| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

劇場版・少年少女の戦極時代

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

鎧武外伝 バロン編
  問題の所在

 戒斗がシャプールを連れて逃げ込んだ廃屋に、傷だらけのペコが現れた。

 ペコは戒斗の姿に安堵したのか、そのまま廃材だらけの床に倒れた。
 戒斗はすぐさまペコを抱き起こした。

「戒斗さん…っ、咲ちゃん、が」
「室井?」

 ペコは途切れ途切れに話した。


 戒斗(正確にはシャプール)がいなくなってしばらく、リトルスターマインとの合同ダンスを再上演していた時だった。
 タイラントを名乗るゲネシスライダーが現れ、ナックルに変身したザックを打ちのめし、咲を攫って行った、と。


「ハァ、ハァ……あいつ、リトスタの子たちにも攻撃して、咲ちゃんを、無理やり……『シャプールを連れて来い』って伝えろって。咲ちゃんと交換だって。ザックが追いかけたけど、返り討ちに……!」
「何て酷いことを……」

 戒斗は一度だけペコを支える手に力を入れ、シャプールを見上げた。

「こいつを頼む」
「僕もっ」
「いい! ――ここからは、俺と奴の問題だ」





 人質交換の場所に指定した廃工場で、アルフレッドはすでに勝った気分でいた。

 傍らには、柱に縄で入念に拘束した例の少女。戦極ドライバーもロックシードもないこの小娘は人質として大いに役に立つだろう。
 例えあの男が変身して挑んでこようが、目の前でこの小娘に弓を突きつければあの男とて動けまい。

 その時、気分が高揚したアルフレッドにとっては不快なばかりの騒音が、工場に鳴り響いた。

 アルフレッドは音源を探し、それが工場のシャッター近くに転がった防犯ブザーだと気づいた。
 放っておいても害はないが、とかく、うるさい。
 アルフレッドは防犯ブザーを止めに行った。――咲から離れた。


「今だ!!」


 チームリトルスターマインの一人、モン太が、シャッターの陰から工場に飛び込んで、アルフレッドに催涙スプレーを噴射した。

「うぐ!?」

 防犯ブザーを拾うためにしゃがんでいたアルフレッドは、真正面からまともに催涙スプレーを食らい、顔を押さえて膝を突いた。

「みんな!」

 モン太のかけ声で飛び出す、他のリトルスターマインのメンバー。


 ――リトルスターマインは誰もが仲間を見捨てられる性格ではなく、それがリーダーであればなおさら、これは彼らとアルフレッドの問題だった。ソニックアローによる多少の傷など、彼らにはかすり傷だ。


 ヘキサとナッツが、怯んだアルフレッドの横を回り込み、拘束された咲に駆け寄った。彼女たちは持って来たカッターナイフで、咲を縛る縄を切り始めた。

「この……ガキがぁ!!」

 ヘキサとナッツのもとへ向かおうとするアルフレッドの前に、トモとチューやんが立ちはだかる。トモは薙刀、チューやんは竹刀を持っている。

「せーっ」
「……のっ!」
「「一刀入魂!!」」

 トモの薙刀とチューやんの竹刀が見事な×字状にアルフレッドを叩き抜いた。

「持っててよかった薙刀一級っ」
「……剣道一級」

 同時にヘキサとナッツが咲の縄を全て切り終えた。
 ヘキサとナッツが咲の両脇に回り、咲の腕を肩に回させ、立ち上がらせた。

 モン太が最後の仕上げとばかりに小型グレネードを、胸を押さえるアルフレッドの足下に向けて投げた。
 グレネードから催涙ガスが噴射される。これで15分はアルフレッドを足止めできる。

 ――ちなみにここまでに使った物騒な道具の全てが、防犯グッズ取扱店で買える品である。


 そうして5人の少年少女は、彼らのリーダーの少女を救出し、廃工場を後に――するはずだった。
 赤いソニックアローがコドモたちの足下に刺さり、衝撃波を生じさせた。

「おわ!?」
「きゃあっ」

 全員がその場で転んだ。

『あまりオトナをナメるなよ。クソガキども』

 赤黒いアーマードライダーが歩み寄ってくる。

 ――最後のグレネードから催涙ガスが噴き出す寸前、アルフレッドはすでにタイラントに変身していたのだ。

 咲が気絶して変身できない今、リトルスターマインにとって、近づいてくるタイラントは死そのものと言って過言ではなかった。

 タイラントがエナジーロックシードを外し、弓にセットし、ストリングを引く。

 コドモたちは全員が立ち上がろうとした。――迫り来る脅威から逃げることを諦めなかった。

《 ロックオン  ドラゴンエナジー 》

 赤いソニックアローがリトルスターマインのメンバーを狙い、放たれた。

 そのソニックアローを、両者の間に躍り出た赤い影が、白いランスを揮って掻き消した。

「駆紋さん!?」
「バロンだっ!」
『よく粘ったな。お前たち』

 バロン――駆紋戒斗からすれば、それは最高から2番目の賛辞だった。 
 

 
後書き
 リトスタの活躍は某なく頃にシリーズの部活メンバーをイメージして書きました。
 いやね、本当に防犯グッズで売ってるんですよ。催涙スプレーはともかくグレネードには作者マジでビビりました。

 剣道と薙刀は小学生では1級が最高レベルです(初段取れないこともないらしいですが滅多にないと思われ)。実は武闘派なトモとチューやんでした。

 しかし作者もそろそろ「子供相手にここまでキレるアルフレッド大人げねえ」とか思い始めています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧