| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

産女

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

5部分:第五章


第五章

「川の中に潜み人を襲う化け物ですね」
「そうだ、まさか美濃にまでいるとはな」
「私もはじめて見ました。まさかこの大垣にいるとは」
「これよ。話の元は牛鬼だったのだ」
「ではあの女は」
「産女だな。牛鬼の手下だった」
「産女ですか」
 長老はその名前を聞いてだ。また言ってきたのであった。
「それも名前だけは聞いていました。そういえばまさにそれですね」
「それも大垣にいるとは思わなかったのだな」
「はい、まさかと思っていました」
 まさにそうだったというのだ。
「ここにいるとは」
「わしも聞いたことがなかった」
 朔太郎もそうだというのだった。
「まさかな。全くな」
「はい、美濃にもいたのですね」
「うむ。しかし産女はだ」
「はい」
「産む時に死んだ女が怨念でなるという」
 この時代はお産で死ぬ女も多かった。その女が怨念によりなる妖怪なのだ。なお赤子で死ぬ者も多かった。それは戦前までそうだった。
「それではいてもおかしくはないか」
「そうなりますか」
「そして牛鬼もじゃ」
 今度は牛鬼について話したのだった。
「川や海の何処にでもいるものじゃ」
「何処にでもですか」
「それならばここにいてもおかしくはない」
 こう話すのだった。
「それもじゃ」
「左様ですか」
「そうじゃ。何はともあれじゃ」
「はい」
「牛鬼も産女も退治した」
 それは間違いないという。
「これでこの話は終わりじゃな」
「はい、確かに」
 長老も朔太郎のその言葉に頷いた。
「それは間違いありません」
「では明日殿の元に戻るとしよう」
 こうしてこの話は終わった。朔太郎は牛鬼のその首を取りそれを信長の前に見せた。信長はその鬼の首を見てだ。そのうえで言うのであった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧