戦国異伝
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第二百七話 甲斐姫その三
「これでこの度の戦は一段落となるが」
「いえ、殿」
「おそらくですが」
幸村と兼続は今度は自分から信長に対して言った、その言った言葉とは。
「もう一つです」
「もう一つ戦があります」
「伊達じゃな」
信長もわかっている顔で二人に答えた。
「あの者達じゃな」
「はい、今も奥州で戦を繰り返しです」
「我等の使者も返すだけです」
「おそらくは奥州を手に入れ」
「続いて羽州も」
「そうじゃろうな、そして奥羽の覇者となり」
そして、とだ。信長は先の先を見越している目で言った。
「そのうえでだ」
「まさか織田と」
「織田家と戦うつもりですか」
「そうであろう、あの者も天下を狙っておる」
「伊達政宗もですか」
「そうなのですか」
「あの者も野心がある」
このこともだ、信長は見越していた。それでこのことについても言うのだ。
「だからな」
「それで織田家とも」
「戦いますか」
「やはり戦うことになるか」
これから、というのだ。
「今の戦の後でな」
「伊達政宗とも」
「一戦しますか」
「それにあの者もな」
政宗個人についてもだ、信長は言った。
「わしは家臣にしたい」
「その天下を狙う者をですか」
「家臣に」
「面白いではないか、そこまで英気があるのならな」
それこそ、というのだ。
「わしも会ってな」
「そして、ですか」
「一戦交え」
「そのうえで」
「家臣にされますか」
「そうしてみせるわ」
こう言うのだった。
「是非な」
「伊達も勢力に収め」
「では奥州も」
「いや、確かに伊達は降す」
信長は二人にこう返した。
「しかしじゃ」
「奥州はですか」
「その土地は」
「伊達の領地もまた手に入れるが」
織田の領地に組み入れるというのだ。
「しかしじゃ」
「奥州全体はですか」
「今は」
「うむ、領地が広くなり過ぎる」
今の時点では、というのだ。
「だからな。そこまでじゃ」
「伊達以外の奥羽の大名は攻めず」
「そのままですか」
「九州も同じじゃ」
そちらもだというのだ。
「まだ攻めぬ」
「ではそういった国々を攻めるのは」
「何時でしょうか」
「数年後じゃ」
今ではなく、というのだ。
「数年後な」
「その時にですか」
「攻めまするか」
「まずは手に入れた国々も収める」
毛利や武田、上杉、それに北条等の領地をいうのだ。
「無論これまでの領地もな」
「そしてそれが整った時」
「その時にですか」
「九州を攻め」
そしてだった。
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