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エターナルトラベラー

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第十六話

それから一年。

本体は日向宗家で使用人見習いの仕事をしつつ、影分身は山で修行中。

え?本家に影分身を置いて本体で修行しろって?

いや無理でしょ。

過度の衝撃でポンって行くんだから。

バレたらやばい。

影分身は一応禁術だから細心の注意が必要なのだ。

戦闘経験の蓄積は出来るけれど、筋力アップがはかれないのが玉に傷だ。

うーむ、どうしよう。

なんて思っていたら、当主さまが俺達に忍術修行を付けてくれる事になった。

といっても日向の体術は見せてもくれないんだけどね。

どうやら使用人兼ヒナタの護衛にする気のようだ。

当主(ヒアシさん)自ら俺達にそう言って訓練をしないかと誘ってきたので俺達は了承した。

いや何ていうかな?

一応この広い日向本家に一室を頂いていると、年が近いせいかヒナタが俺達の部屋に潜り込んで一緒に寝ていたりする。

当主も知っていて見ない振りをしているらしく、お咎めも無い。

最近生まれたばかりの妹に自分の居場所を奪われた寂しさもあるのだろう。

そんな感じで気分は妹な感じだし、出来る範囲で守ってやろうと言う気にもなるというもの。

ソラも同じ思いのようだ。

ああ、人目の無い俺達の部屋にいるときに限り、俺達はヒナタの事を呼び捨てにしている。

小動物のようなヒナタが勇気を振り絞って。

「せめて人目の無いところ位ではヒナタって呼んでください」

なんて言われたら逆らえないよね。

普段はきちんとヒナタ様、もしくはヒナタお嬢様と呼んでいる。

俺達はしがない使用人だしね。

忍びとしての基礎訓練は母親に教えてもらって刷り込まれているので問題なくこなせている。

いまは体の成長を妨げないように体を作っている最中だ。

まだ7歳だしね。

念の修行も続けている。

纏と練を重点的に毎日こなしている。

その成果か円の距離が段々増えていっている。

転生前は3メートル程だったのが今や15メートルほどに伸びている。

距離が日に日に伸びていくのでもしかしたら100メートル台も夢じゃないかもしれない。

…時間は掛かるかもしれないけど…年単位で。



8歳。

いつの間にやらうちは一族の虐殺が起こっていた。

俺達のことはばれずに済んだのか、それとも日向の家にいる事が幸いしたのか殺される事はなかった。

助かった。

これが怖かったからこそ俺達は万華鏡写輪眼の訓練も怠らなかったのだが。

もしもの時の咄嗟に使えないと最悪死ぬこともあると考え、最低限ではあるが万華鏡写輪眼の訓練を始めてもはや3年。

やはりというか俺とソラの視力は段々と下がり始めてきていた。

それはクナイの練習をしていた時などに顕著に現れた。

「む?どうした」

「い、いえ何でも」

当主の見ている前で的をはずしてしまった俺。

しかも今日既に3回目だ。

ソラの方も似たようなものだ。

「どうにも今日は調子が悪いようだな。今日はもう上がれ。ヒナタ、道場にいくぞ」

「はい。父上」

一緒に練習していたヒナタを連れ道場へと歩いていく当主を俺は呼び止める。

「当主」

「なんだ?練習なら今日は…」

「いえ、その事ではなく、内密でお願いがございます」

「それは今ここでは言えない様な事かね?」

「はい」

「ふむ。ならば後で私の書斎に来なさい」

「ありがとうございます」

そういって俺は頭をさげ、道場へと向う当主を見送る。

「ソラ?」

「視力、結構落ちているだろう?」

「う、うん」

「理由はわかっている」

「え?」

「万華鏡写輪眼は、使えば使うほどその眼は光を失う」

「な!?何で教えてくれなかったの?」

「それでも必要になると時が来ると思ったからな。それに視力低下の解決方法も知っている」

なんでそんな事を覚えているかといえば、ゼロ魔の時、ドクターに左目を移植されてから必死に思い出したからさ。

写輪眼の色々な事を。

あの時はまだゼロ魔の世界にきて5年ほどだったから思い出せたのだ。

結局うちはの体じゃなかったから万華鏡写輪眼の開眼は出来なかったんだけどね。

その後も何度かふとした時に思い起こされていたから覚えていたのだ。

「本当に?」

「ああ、だがそれには当主の協力が必要だ」

「それでさっき呼び止めたの?」

「ああ」

「それでその方法は?」

「それは後で当主の書斎で話すよ」

「わかった」

その後俺達は邸内の掃除をして、時間を見計らって当主の書斎へと赴いた。


コンコン。

「入れ」

「失礼します」

当主にことわりを入れ俺とソラは入室し、当主の対面にて正座する。

「アオとソラにございます」

「ああ、昼間の件だな」

「はい」

「して何用だ?」

俺は一拍置いてから話し始める。

「当主は我が母の旧姓をご存知でしょうか?」

「ああ、うちはだろう?」

「はい。そのうちはが宿す血継限界もご承知とは存じます」

「ああ、我が日向の白眼から分かれたものとも言われているな」

「はい。うちはの血を引く私達も運良く写輪眼の開眼を果たしました」

「それは真か?」

「はい。よろしければ開眼して見せますのですが宜しいでしょうか?」

「やってみろ」

俺はオーラを目元に送る。

「写輪眼」

眼球に現れる三つ巴の模様。

「ほう、本当のようだな。しかしそれが用件ではあるまい?」

さすが当主、鋭い!

「はい。この写輪眼に更に上があるとすれば?」

「な!?」

そりゃ驚くか。

なんせ写輪眼は有名だがその上があるとは知らないだろうから。

「名を万華鏡写輪眼と申します。宜しければお見せしますが」

「白眼!」

当主も白眼を発動させて身構える。

当然だ、写輪眼のコピーは有名だが、その上の能力は未知数なのだから。

「当主に危害を加えるつもりはございません。許可をいただけますか?」

「よい」

「万華鏡写輪眼」

すると三つ巴のマークが中心により万華鏡写輪眼が発動する。

「ほう、それが」

「はい。能力までは言えませんが」

「そうか、それでそれを私に打ち明けてどうしようと言うのだ」

俺は万華鏡写輪眼を閉じ普通の眼に戻った瞳で当主を見つめる。

「万華鏡写輪眼は開眼と同時に失明に向かいます」

「な!?」

俺の告白に驚いている当主。

同じ瞳術主体の忍者にとって失明は致命的だ。

「もちろんそれを解決する方法があります」

「つまりその方法に協力して欲しいと?」

「はい」

「因みにその方法は?」

「他の万華鏡写輪眼を自身の目に移植する事」

「なんだと?」

「他者の万華鏡写輪眼を奪い移植するのです」

「…しかし、他者のとは言うが、他に開眼しているものなど…そうかそういうことか?」

そう言って当主はソラのほうに視線を送る。

「え?」

ソラは行き成り視線を向けられて困惑気味だ。

「はい。ソラも万華鏡写輪眼を開眼しております。故に我ら兄妹間の眼球を眼軸から摘出して双方に移植してほしいのです。勿論内密に。勿論リスクは大いにありますが、幸いにして私たちは双子、拒絶反応の類も最小かと。なので信頼の置ける医療忍者が必要になります」

「それで私を頼ってきたか」

当主は少し表情を引き締め問いかけてくる。

「なぜ君達がそのような事を知っているのか、問いたいことは多々あるが、協力したところで私に利があるのかね?」

その問いに俺は気おされないように踏ん張って。

「ヒナタさまを影ながらこの眼で守りましょう。立派に成長するその時まで」

当主はしばらくの間何かを考えるそぶりを見せた後口を開いた。

「…良かろう。医療忍者は私が責任をもって信頼の置けるものを用意する。だが、その約束違えぬようにな」

「畏まりまして」

そう言って頭を下げ、俺達は退出する。

「ふう、緊張した」

「アオ!そんな方法だ何て思ってもみなかったよ!?それに良いの?あんな約束して」

「当主はどうせ俺達をヒナタの護衛兼使用人にするつもりなんだからいいじゃないか。それにヒナタの事は好きだろう?」

「…まあ、ね」

「それに失明は怖いしな」

「…うん」

そんな話をしながら俺達は部屋に戻り、その日は休んだ。


二週間後。

俺達は無事に眼球の移植を終えた。

当主の呼んでくださった闇医者紛いの医療忍者は腕は良かったようで術後の経過も順調だ。

さあこれで失明の恐怖は無くなった。

あとはガンガン使って早めになれる事が必要かな。

なんて考えていたら俺達は当主から呼び出された。

呼び出され、道場に来ると、そこには当主が一人で俺達を待っていた。

「アオにございます」
「ソラです」

「待っていた」

「このような場所に呼び出して何用でございましょうか?」

「お前達の力を試してみようと思ってな。力なくばヒナタを守ることなど出来まい?」

その言葉に俺はしばらく考えてから返す。

「わかりました。では私が」

「アオ!大丈夫?」

「いや、無理だろう。相手は木の葉最強の日向家の当主だぜ?」

「なら」

「死ぬ事は無いだろう…たぶん」

「準備は出来たか?」

「幾つか質問が」

「よい」

「忍術、忍具の使用は?」

「そうだな、道場を壊されるのは困るから、大技の使用は禁止。使えるのだろう?」

「はい」

うん、こんな所で火遁豪火球の術とか使ったら天井が燃えること請け合い。

「瞳術の使用は?」

「ふむ。写輪眼までは使用を許可しよう」

「ありがとうございます」

まあ、妥当かな。

万華鏡写輪眼の能力を教えてはいないが、それが道場を破壊する規模の物かもしれないという読みかな?

合ってるけど。

そうそう移植後に大変な事が判明した。

なんと俺の写輪眼の能力がソラに、ソラの能力のが俺に眼球を交換したことによって付加されたのだ。

写輪眼の能力は体と眼球の両方に宿るらしく、今の俺達は新たに手に入れた力の訓練で忙しい。

話がそれた。

使えるのは写輪眼と体術と幾つかの忍術か。

忍具は持ってきてない。

と言うか俺は持ってないしね。

クナイすらも。

練習の時は借りているのよ!

影分身は使えるかな。

後は念か。

うーん。流石に念は使わないと戦いにすらならないか?

あっという間に柔拳でぼこられて終わりだろう。

と言うか、俺とソラはどちらかといえば中距離からの射撃を得意としているのだ。

格闘なんて習った事は無いからはじめから達人に勝てるわけ無いと思うのだが。

愚痴っていてもしょうがない。

俺は道場に進み出て、当主と対峙する。

「では、始めようか」

「写輪眼」
「白眼」

同時に瞳術を発動。

「行くぞ!」

当主のその言葉に俺は写輪眼を発動し、オーラを操り『堅』をする。

迫り来る掌手。

それを腕をクロスして何とかガード。

つか動き速い!

写輪眼じゃなければガードも間に合わず吹っ飛ばされていたよ!

俺も負けじと反撃にでる。

しかし繰り出すパンチはことごとく見切られ一旦距離を開けられる。

「ほお、通常より多いチャクラを体の外に排出、留める事によって防御をあげる、か」

さすがチャクラの流れを見切る白眼。

この短時間で見切られますか。

俺は影分身の術を発動。

分身を一体作り出す。

「影分身か。なかなかやる」

白眼では影分身はどちらが本体か見破れないと漫画で読んだ記憶がある。

「行きます」

俺は重なるように当主に向かい攻撃する振りをして、本体は分身の後ろで『絶』をして気配を消し、分身が当主に攻撃を仕掛ける隙に一気に当主の後ろに回りこむ。

そして注意が影分身の迎撃に向いた一瞬で『絶』を解き攻撃。

しかし、それも当主には効かず、高速の動きで目の前の影分身を消し飛ばし、返す動きで俺の方へチャクラの乗った掌手を繰り出す。

ま、マズイ!

一瞬でオーラを放出して『堅』をしてなんとかその一撃を防ぐが、反動で3メートルほど飛ばされて着地。

「チャクラの流れを閉じ気配を消す技は見事だったが、白眼の前に死角は無い」

く!そうだった。

気配を消して死角からとも覆ったけれど白眼の視界はほぼ360度。

真後ろだって見えている。

なんてチート性能!

「まだ子供だという事を考えれば末恐ろしい才能だな」

いや俺体は子供だけど精神はかなり生きてますから!

「だが、そろそろ終りにするか。八卦六十四掌」

当主の体から感じる覇気が跳ね上がり掌にまとうチャクラの量が跳ね上がる。

ちょ!良いのかよ!こんなところで日向の秘伝を見せて!

いやまあ、漫画で中忍試験なんかで衆人環視の中で普通に使ってるからいいのか!?

うわ、もしかして俺の『堅』を突破するために相当量のチャクラを練りこんでないか?

マズイです。

そして繰り出される柔拳。

「二掌、四掌」

俺はその掌を写輪眼で見切り、はじける物はその手に『凝』をして弾き、はじけない物は『流』を使って経絡系へのダメージを最小限にしながら何とか耐える。

しかし、やはりそこは日向家当主。

段々スピードが上がり、対応できなくなっていく。

「六十四掌」

なるほど、経絡系を突いて、強制的に『絶』にする技か。

なんて事を俺は吹き飛ばされながら考えていた。

しかし、この時を待ってた!

ちょっとずるいが技を繰り出す直前に影分身をして、その影分身を当主の後ろに忍ばせていたのだ。

まあ、バレているだろうけど、技を撃ち終った今なら多少の隙くらいはあるだろう。

一撃くらい入れてやるぜ!

その影分身は右手に『硬』をして、今の俺の持てる最大の速度で当主の背後から殴りかかった。

しかし。

「八卦掌回天」

瞬間的に放出されたチャクラの壁に阻まれ、俺の影分身は攻撃を当てる事は出来ずに消失した。

そして壁に激突する俺。

「がはっ!」

「アオ!」

ソラが心配そうに声を上げる。

オーラが止められてしまって、纏すらまともに出来ていない俺の体はその衝撃をモロに食らった。

痛い!

崩れ落ちる俺。

ってか回天かよ!

それは考えてなかった。

それこそ見せちゃいけない技じゃないか?

しかしそのチャクラの絶対防御は流石だ。

「最後のは惜しかったな。及第点をやろう」

そう言って当主は道場を後にした。

畜生…やはりこの世界には化け物しか居ないのか?

負け惜しみを言うなら、忍術を使っていればもう少しいけたかも知れないけど…

くそう…悔しいな。





「がはっ。最後の一発は回天すら突き抜けたか」

余裕そうに道場を出たヒアシが膝をつく。

「はは、末恐ろしい子供だ。なあ、チカゲ」

そう言って空を見上げるヒアシは何処か嬉しさを帯びた表情だった。
 
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