剣を捨てて
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第七章
「卿もだ」
「私がしたいことをか」
「すればいいのだ」
こうライズに言うのだった。
「是非な」
「そうか、そうすればいいのか」
「そう言われた、卿が何をしたくどうなりたいのかは知らないが」
「私がしたいことをしろ」
「そういうことになるのか」
「恋についてはな」
「難しいな、しかし」
ライズは同僚の言葉をここまで聞いてだ、こう彼に言った。
「考えてだ」
「決断を下すな」
「決断はすぐに下す」
ライズは強い声で言い切った、軍人は戦場で戦うものだ。常に状況が変わる戦場では即座に判断しないとならないからだ。
「私はそうする」
「ではな」
「動く」
決めてそして、というのだ。こうしてだった。
ライズは実際に即座に決断を下した、そしてグレゴール本人のところに赴いて彼に言った。
「卿は今交際相手はいないというが」
「はい、残念ながら」
「ではだ、いや」
ここでだ、何故かだった。
ライズは言葉が出なくなった、顔が紅潮し身体が熱くなるのがわかる。
その中でだ、言葉が出なくなり困惑した。
言おうとする、しかし。
どうしても言葉が出ない、その自分に戸惑い困惑するが。
何としてもだった、彼女は必死に言葉を出そうと努力して。
遂にだ、その言葉を紅潮しきった顔でグレゴールに告げた。
「私はどうだ」
「そのお言葉はまさか」
「そ、そのだ」
今度はだ、ライズは顔を右にそっぽを向けて言った。
「言った通りだ」
「そうですか」
「嫌ならいいが」
「いえ」
「いえとは」
「私も貴方がそう仰るのなら」
それならというのだ。
「是非共」
「それではな」
こうしてだった、ライズはグレゴールに告白するという彼女の決断を実行に移してだった。そのうえで。
彼との交際をはじめた、しかし。
その交際の中でだ、ライズはあることに気付いた。その気付いたことはというと。
同僚達にだ、そのことを夜の王宮警備の合間の当直室において話した。そのことは。
「今私はグレゴール殿と交際している」
「そのことは聞いている、おめでとう」
「彼はいい人だ」
「必ず卿を幸せにしてくれる」
「卿にとって最高の相手だ」
「私もそう思っている、だが」
それでもとだ、ここでこう言うのだった。
「このまま結ばれれば」
「卿もそれを望んでいると思うが」
「その通りだ」
まさにとだ、ライズは同僚の一人の言葉に答えた。当直士官室のそのテーブルを挟んでコーヒーを飲みつつ話をする中で。
「私自身な」
「ならいいだろう」
「しかしだ、妻となるとだ」
そうなればというのだ、彼女がそうなりたいその立場に。
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