砂金
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第四章
「違うわね」
「お互いに持っていような」
妻に拳銃を渡しての言葉だ。
「さもないと大変だ」
「落ち着いたって聞いたけれど」
「最初の時よりは、みたいだな」
人がどっと入ったその時よりはというのだ。
「まだ」
「そうみたいね」
「これは危ない場所だ」
「特にお金を持っていると」
「危ないな」
「確かここは砂金が出て」
妻は夫に怪訝な顔でこのことを言った。
「それで黄金が一杯あるって聞いたけれど」
「その筈だけれどな」
「違ったのかしら」
「そのことを聞いてみるか」
こう言うのだった。
「少しな」
「そうね、あまりにも追い剥ぎとか強盗が多いみたいだから」
「その辺りもな」
こう話してだ、リチャードは実際に西部の人間にこのことを尋ねた。この場所は黄金が多く採れるのではないかということを。
このことは酒場の親父に聞いた、だが。
親父は笑ってだ、こう彼に答えた。
「確かに金は出るさ」
「それは本当か」
「ああ、けれどな」
それでもと言う親父だった。
「誰もが金を掘り当てたり見つけられるものじゃないんだよ」
「それでか」
「砂金や金山で大儲け出来た奴なんてほんの少しだよ」
「じゃあ殆どの人はか」
「そうさ、他の仕事で生きてるかな」
「あんたみたいにか」
「それかな」
親父はここで眉を顰めさせてこうも言った。
「その辺りに嫌になる位いるな」
「ならずものになるか、か」
「そういうものだよ」
「金が出てもそれでまさに一山当てられる人間はほんの少しか」
「むしろそのほんの少しの奴なり掘ろうとする奴相手に商売してだよ」
そうしてというのだ。
「儲けるのがいいんだよ」
「あんたみたいにか」
「そうさ、俺みたいにな」
「それが西部なんだな」
「あんた確か東から来たんだよな」
「ああ」
その通りだとだ、リチャードは親父に答えた。
「そうだよ」
「それじゃあ気をつけろよ、もう知ってると思うけれどな」
「ここは物騒だな」
「だからな」
まさにそれが理由でというのだ。
「気をつけろよ」
「それはわかるよ」
「人殺しなんてざらな場所だからな」
それが今の西部だというのだ。
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