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戦国異伝

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第二百六話 陥ちぬ城その十一

「しかも大谷殿、島殿もおられる」
「お二人もですね」
「相当に強い、大谷殿にしても」
「島殿のことは私も聞いていますが」
「鬼左近と言われておるだけにな」
「相当な方ですね」
「そして大谷殿は戦においてはまさに鬼神という」
 その島以上にというのだ。
「相当に強い」
「ではあの方も」
「何としてもな」
 それこそというのだ。
「退けねばな」
「堤を崩せず」
「水攻めも防げぬ」
「畏まりました、さすれば」
 甲斐姫は父の言葉に応えた、そしてだった。
 敵が来る時を待った、その数日の間石田達は堤を築かせ水を引く用意をしていた。そして遂に堤が歓声し水を引きはじめた時にだった。
 島は石田にだ、こう言った。
「そろそろです」
「来るか」
「はい、おそらくは」
「今夜じゃな」
「来ます」
 この夜にというのだ。
「堤を攻めてきます」
「そうか、ではな」
「はい、今宵は」
「戦の用意をな」
 それをというのだ。
「これまで以上にしておこう」
「そうしてですな」
「うむ、迎え撃とうぞ」
 石田もこう島に答えた。
「そしてな」
「敵を退け」
「水攻めにもっていく」
 当初から考えているその通りにというのだ。
「よいな」
「さすれば」
「この夜に決まるか」
「そうじゃな」
 大谷も石田の言葉に頷いた。
「ここは」
「うむ、ではな」
「今夜は起きるぞ」
「茶を用意しておくか」
 目を覚ます為にというのだ。
「そしてな」
「敵を待つか」
「甲斐姫が来ると思うか」
「間違いない」
 あの姫が来ることはとだ、大谷は石田にこのことも答えた。
「あの姫以外にはおらん」
「出て来るのは」
「あの目は猛者の目じゃった」
 甲斐姫のそれはというのだ。
「勇ある者のな」
「勇がか」
「御主と同じだけな」
 大谷はここで石田に顔を向けて微笑んでこう言った。
「あるわ」
「わしとか」
「御主は自分を勇者だと思っておらぬやも知れぬが」
 しかし実際はというのだ。
「その勇は見事じゃ」
「だとよいがな」
「しかしあの姫もじゃ」
 甲斐姫、彼女も然りだというのだ。
「強くな」
「そしてじゃな」
「勇がある、ここは何としても止めてじゃ」
「水攻めを仕掛けようぞ」
 その夜のことを既に考えつつだ、石田達は水攻めの用意の最後の段階にかかっていた。既に忍城の者達は堤の向こうに集められている水を見ていた。


第二百六話   完


                             2014・11・18 
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