劇場版・少年少女の戦極時代
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鎧武外伝 バロン編
問題の所在
戒斗がシャプールを連れて逃げ込んだ廃屋に、傷だらけのペコが現れた。
ペコは戒斗の姿に安堵したのか、そのまま廃材だらけの床に倒れた。
戒斗はすぐさまペコを抱き起こした。
「戒斗さん…っ、咲ちゃん、が」
「室井?」
ペコは途切れ途切れに話した。
戒斗(正確にはシャプール)がいなくなってしばらく、リトルスターマインとの合同ダンスを再上演していた時だった。
タイラントを名乗るゲネシスライダーが現れ、ナックルに変身したザックを打ちのめし、咲を攫って行った、と。
「ハァ、ハァ……あいつ、リトスタの子たちにも攻撃して、咲ちゃんを、無理やり……『シャプールを連れて来い』って伝えろって。咲ちゃんと交換だって。ザックが追いかけたけど、返り討ちに……!」
「何て酷いことを……」
戒斗は一度だけペコを支える手に力を入れ、シャプールを見上げた。
「こいつを頼む」
「僕もっ」
「いい! ――ここからは、俺と奴の問題だ」
人質交換の場所に指定した廃工場で、アルフレッドはすでに勝った気分でいた。
傍らには、柱に縄で入念に拘束した例の少女。戦極ドライバーもロックシードもないこの小娘は人質として大いに役に立つだろう。
例えあの男が変身して挑んでこようが、目の前でこの小娘に弓を突きつければあの男とて動けまい。
その時、気分が高揚したアルフレッドにとっては不快なばかりの騒音が、工場に鳴り響いた。
アルフレッドは音源を探し、それが工場のシャッター近くに転がった防犯ブザーだと気づいた。
放っておいても害はないが、とかく、うるさい。
アルフレッドは防犯ブザーを止めに行った。――咲から離れた。
「今だ!!」
チームリトルスターマインの一人、モン太が、シャッターの陰から工場に飛び込んで、アルフレッドに催涙スプレーを噴射した。
「うぐ!?」
防犯ブザーを拾うためにしゃがんでいたアルフレッドは、真正面からまともに催涙スプレーを食らい、顔を押さえて膝を突いた。
「みんな!」
モン太のかけ声で飛び出す、他のリトルスターマインのメンバー。
――リトルスターマインは誰もが仲間を見捨てられる性格ではなく、それがリーダーであればなおさら、これは彼らとアルフレッドの問題だった。ソニックアローによる多少の傷など、彼らにはかすり傷だ。
ヘキサとナッツが、怯んだアルフレッドの横を回り込み、拘束された咲に駆け寄った。彼女たちは持って来たカッターナイフで、咲を縛る縄を切り始めた。
「この……ガキがぁ!!」
ヘキサとナッツのもとへ向かおうとするアルフレッドの前に、トモとチューやんが立ちはだかる。トモは薙刀、チューやんは竹刀を持っている。
「せーっ」
「……のっ!」
「「一刀入魂!!」」
トモの薙刀とチューやんの竹刀が見事な×字状にアルフレッドを叩き抜いた。
「持っててよかった薙刀一級っ」
「……剣道一級」
同時にヘキサとナッツが咲の縄を全て切り終えた。
ヘキサとナッツが咲の両脇に回り、咲の腕を肩に回させ、立ち上がらせた。
モン太が最後の仕上げとばかりに小型グレネードを、胸を押さえるアルフレッドの足下に向けて投げた。
グレネードから催涙ガスが噴射される。これで15分はアルフレッドを足止めできる。
――ちなみにここまでに使った物騒な道具の全てが、防犯グッズ取扱店で買える品である。
そうして5人の少年少女は、彼らのリーダーの少女を救出し、廃工場を後に――するはずだった。
赤いソニックアローがコドモたちの足下に刺さり、衝撃波を生じさせた。
「おわ!?」
「きゃあっ」
全員がその場で転んだ。
『あまりオトナをナメるなよ。クソガキども』
赤黒いアーマードライダーが歩み寄ってくる。
――最後のグレネードから催涙ガスが噴き出す寸前、アルフレッドはすでにタイラントに変身していたのだ。
咲が気絶して変身できない今、リトルスターマインにとって、近づいてくるタイラントは死そのものと言って過言ではなかった。
タイラントがエナジーロックシードを外し、弓にセットし、ストリングを引く。
コドモたちは全員が立ち上がろうとした。――迫り来る脅威から逃げることを諦めなかった。
《 ロックオン ドラゴンエナジー 》
赤いソニックアローがリトルスターマインのメンバーを狙い、放たれた。
そのソニックアローを、両者の間に躍り出た赤い影が、白いランスを揮って掻き消した。
「駆紋さん!?」
「バロンだっ!」
『よく粘ったな。お前たち』
バロン――駆紋戒斗からすれば、それは最高から2番目の賛辞だった。
後書き
リトスタの活躍は某なく頃にシリーズの部活メンバーをイメージして書きました。
いやね、本当に防犯グッズで売ってるんですよ。催涙スプレーはともかくグレネードには作者マジでビビりました。
剣道と薙刀は小学生では1級が最高レベルです(初段取れないこともないらしいですが滅多にないと思われ)。実は武闘派なトモとチューやんでした。
しかし作者もそろそろ「子供相手にここまでキレるアルフレッド大人げねえ」とか思い始めています。
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