマンホール人は温厚そうな笑みを浮かべてそんな翔に対して言ってきたのだった。
「百聞は一見にしかずですよ」
「百聞はか」
「何なら私達の世界に来て下さいよ」
そしてその短く太い指がある手を振ってきて言うのだった。とりあえずその指は五本あって一応は人間であると説明できはした。
「私達の世界に。それだと納得できるでしょう?」
「見たらな」
見ても信じていなかったがそれでもこう言うのだった。
「信じるかもな」
「じゃあ決まりですね。どうぞ」
「よし、行くか」
もう昇は最初からそのつもりだった。すぐに翔に対して声をかけた。
「いざマンホールの世界にだぜ」
「本当に行くのか」
しかし翔はそれでも戸惑うものを見せていた。
「マンホールの中に」
「ここまで来て何言ってんだよ、早く行くぜ」
「ああ、わかった」
こうして彼等はそのマンホールの中に入っていった。マンホールの中に入るとだった。もうそこは完全に別世界であり彼等の見たこともない世界が広がっていた。
街があった。小さく丸い家が立ち並ぶ街が。遠くに見えるビルも同じでやはり丸い。それはドームのような形をして家々と同じく居並んでいた。
行き交う人々は小さく丸々と太っている。そして目がやけに大きい。しかしとてもにこやかに笑い何の悩みもないようだった。着ている服は毛皮だった。
「あれっ、そういえば服は」
「鼠の毛なんですよ」
彼等に最初に会ったマンホール人が答えてきた。
「私達の服は」
「鼠の毛を服に」
「他には皮も使いますよ」
こう昇に答えるのだった。
「皮もね」
「そうなのか」
翔はそれを聞いてとりあえずはそれがどうしてか察しをつけた。
「増えやすいからか」
「そうなんですよ。何しろネズミ算といいますから」
地上の言葉がまた出て来た。
「だからそれを使って服にしてるんですよ、昔から」
「成程な」
翔はそれを聞いてあらためて頷いた。
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