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美しき異形達

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第四十六話 横須賀その六

「海軍さんは」
「そりゃ海だからな」
「泳げないと、なのね」
「何かとまずいからな」
「船が沈んだ時とか」
「カナヅチだとアウトだよ」
 そのまま溺れ死んでしまう、言うまでもなく。
「それだけで」
「だから泳げないと」
「海軍じゃ駄目なんだよ」
「海上自衛隊でも」
「勿論だよ」
 言うまでもなく、という口調だった。薊の今度のそれは。
「やっぱりな」
「泳げてこそよね」
「海軍、海自さんにいるのならな」
「そうよね」
「泳いでそれでな」
「身体も鍛えてるのね」
「海自さんの人はとにかく泳ぐんだよ」
 薊は裕香に真剣な顔で言った。
「裕香ちゃんもその話知ってるよな」
「ええ、一応は」
「江田島行ったんだろ?」
「あそこね」
 行ったという返事だった。
「あそこでも聞いたわ」
「だろ?海だと泳ぐんだよ」
「幹部候補生学校じゃ遠泳するとか」
「それも相当長い距離を」
「そう聞いたわ」
「絶対なんだよ」
 それこそ、とだ。また言う薊だった。
「海だと」
「じゃあ皆水着になるのね」
「それはさ」
 薊は水着の話にも笑って答えた。
「もう泳ぐからには」
「絶対よね」
「だから海自さんとか海軍さんの人達はな」
「皆水着持ってるのね」
「そうだよ、けれどその水着は競泳水着だよ」
「泳ぐ為の」
「あたし達が持ってるみたいな水着じゃないよ」
 遊ぶ時に着る水着とはまた別だというのだ。
「水泳の授業の時に着るな」
「ああした競泳水着ね」
「あたし的にはさ」 
 ここでだ、薊はこうしたことを言った。
「競泳水着って怖いんだよな」
「怖いって?」
「いや、あの水着って体型はっきり出るだろ」
 これが怖いという理由だった。
「ビキニよりもな」
「ビキニは案外ね」
「体型目立たないだろ」
「実はね」
「けれどワンピース、特に競泳水着はさ」
「身体にぴったりくるからね」
「それで目立つからさ」
 だからだというのだ。
「あたしは怖いんだよ」
「太ったりしたらね」
「はっきり出るからな、胸とかお尻の形もな」
 薊はどうにもという顔で裕香に話した。
「だから怖いんだよ」
「そうなのね」
「水着って案外ビキニとかの方が気楽なんだよ」
「露出多くても」
「あたしあまりスタイルに自信ないからさ」
「あれっ、薊ちゃんスタイルいいわよ」
 裕香は薊の今の言葉には意外といった顔で返した。裕香から見れば薊のスタイルはどうかということも本人に言った。 
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