FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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シリルの昔話
シリルside
あれは7年前の話……俺とウェンディはヴァッサボーネとグランディーネが突然姿を消してしまい路頭に迷っていたんだ。
「グランディーネ……ヴァッサボーネ……」
「泣かないで……ウェンディ」
森の中をさ迷いながら俺たちは歩いていた。ウェンディはグランディーネとヴァッサボーネがいなくなってしまってからずっと泣いている。俺はウェンディの背中をさすりながら一緒に歩いていた
「どこにいるの? グランディーネ……ヴァッサボーネ……」
ウェンディは目を擦りながら歩いている。俺は自分も泣きそうになるのを抑えていた。
(俺たち……どうなっちゃうのかな?)
二人が突然いなくなって俺は困り果てていた……俺もウェンディも不安な気持ちでいっぱいだった。すると前から誰かの足音が聞こえてくる
ザッザッザッ
その足音は次第に大きくなっている。俺とウェンディはそちらを見る。するとそこには薄い青い髪の顔にタトゥーが入っている少年が現れた
「どうしたの?」
少年は俺たちに声をかける。ウェンディはその少年を見て思わず泣きついてしまう
「うぇぇぇぇん!! いなくなっちゃったのぉ!!」
泣きじゃくるウェンディ。少年はウェンディの肩を持つとそっと頭を撫で、俺に視線を向ける
「どうしたんだい?」
少年は俺に問いかける。俺は少年の方に歩み寄っていく
「俺とウェンディ……その子の親が突然いなくなっちゃって……それでどうすればいいのかわからなくて……」
俺もその時は心に余裕がなくてうまく説明できなかった。でも少年はそれを察してくれたのかウェンディを抱き締める
「大変な思いをしてるんだね……よければ名前を教えてくれないかな? 俺の名はジェラール」
「俺はシリル。シリル・アデナウアーです……」
「私は……ウェンディ……マーベル……です……」
ウェンディは泣きながらつっかえつっかえで名前を言う。ジェラールは俺たちの名前を聞いてなぜか驚いたような顔をするが……すぐに笑顔になって話す
「シリルとウェンディか。いい名前だ!!」
ジェラールは俺の方へと歩み寄ってくる
「ねぇ……もしよければ俺と一緒に旅に出ないか?」
「え?」
俺は突然の提案に驚いてしまう。ジェラールは俺とウェンディを交互に見たあと言葉を続ける
「実は俺も旅をしていてね。今は道に迷っちゃったんだけど。」
ジェラールは恥ずかしそうに頭を掻く
「まぁ道に迷ったといっても宛のある旅ってわけではないんだけどね。もしかしたら君たちの親に旅の途中で会えるかもしれないし。それにこれからどうするのか決まってないんだろ?」
「それは……まぁ……」
ジェラールに言われて口ごもる俺。こんな俺たちがついていって迷惑にならないのかな?
「それに俺も一人じゃ寂しいんだ。君たちも一緒なら楽しい旅になると思うんだ」
「行く!! 私もジェラールと旅にいきたい!!」
ジェラールの言葉にいち早く反応したのはウェンディだった。ウェンディは涙を拭うとこちらに駆け寄ってきて抱きつく
「ねぇシリル!! 一緒に行こう!!」
「……うん!! 行こう!!」
ウェンディが笑顔になったのを見て俺は嬉しくなった。俺とウェンディは手を繋いでジェラールに近づく
「これからよろしくお願いします。ジェラールさん」
「よろしくね!! ジェラール!!」
「あぁ!! よろしく!! それとシリル。俺のことは呼び捨てでいいよ!!」
「いいんですか?」
「あぁ!! だって俺たちは一緒に旅をする仲間なんだから!!」
ジェラールの笑顔になぜかドキッとしてしまう俺。仲間と言われて嬉しい気持ちもあったからなのかも知れない
「さぁ、行こう!!」
ジェラールは俺たちの手をとり歩き出す。そこから俺たちは一緒に旅をした
―――――旅を始めてしばらくして
「ジェラール……なんか天気があれそうだよ?」
その日は俺たちは草原を歩いていたのだがさっきまでまぶしく輝いていた太陽が黒い雲によって覆われている。
するとすぐに雨が少しずつ降ってくる
「まずいね……どこかで雨宿りしないと」
ジェラールも空を見上げながら言う。すると突然雷が光り
ゴロゴロゴロ
「きゃあっ」
大きな音がするとウェンディが俺にしがみついてくる
「大丈夫ウェンディ。ジェラール! とりあえずどこかで雨宿りしよう!!」
「そうだな。あっちに大きな木があるみたいだしそこで雨宿りしよう」
ジェラールが指を指した方向には確かに大きな木があって、それは雨を凌ぐのにはちょうどいい場所だった。
俺たちはその木に急いで走っていった。
「これで大丈夫かな?」
「だね」
「うぅ……ひっく……」
安心する俺とジェラール。しかしウェンディはさっきの雷がよほど怖かったのか泣きじゃくっている
「シリル。ウェンディと一緒にここで待っていてくれ」
「? ジェラールは?」
「俺は何か食べるものを探してくるよ」
「わかったよ」
俺はジェラールの言葉にうなずく。ジェラールはそれを見てカバンを置いてから少し足早に森の中に入っていく
俺はウェンディと一緒にその場で座って待つことにした。ウェンディはなおも目を擦りながら泣いている
「大丈夫?」
「うん……少しビックリしただけだから」
そういうウェンディは寒いのか小刻みに震えている。俺はジェラールのカバンに毛布があったことを思い出してそれを取り出してウェンディにかける。
「ありがとうシリル」
「いやいや」
しばらく俺とウェンディはジェラールが走っていったところを見つめながら待っている。ウェンディが眠たくなってきたのか首がカクカクッと上下しだしたくらいにジェラールが戻ってきた
「ジェラール!!」
さっきまで眠そうだったウェンディはジェラールを見つけて大喜びで駆け寄っていく
「雨の日は嫌だけど、こんないいこともあるんだよ」
ジェラールは腕いっぱいに持っている果物を俺たちに見せる。それは水滴がついていてきれいに見えた
「わぁ!!」
「どこでとってきたの?」
「聞くなよ」
喜ぶウェンディと俺。俺が質問するとジェラールはなぜかそう返答したので俺とウェンディは?マークをいっぱいに浮かべていた
「さぁ、食べよう」
「「うん!!」」
ジェラールは木の下の雨の当たらないところまでいき座る。俺とウェンディはジェラールを囲むように座りジェラールのとってきてくれた果物を頬張る。
その日はその木の下で野宿をした。
その日の夜は昼間の雨など想像できないほど星がきれいだったのを今でも覚えている
―――――ある天気のいい日
旅をしていたときあまりにも天気が良くて凄く暑かった日もあった。
「暑いね」
「そうだね」
俺とジェラールは額に流れる汗を拭いながら歩いている
「ウェンディ。大丈夫?」
「だい……じょう……ぶ……だよ……」
「とてもそうは見えないけど?」
「あう……」
ジェラールの問いにウェンディが答えるが顔を真っ赤にしてふらふらしている。するとジェラールは近くにあった大きな葉っぱの植物を茎から取りウェンディに渡す
その葉っぱのおかげで影ができていた
「ありがとうジェラール」
「ううん。シリルもどうだい?」
ジェラールは俺にも葉っぱを渡してくる
「ありがとう。じゃあ俺からお返し!!」
「お? なんだい?」
俺はジェラールから葉っぱを受けとるとジェラールに手から出した水を掛ける
「どう?」
「冷たくて気持ちいいね。ありがとうシリル」
「わぁ!! シリル!! 私にもかけて!!」
「いいよ!!」
俺はウェンディにも水をかける。気がつくと俺たちは天気のいい日にも関わらずびしょびしょになるまで水遊びをしていた
――――岩場にて
それからまた何日かして俺たちは見晴らしのいい岩場で風を浴びていた
「涼しいね!! シリル!! ジェラール!!」
「うん!! 風がとっても気持ちいい」
「そうだね」
ウェンディは体全身に風を受け俺も一緒になって風を受ける。
ジェラールはそんな中どこか遠くを見つめていた
「どうしたの? ジェラール」
「いや……なんでもないよ」
俺の問いかけにそう答えるがジェラールはどこか上の空だった
「ねえ……これからどこへ行くの?」
「さぁ。どこがいいかな?」
「本当に何も考えてないんだ……」
「まぁね」
俺の問いにジェラールは照れたように返す。ジェラールってしっかりしているようで実はちょっと抜けてるのかもな
「私たちもついていっていい?」
ウェンディがジェラールの手を握る。ジェラールはそれに笑顔で答える
「もちろん!!」
「「ありがとうジェラール!!」」
俺とウェンディはジェラールに笑顔で言う。
「どういたしまして」
ジェラールは空いている方の手で俺の手をとると三人で歩き始める。
ジェラールと出会ってからは俺とウェンディは毎日が楽しかった。俺はそんな日々が永遠に続くと思っていた。でも……別れは突然に訪れた
――――
ジェラールと出会って一ヶ月ほどたったある日、俺たちは三人でお話ししながら歩いているとジェラールは後ろを振り向いて
「アニマ!?」
突然訳の分からないことを言い出した
「アニマ?」
「なに? どうしたの?」
俺とウェンディはジェラールに聞く。すると突然水滴が頭に落ちてきた。俺は上を見上げると雨が降り注いできた
「やば!!」
「あっちの森で雨宿りしよう!!」
「うん!!」
ジェラールは俺とウェンディの手をとると森に向かって走る。そして木が何重にも重なっていて雨の当たらないところで雨宿りした。
「君たちとの旅はここまでにしよう」
「「え!?」」
ジェラールが突然そんなことを言い出した。
「いや!! 私たちも一緒に行く!!」
「ダメだ!!」
「どうしてダメなの!?」
「これから行くところはとても危険なんだ」
俺の問いにジェラールはそう答えた。
「どうしてなの!? ジェラール!! 離れたくないよぉ!!」
泣きそうになるウェンディ。俺もジェラールと離れたくない。
ジェラールはそんな俺たちを見て困った顔をする
「この森を抜けたらギルドがある。そこに君たちを預けるからね」
「いや!! 離れたくない!! 一緒にいる!!」
ウェンディはジェラールに抱きついていっぱい泣いた。ジェラールはますます困った顔をしたのを見て俺はその場に立ち尽くすしかなかった
後書き
いかがでしたでしょうか。アニメのウェンディの回想にシリルが入っていった感じにしました。あとシリルの名前を聞いて驚いたのにもきちんとした理由があります。それはまた別の機会に……また次回もよろしくお願いします
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