魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
93話:その男の名は……
前書き
お早い更新だぜイヤッホォォォ!
しかしゴールデンウイークはもうすぐ終わる……(´;ω;`)
「バイタルは安定してるわね、危険な反応もないし、心配ないわ」
「はい!」
「よかった~」
シャマルの診断に、その場にいる一同は安堵の表情になった。
「ごめんね皆、お休みの最中だったのに…」
「いえ!」
「平気です!」
いやはや、元気だな~。
と返事を返したエリオやキャロだけでなく、側にいるスバルやティアナも見ながら思う士。
「ケースと女の子は、このままヘリで搬送するから、皆はこっちで現場調査ね」
「「「「はい!」」」」
なのはの指示にフォワード陣は同時に返事を返し、その場から走り去っていった。
士がそれ俺のセリフ…、と思っていたのも束の間、診療器具をしまったシャマルが士に声をかけた。
「士君、この子をヘリまで抱いてってもらえる?」
「勿論です、少女の一人ぐらいへのかっぱッ」
言われてすぐ、少女の側にしゃがみ抱える士。その揺れで少女は声を漏らすが、意識が戻った訳ではなさそうだ。
そんな少女を見て、なのははどこか不安そうな表情を見せた。
「……大丈夫か、なのは?」
「えッ!? あぁ、うん…大丈夫」
「…そうか、じゃあレリックの方頼むわ」
「了解」
そうして四人が丁度ヘリポートへ到着した時、ロングアーチがガジェットを捕捉。Ⅰ型が地下に、Ⅱ型が上空に、それぞれ相当な数で現れた。
はやてが対処に困っていると、演習中だったヴィータが通信を繋ぎ、自身と108部隊の捜査官であるギンガ・ナカジマが参加する事となった。
それにより、地下に現れたガジェットをギンガを含めたフォワード陣が、空を埋め尽くすガジェットはなのは達が、それぞれ対処していく事になった。
そうして全員が準備している中、ロングアーチが新たな反応をキャッチした。
『何、これ…? 廃棄都市区画で、妙な反応が出ました!』
「何だと…?」
シャーリーから聞いたその報告を聞いた士は、眉を寄せた。同じく聞いていたはやても、疑問の表情に変わる。
『シャーリー、ガジェットの反応とはちゃうんか?』
『は、はい…明らかに違います。今映像出します!』
シャーリーの操作によって、索敵された映像がモニターに映し出された。
しかしそこに映るのは、アスファルトの道路の上をうろうろ徘徊するガジェットだった。
『あ、あれ? おかしいな、ガジェットしかいない…』
「…シャーリー、確かに反応は違ったんだな?」
『は、はい! でも映像だと…』
そう言って慌てるシャーリーだったが、士はそれを宥めるように声をかけた。
「俺が行く」
『え…?』
『まぁそうやな、今手が空いてるのは君しかおらんからな』
モニター越しに聞いていたはやては一度頷き、出撃の許可をくれた。
『でも士君、これは…』
「あぁ、解ってる。俺も嫌な予感、ビンビンに感じてる」
今までよりも多い布陣、そして陸と空を二分するような配置。
ここまでの戦力で、こうも戦略的に動いてるように見える動き、そして今までにはなかった嫌な予感。
これ程の事をやってくるのは、きっと理由がある筈。
いつもと違い、レリックが二つ見つかったからか? それとも……
(この少女、か……)
士はそう考えを巡らせ、横になって眠る彼女の顔を見る。
いつもと違うと言えば、彼女の存在もある。レリックを持って何処からか現れた少女、一体何者なのか。
(―――って、今考えても仕方ないか)
しかしそこで考えを振り切り、ヘリを降りる。先に降りていたなのはとフェイトは既に空へ上がっている、自分も急がねば。
そう決意し、トリスを腰に巻きカードを取り出す。
〈 ATACK RIDE・HARD TURBULER 〉
カードで呼び出したのは、黒いボディに赤いユニットの付いた機体〝ハードタービュラー〟。
灰色のカーテンから出てきたそれに跨り、すぐさまアクセル。後部ユニットのエンジンも稼働し、機体は宙に浮く。
向かう先は、ミッドの廃棄都市区画。
廃棄都市区画に向かう最中、士達はギンガが参加した経緯を聞かされた。
ギンガが向かった事故現場にあったのは、壊れた生体ポットにガジェットの残骸、そして何か引きづった跡。
しかもその生体ポットは五、六歳が入るようなもので、更には〝人造魔導士計画〟の培養器によく似ているとのこと。
俺達が救出した少女も、丁度五、六歳程。ギンガの見解は、彼女は人造魔導士の素体として〝作られた〟命だと。
「―――ったく、嫌な世の中だ」
平然と人間をいじるような行動が為されている。人の命を弄ぶような、残酷な仕打ちが…平気に行われている。
〝前の世界〟ではそう言う実情を知る事はなかったとはいえ、許される筈のない行為だ。
そう感じた士は小さく呟き、歯ぎしりを鳴らす。
彼女はこれからどうなるのだろう、どう生きるのだろう? 親もなく身寄りのない、独り身の状態の少女が歩む未来は、果たして明るいだろうか。そう思うと、嫌な予想しか頭に残らない。
しかし嫌な流れに逆らうように、士は頭を振った。
今は目の前の事に集中するんだ、彼女の事はこの後でも大丈夫だ。しっかり守ってやらねぇと。
〈マスター、目的地です〉
「おう、サンキュートリス」
眼下には徘徊するガジェットの群れ、それを目視した士は迷わずそこへ向かって飛ぶ。
そしてハードタービュラーに搭載されている武装〝エナジーバルカン〟を使い、数機のガジェットを破壊する。
仲間がやられ、士の存在に気づくガジェット達。対して士はハードタービュラーから、ガジェットの上へと着地。勢いをそのままに地面に踏みつける。
何処かの回線がショートしたのか、踏みつけられたガジェットは機能停止。すぐさま士は剣を取り出し、側にいたガジェット二機を辻斬りの如く切り裂いた。
剣先をなぞり、振り向く士。その視線の先には八機のガジェットが、そのカメラで士を捉えていた。
すぐさま動き出す士。レーザーを発射しようとするが、そんな事させる訳もなく。近くにいた一機を袈裟(けさ)斬り、もう一歩踏み込んだ先にいたガジェットを逆袈裟(さかげさ)、更に剣を振るった勢いを利用し反転、そのまま先にいたガジェットに横薙ぎを繰り出す。
一気に三機のガジェットを倒した後、最後に斬ったガジェットを足場に士は飛び上った。
「はぁぁぁああッ!」
そこを狙って生き残っているガジェットはレーザーを発射するが、士は魔力盾でこれを防ぐ。その後着地点間近にいたガジェットに落下する勢いのまま剣を斬り降ろす。
火花が散るガジェットを、両腕の力で目一杯押し出し爆発に巻き込まれるのを阻止。そして右側から迫ってきたガジェットを右足で少し押し返し、その右足を軸に左回し蹴りを放つ。
次に剣を逆手に持ち替え、反対側から来ていたガジェットに突き刺した。そして剣を抜きながら近づき、先程蹴り飛ばしたガジェットの方に思いっきり投げ飛ばした。
見事ガジェット同士がぶつかり合い、爆発する。そこで一旦士は息を吐くが、休憩はできない。先程飛び上ったことで飛び越えた二機のガジェットが近づいてきているからだ。
「―――ッ!」
早速一機のガジェットがレーザーを発射してきた。それを半身で目視した士は、逆時計回りに飛び上ると同時に持っていた剣を放る。
空中で回転する剣を士はレーザーを避けながら、サッカーのボレーシュートの要領で蹴り飛ばした。飛んでいった剣はガジェットに命中。着地すると士はすぐにそのガジェット目がけて走り出す。
突き刺さった剣を足場に再び飛び上り、その先にいる最後のガジェットに向かって拳を突き出した。
急な事でガジェットもすぐには対応できず、拳を食らい馬乗りの形で押し倒される。
「はぁぁぁぁ―――ハアッ!」
押し倒した士は気合を入れるように声を上げると、拳に魔力付加を掛けガジェットの装甲を貫いた。
士はすぐに拳を引き抜き、爆発に巻き込まれないように飛び退いた。周囲にはガジェットの機影なし、とロングアーチからの報せを受け息を吐く。
これにてオールクリア、そう言おうとした瞬間。
―――ギィィン!
「ヒッ…!」
士の目の前にライドブッカーか突き刺さった。
先程ガジェットに突き刺したライドブッカーだが、ガジェット本体が爆発した事で飛んできたようだ。ともかくこれは―――
「あ、危なかった…」
〈そこは予想通り、じゃないんですね?〉
「いや、爆発した結果何処に落下するなんて、見てなきゃ流石にわかんない」
そう言うと士は突き刺さった剣を引き抜き、ブックモードにしてからベルトに装着する。
しかしシャーリーが言っていた〝妙な反応〟とは一体なんだったのか。この感じで行くと、確実に俺専用の策か、足止めように増援が来るか。どちらかが来るだと思っていただけに、士は若干拍子抜けしていた。
「取りあえず何もなかったし、なのは達……は大丈夫だろう。フォワード陣の方をフォローしようか」
〈了解です。ではハードタービュラーを―――〉
先程呼び出し、別の場所で待機させていたハードタービュラーを呼ぼうとしたトリスだが、途中でその言葉を切った。
士は疑問に思ったが、トリスに聞くような事はしなかった。何故ならその原因が、おそらくわかったから。
―――足音だ。先程まではしていなかった、アスファルトの道路にコツンコツンと響く足音。おそらく一人分であろうそれが、少しずつ士に近づくように大きくなってきていたのだ。
〈……マスター、新たな反応が〉
「あぁ、解ってる。どうやらガジェットじゃなさそうだ」
Ⅰ型でもⅡ型でも、Ⅲ型でもガジェットはこんな足音は出さない。尤も、人型のガジェットが出たら話は別だが。
取りあえずガジェットではない、別の何者かがこちらに近づいている。そのことだけはわかる。
気配は感じている、後ろの方。そう決めつけた士はゆっくりと、顔だけでなく体ごとそちらに向けるように振り返った。
コツコツと足音を立てて現れたのは、人型だった。しかし見た目はただの人間ではない。
四肢は赤いアンダースーツに、所々に銀色の装飾。胴部にはチェーンメイルのような模様の描かれた、白いアンダースーツ。そして手には胴が白く、持ち手が黒い槍―――否、西洋のランスを思わせる武器が収まっていた。
何よりその人型の胴体には、これまた西洋の甲冑のようなものが付いていた。それは胸部は黄色と黒、肩周りは黄色と銀で配色されており、肩周りの甲冑は横に大きく飛び出ていた。
そして同じく西洋の兜に似た仮面を付けており、顔の両側にある角と共に黄色に光っていた。
―――そう、仮面である。
士はこれを見た瞬間、目を大きく見開いて固まっていた。
足音がするのだから、人型であろうとは予想していた。来るとしたら怪人もどき、もしくはショッカー怪人だと予測していたが……まさか〝こんなの〟が来るとは、予想外にも程がある。
「貴様がディケイドだな」
「あ…あぁ……」
―――喋った。
人の言葉を介した。つまりこいつは人なのか? 否そう決めるのは早いか?
しかしそんな判断ができるような状況じゃない。士の頭は目の前にいる存在を、どうにかして理解しようとフルスロットルで回転している。
だが―――否、やはりと言うべきか、士の頭は既に答えを出しつつあった。
―――こいつは『仮面ライダー』なんじゃないのか、と。
「俺の名は〝アーマードライダー〟…〝バロン〟だ」
自らを〝バロン〟と名乗ったそいつは、白いランスをゆっくりと構え、その矛先を士に向けた。
「貴様の力、確かめさせてもらう!」
だがしかし、だ。バロンはカッコよくそう言ったが、士の頭はフルスロットルで回転した為か、今は若干のエンスト状態であった。
だからこそ、先程の言葉を聞いた士は、一つの問いを投げかけた。
「―――え、〝バナナ〟?」
相手の甲冑の、パッと見の見た目も影響してか、そう聞いてしまった士。
バロンはそれを聞くと、何やら反応することはなかったが……なんか、纏う雰囲気というモノが一瞬にして変化した。
それに対し、士も察した。
―――あ、これ地雷踏んだかも、と。
「はぁぁぁぁ!」
「おわッ、ととッ!」
案の定、士に向かって突貫し、ランスを顔目がけて突き出してきたバロン。それを顔だけを動かして躱し、その次の振り下ろしも飛び退いて躱した。
「もう一度言う、俺は〝アーマードライダー〟……〝バロン〟だッ!」
「あ、あぁ! バロンね、分かった分かった、了解した!」
だから少し落ち着てくれ!
そう言う士だったが、バロンは尚も士に向かって走り続け、ランスを振るう。
振り抜いた勢いをそのままに回転、再び振り抜き同じように回転。士は一回目を少し屈んで、二回目を一歩退いて回避した。
そしてバロンは同じように振り抜くが、今度は回転せずに腕だけ回し、今度はほぼ真横に振り切った。
士はそれらを、まずは同じように一歩退いて躱し、その次を上半身をお辞儀をするように回避する。
頭上の風切り音がなくなるとすぐに上半身を起こす、がバロンは既にランスを構え腕を引いている。つまりこれは……!
「はッ!」
「―――ッ!」
本能的に上体を少しのけ反らせ、首を若干右に折る。するとそこへバロンの白いランスが突貫してきた。
そのスピードと矛先の鋭さによって、士の頬に赤い筋ができる。すぐさま士は飛び退いて、バロンとの距離を空けた。
着地した先で頬を拭う士。手の甲に血が付着したことを確認すると、再び親指で傷をなぞりながらバロンを見つめた。それも先程よりも厳しい目で。
それの行為を鼻で笑うバロン、こちらもすぐさま行動に移す。踏み込んで右手に持つランスを左手に持ち替え、右下から斜め上に振り上げた。
すかさず回避する士、だがそこに更に踏み込んで頭上でランスを右手に持ち替え、今度は右上から斜めに振り下ろした。
それを上体を横に傾けて躱すも、瞬く間に踏み込み横から振り抜く攻撃には対処できず、両手を交差させ受け止めた。矛先以外は殺傷能力がないのが幸いしたが、その一撃は重く表情を曇らせた。
「フンッ!」
「がふッ…!」
しかしそこで、バロンは士の腹目がけて前蹴りを繰り出した。
流石の士も生身でこれを受けてはひとたまりもなく、悶絶しながら数歩下がった。
だがバロンは待ってはくれない。右手に持つランスを再び右斜め上から振り下ろし、肩を回しながら左手に持ち替え左薙ぎを放つ。
腹を抑え苦しみながらも士は辛うじてそれらを避ける。するとバロンは、今度は右足を振り上げハイキック。これは避けきれないと判断した士は、それを左肩で受けながら後退し勢いを殺す。
バロンは振り切った勢いのまま今度は左回し蹴り。これは少し距離があったことが幸いし、士は屈んで回避。
しかしバロンもすぐさまランスで再び左薙ぎを放とうとする。それを膝を伸ばしながら目視した士は、再び膝を縮めて回避した。
(このままやられっぱなしは、癪だな!)
そう思った士は膝を伸ばしながら、左足を軸に右回転。立ち上がる勢いで前へ、回転の勢いで威力を持たせ、バロンの蟀谷(こめかみ)目がけて裏拳を放った。
「―――まだ、温いな」
「ッ…!」
だがバロンはそれを右腕を立てて防ぎ、そう言い放った。
士が驚くのも束の間、バロンは士の右腕を掴むと引っ張り、そのまま鳩尾に膝蹴りを繰り出した。
体内の空気が一瞬にして吐き出され、まるで時が止まったかのように呼吸が止まる。
腹を抑えながら数歩下がる士。それに対しバロンは右足を軸に半回転し、左足の後ろ蹴りを繰り出した。
士はそれを見て、唇を噛みながら腹を抑えていた手をずらし、狙われている場所で両腕を交差させた。
見事に当たるバロンの左足と士の両腕。しかし士はそれを受け止めることができず、力負けし吹き飛ばされた。
ゴロゴロとアスファルトを転がる士。しばらくすると回転も遅くなり、仰向けに倒れるように止まった。
大の字になって寝そべる彼を見て、バロンは沈黙を保つ。すると士の足が持ち上がり、急に飛び跳ねて立ち上がった。
「―――いってぇぇぇぇぇッ!」
あぁくそッ、と腹部を抑えながら大声で叫ぶ。ここ最近は訓練でも実戦でも、碌にダメージを負わずに戦ってきた彼だが、久々の痛覚に思わず叫んでしまった。
取りあえず叫び終え、はぁはぁ、と息を整える士。それを見たバロンは溜息を一つつくと、ランスの切っ先を士に向けて言った。
「そんなもんじゃないだろう、ディケイド。そろそろ本気を出したらどうだ?」
バロンの投げかけに、士は御尤もな意見だと痛感する。
少なくとも、このまま生身で彼と戦うと、確実に負ける。たとえライドブッカーを使ったところで、使える物が制限されている状態では、善戦もできないで終わるだろう。
ならば仕方ない、許可をもらおう。
そう判断した士は、はやてに通信を繋いだ。モニターに出てきた彼女はいつもの部隊長席に座っておらず、何故か六課の中を走っている様子だった。
『な、なんや士君。そっちもう終わったんか?』
「いや、ガジェットは倒し切ったんだが……より厄介なもんが出て来ちまった」
『ッ……怪人?』
モニター越しのはやての疑問に、士は首を横に振り答える。
「〝仮面ライダー〟だ」
『はぁ!?』
「取りあえず同じ土俵に立ちたい、許可をくれ」
そう言う士は、モニターを見るのではなく、目の前に悠々と立つバロンを見据えていた。
いつもの少しおちゃらけた雰囲気の消えたその表情を見たはやては、彼が想像以上に危ない状況にいる事を理解した。
『わかった、じゃあ取りあえず一段階を―――』
「いや、今回は二段階で頼む」
『はぁッ!?』
そう言って驚くはやては、先程よりも大きな声を出していた。
「おそらくだが、ディケイドだけじゃあ対処し辛い。早めに決着付けて、他と合流した方がいい気がするんだ」
『なるほど…わかった。門寺士、二段階限定解除、許可します』
はやての言葉によって、腰周りにいたトリスが輝きを放ち、ライドブッカーも淡く光った。
『絶対勝って、戻ってきてな』
「当然だ、任せろ。そっちも頼んだぞ」
『勿論や』
最後にそうやり取りした士は、モニターを消してやるべきことに集中する。息を吐きながら立ち上がり、まっすぐとバロンを見据える。
「随分と長かったな。女と話すとは、嘗めたマネを…」
「それは悪いが、こっちにも事情ってもんがある。勘弁してくれ」
だがまぁ、と言って士は光が戻ったライドブッカーを開き、カードを取り出した。
「すぐにお気に召すと思うぜ、バロンさんよ。―――変身ッ!」
そしてすぐさま開いたバックルにカードを挿入し、両脇のサイドハンドルを押し込む。
〈 KAMEN RIDE・DECADE ! 〉
士の周りに十三の虚像が立ち上がり、士と重なり一つとなる。ベルトの中心部―――トリックスターから飛び出した数枚のマゼンタ色の板は、数秒空中で待機すると士の顔にできた仮面に突き刺さり、その体に色を塗りこむ。
マゼンタと黒、白を基調とした、その姿を人々はこう呼ぶ―――
仮面ライダーディケイド、と。
「そちらも名乗ってくれたからな、こちらも名乗らせてもらおう」
舞台劇のように仰々しく両手を広げ、士はそう告げる。そしてライドブッカーを剣に変え、その切っ先をなぞった。
「―――〝破壊者〟、ディケイド…」
それに対し、バロンはゆっくりとランスを持ち上げ、矛先を士に向けるようにして再び構えた。
「相手にとって不足はない…!」
そう言うが否や、バロンは一気に駆け出した。それとほぼ同時に士も駆け出し、二人はお互いの得物を振り上げた。
二人の武器が衝突し、廃棄都市区画に甲高い金属音が響いた。
後書き
という訳で、いつぞやの予告で出した赤い奴は、バロンさんでした~!(ドンドンパフパフ!)
いや~、ここまで長かったね。この構想考えてからだいぶかかりましたよ、えぇ。
取りあえず、本編内での新たな設定の説明を少し。
はやてや士の言っていた「一段階」「二段階」というのは、士の変身の段階を指します。
変身リミッターは五段階あり、各段階の変身は下記の通り。
一段階→ディケイドのみ(ウィザードの魔法や、他ライダーのバイク召喚は可)
二段階→各ライダー、またはフォームチェンジまで
三段階→各ライダーの強化フォームまで(例:ブレイド・ジャック、オーズの各コンボ他)
四段階→コンプリートフォーム、他数フォーム(例:ウィザード・オールドラゴン、クウガ・アメイジング、アギト・バーニング他)
五段階→ファイナルコンプリート
……といった具合です。
何かご不明な点がありましたら、感想の方で。
それと、先日つぶやきの方にも書いたのですが……ホームページって、皆さんどう思います?
見てみたいと思っていただけたら、頑張ってみようと思うのですが……どうでしょう?
ドライブも面白くなってきてますね。剛さんが不憫すぎる気がしますが。
というかチェイスをああいう役回りにするんだ、とすごく驚きました。なんかロイミュード時のチェイサーもいいんですが、仮面ライダーのチェイサーもカッコいい…!
皆さんのご意見ご感想、どしどし待ってます! 今後ともよろしくお願いします。
ではでは~(^^)ノシ
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