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『珍』守府へ、ようこそ

作者:茅島裕
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○○一 ようこそ、鎮守府へ

 
前書き
人生初うなぎを食べたどうもうp主妹紅です
魚が苦手な私には美味しさがイマイチ伝わらなかったですけど一口目は確かに美味しかった気がします。
まぁ、もう二度と食べない(食べれない)と思いますけどね

本編、どぞ 

 
いつも通り、ベッドの上で横になり、顔を伏せて目を開けたまま。何をするわけでもなく、そのままだ。
部屋の至る所にガラス張りになって置いてある船... 全て軍艦のモデルである。戦艦から始まり、有名な、優秀な、史実の大きい軍艦は全て置いてある。
その中でも一つ、他の軍艦よりも大きく目立たく置いてあるモデルがあった。元の軍艦が大きいわけではない、モデルが大きいのだ、大きく造られているのだ。
ベッドに伏せていた人物の男は、フッと立ち上がり、その一回り大きく置かれている軍艦(モデル)を覗き込んだ、そして男は一息吐き、自分の頭の天辺を細かく掻き毟った。

「お疲れ様」

男はそう、一言呟き、その軍艦から視線を外した。後ろに振り返り、目の前にあるデスクに座る。デスクに置いてあったノートパソコンを片手で開き、空いたもう片手をズボンのポケットに突っ込み、何やら探す。
軽快に慣れた手つきで坦々とパスワードを打ち込み、ポケットから取り出した一枚の小さな紙を凝視した。
『艦隊これくしょん』
その紙にはそうメモが書かれていた。
ブラウザから、キーボードを打ち込む、『艦隊これくしょん』と...

何やらそれ、艦隊これくしょんとはブラウザゲームらしい。男はマウスを操作し、それを始めた。
パソコンの画面に表示される、"サーバー"。男は何も考えていなかったのだろう、取り敢えず入り込めるサーバーをクリックした。
無表情だった男の表情が一気に変わる...

ようこそ、提督



■■■


一つ大きな机がある部屋に一人ポツンと少女が居た。制服を着た少女だ、手には身長に似合わない大きなモップ。部屋を掃除しているらしい

「なのです、なのです」

と、モップを上下させる度にそう口癖染みた言葉を発する少女。
ふぅ... と一息吐いて、自分の額を腕で拭った。

あとは窓拭きだけなのです。

少女がモップを片付けに行こうとしたときだった

「ぁぁぁぁあああ!!!」

部屋中に大きな叫び声、徐々に近くなり... 終いには叫び声よりも遥かに大きな打撃音が部屋中を反響させた。

「たっ、大変なのですっ!!」

少女はその音の原因場所へ走った。少女がその場に着いたとき、床を抜けて下半身がハマった男が一人いた。

一体この人はどうやってどう落ちてきたのだろうか? そんなことを考えているであろう少女は降って来た男に近寄り

「大丈夫... ですか?」

男はおかしくした首をボキボキ鳴らしながら治し

「う、うん。君の判断に任せるよ...」

「じゃあ大丈夫ですね」

「天井から降って来て大丈夫なんだっ!?」

少女はもう一度暫し考えた、この男の人はどうやって降って来たんだろう...
そして少女はあることに気づいた。男の服装だ。
白い服を着ている、横には一緒に落ちて来たのであろう海軍提督の白い帽子。

「も、もしかして.... 司令官さん...?」

「司令官さん?」

白服の男は、取り敢えずと力を振り絞って床から抜けた。腰を痛めたのか、腰を摩って聞き直す。

「司令官ってどう言うこと?」

白服の男、ズボンもわかり、明らかに提督の格好である。

「え...えぇっと... この鎮守府を仕切る...えっと」

鎮守府?
男は頭をフル回転させてみた、そして周りを見てみた。
何処だここ... 鎮守府? 俺はさっきまでパソコンを開いて...
ってなんだこの格好!? ん...?
海軍か...? あ...

「つまり俺は提督なんだな?」

「そう言うことなのですっ!」

「なんでっ!?」

「知らないのですか?」

「うん」

「って司令官さんなんで落っこちてきたんですかっ!?」

「正直、俺も良くわからん...」

男は今まであったことを記憶で遡って思い出して見ることにした。
まず、落ちる前だ。光の中に居た気がする、暖かかったような... それはどうでもいい。その前はどうだ? 光の中に入る前だ。そうだ、艦隊これくしょんだ、艦これをやろうとしたんだ、サーバーを選んで... 取り敢えず適当なところクリックしたっけ。それで...

「思い出せないっ!!」

「はわわ!? びっくりしたのですっ」

「あ、ごめん。って良いよっ! もうダメだわからない。自分がこの鎮守府の提督だと言うことしかわからない。でもなんで提督なのかわからない。俺って一体なんなのさ!?」

「んっ、司令官さん。手紙ですよ、誰からかはわからないですけど... 司令官さんを見つけたら渡せって言われた気がするのです」

男の騒ぎ立てから逃げているようにも見える少女はそう言うと、懐に手を突っ込み、手紙を取り出した。男はその懐に入れられて温められていた手紙を受け取り、開いて見た。

ようこそ、ショートランドへ。
君は今日からここ、泊地.... 鎮守府で提督として生きてもらう。遊びでもなんでもないぞ?
"君の大好きな軍艦"達を自分なりに艦隊として活躍させることが出来るんだ。悪くない話だろう?
まぁ、何をするかは君次第だが... 提督は提督としての仕事をこなした方が良い、それをお勧めする。
君の目の前に居るその少女は秘書だ... 秘書艦だ。君の仕事をサポートしてくれるだろう。
これから先様々な軍艦を手に入れる、育てろ。愛を込めて育てろ。みんな君を愛してくれるはずだ、求めてくれるはずだ。

暁の水平線に勝利を刻め。


「なにこの手紙意味わかんない...。誰この人」

「私もわからないのです」

軍艦...? 君の大好きな軍艦。なんでこの手紙を書いた人は俺が軍艦好きなのを知っているのだろう? 他にもいろいろつっこむ箇所があるぞ...
だが、一番最初に読み取らなければいけないのは

「つまり君は軍艦なのか...?」

男は考えに閃いたらしく、少女にそう聞いた

「はいなのです。(いなづま)と言うのです」

電、その名前を聞いた途端、男はやさぐれた目を見開き、膝をガタガタと震わせ

「吹雪型.... 駆逐艦.... 特Ⅲ型....駆逐艦.... 四番艦...」

「説明ありがとなのです。電なのです、なのです」

は...? は....? はぁ!?
この小さな女の子が?
あの電?
ちょっと待て... いや、あ...
これは艦これの世界ってことなのか...?
確か、あのゲームは軍艦の擬人化だった。勧められた身だけあってゲームに関しては全く知らないが...
いや落ち着けよ。ゲームの世界に入るとかなに馬鹿なこと考えてやがるんだ。それ以前になんで俺が提督になったんだ、って話だが。ああもうわかんねぇよ、わかんねぇけど一つ言うなら...
なんで選りに選って初めに会った人物が電の擬人化なんだよ大好きだっ!!!

打撃音に近い音がまた部屋中になり響いた... と同時に電が声をあげた。

「司令官さん!? 司令官さんっ!!」

そう、その打撃音は男...司令官.....提督が倒れた音である。白目を向いて口をポカンと開けて倒れている提督はまさにホラーだ。

「司令官さん、そんなところで寝たらお風邪引くのですっ!! 起きてください」

ツッコミの居ない恐怖だ。提督もこの顔、恐怖だ。
まず自分の司令官の大事を心配しろよと言うツッコミは無しに、電はひたすらに提督の肩に手をやり、揺さぶるのだった。
 
 

 
後書き
「まさか... 司令官さんっ!? 気絶しちゃったのですか!? 大丈夫ですかっ!?」

遅いのです
もう遅いのです 
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