Fate/Modification 〜13人目の円卓の騎士〜
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第1部 旅立ち
第1話 タイムスリップ
⁇?年 ?月?日
⁇??
運命とはなんだろうか。
一時期そんな事を考えていた。
別に俺は哲学者でもなければ学者でもない。
何処にでもいる唯の凡人だ。
決して抗えない定めを宿命と呼び、自らの手で創造し、自らの意思で想像し、形にするのが運命。
それが俺の導き出した答えだ。
…いや、厳密には俺の、ではない。
これは師匠の言葉であり、俺も結局この答えに行き着いた。
ならばこの〝状況〟はなんと呼べばいいのだろうか?
「……」
「……」
静かな湖畔、神秘的な森の中、湖の中に腰を下ろす俺と、金髪碧眼で〝全裸〟の少女。
無言で見つめ合う2人。
遥か上空では鷹が鳴き、森の中からは小鳥の囀りが響く。
ただ確かに言えるのは……
「……えっと、えくすきゅーずみー?」
「……ッ、いやぁああああああああッ‼︎」
ドゴスッ‼︎
「カムランッ‼︎」
非常に魅惑的でつるぺたな少女の姿は眼福であり、またその可憐な脚から放たれたヤクザキックは破壊力抜群だった。
◉◉◉
私の名はアーサー。
義父エクターと義母、義兄ケイの4人暮らしで、将来の夢は父や兄のような立派な騎士になる事。
今日は1人で屋敷に程近い森の中で剣の稽古をし、師である義父は義兄を連れて近くの街に出かけていた。
もう時期昼になるであろう頃、大量の汗を流す為、近場の湖で水浴びをしていた時だった。
「……ぁぁぁぁぁあああああああッ‼︎」
「え?」
突然空から男が降ってきて、目の前に落ちた。
水飛沫を上げ、鈍い音を立てて水没した男をただ呆然と見つめた。
「……」
突然の出来事に頭が回らない。
ぷかぷかと浮かぶ男を、呆然と見下ろす私は酷く滑稽な顔をしていたに違いない。
黒い髪に見たこともない服を着た男は、ブクブクブクと泡を吹きながら漂っている。
と、いきなり起き上がり、滑って腰をついた。
「……」
「……」
視線が絡み合う。
男の焦げ茶色の瞳が上下し、私は頭に血が上っていく感覚を覚えた。
「……えっと、えくすきゅーずみー?」
「……いやぁああああああああッ‼︎」
ドゴスッ‼︎
「カムランッ‼︎」
すかさず男の顔に蹴りを放つ。
鈍い衝撃と音を立て、男は錐揉みしながら10フィートほど飛び、湖に落ちた。
湖を濁らせる男の鼻血に、我を取り戻したのはそれから程なくしてからだった。
◉◉◉
「すまなかった」
「いえ、私も我を忘れていました。
貴方にも何か理由があったのでしょう?
顔をあげて下さい」
俺が意識を取り戻したのは、広く、それでいて厳かな雰囲気の洋風な部屋のベッドの上だった。
ベッド脇には、あの少女が男物の服を着て椅子に座り、作りの古い本を読んでいた。
ベッドの上で土下座した俺を見て、少女は慌てて土下座を辞めさせた。
「私の名はアルト…んんっ、アーサーといいます。
義父であるエクター卿の元、騎士になる為に修練を積んでいます」
「アーサー…アーサーって男性名だよな?
君は女の子じゃ……」
「その件で、貴方に頼みがあります。
…私が女である事を、誰にも言わないで欲しいのです」
性別を聞かれたアーサーは苦虫を噛んだように顔を濁し、そう告げた。
「古今東西、女の身で騎士になる事は滅多にありません。
義父も義母も、それを弁えた上で、私を男として扱ってくれました。
ですが、我が家の従者や義兄はそれを知りません。
…お願い致します、私が女である事を、誰にも喋らないで欲しい。
義兄が知れば、必ず私を騎士にしようとはしないでしょう。
ですから…」
「わ、わかった…。 お前にも事情があるって事だ。
この事は胸にしまって…いや忘れる事にしよう。
それでいいんだろ?」
「……感謝します。
処で、貴方の名をお聞かせ願えませんか?」
「名前? ああ、俺の名前は……………あれ?」
「如何しました?」
おかしい。
自分の名前が思い出せない。
それどころか師匠と会う前の記憶がぽっかり無くなっている。
「……悪い、名前が思い出せない」
「え?」
「自分が何者で何をしていたかも覚えてるんだが……名前と昔の事がまったく思い出せない。
……すまん」
「……もしかして、私の蹴りで記憶が……」
「いやいや、それなら殆ど覚えてないだろ。
記憶が虫喰いって事は……ああダメだ、状況判断出来ない。
そもそも此処はどこなんだ?」
「我が義父、エクター卿の屋敷ですが……」
「……そう言えば、今西暦何年なんだ?」
「……西暦? なんですそれは」
……師匠、どうやら俺はとんでもない場所に来てしまった様です。
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