極楽トンボ
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第一章
極楽トンボ
キャロル=クライブはリバプールのレストランでウェイトレスをしている。長い膝まである黒髪をポニーテールにしている。
背は一五七程で大きな黒い瞳に明るい顔立ちである、顔の形は少し丸く鼻はそこそこの高さで愛嬌のある感じだ。レストランの制服からもスタイルのよさがわかる。
いつも明るく笑顔でいる、お喋りも多く店でもだ。
「いや、キャロルがいると」
「もうそれだけでね」
「明るくなって」
「雰囲気がよくなるわね」
「お客さんんからも評判がいいし」
「しかも出来る」
ウェイトレスの仕事もというのだ。
「いや、いい娘だよ」
「いい娘がお店にいてくれてるよ」
店の中でも評判がよかった、とかく明るく楽しい娘だ。いつも明るく楽しくだ、悩みなぞ何処にもない感じである。
その彼女にだ、店の若いシェフであるマリア=ローズマリーがある日こんなことを言った。
「ねえ、今夜ね」
「はい、今夜ですか」
「飲みに行かない?」
こうキャロルに言って誘ったのである。マリアは長身で淡いブラウンの髪をいつも後ろで束ねて料理の邪魔にならない様にしている。
目は濃い青で鼻は少し丸くよくアジア系の鼻に似ていると言われている。眉は細く奇麗なカーブを描いでて唇は紅だ。この店で唯一の女性シェフである。
同じ女性であるせいかキャロルと仲がいい、それで今日もなのだ。
「いいパブを見付けたのよ」
「あっ、パブですか」
「お酒飲むわよね」
「大好きですよ」
キャロルはマリアに明るく返した、いつもの口調だ。
「特にラム酒が」
「いいわね、そのお店丁渡ね」
「ラム酒がですね」
「いいのよ」
実にというのだ。
「いいラム酒があるのよ」
「じゃあ是非」
「今夜ね」
「はい、お仕事が終わったら行きましょう」
キャロルは明るい楽しそうな笑顔でマリアに応えた。そうしてだった。
二人で仕事が終わるとすぐにだった、そのパブに向かった。マリアは長身に似合うズボンとラフな上着だ。工場から出て来た様な格好だ。
そしてキャロルはだ、驚く位に短いスカートにだ。
大きな胸の形がはっきりと出ている赤地にアニメのキャラクターが描かれているシャツだ。脚は黒のストッキングをガーターで付けている。
そのキャロルの格好を見てだ、マリアは少し呆れた様に笑ってこんなことを言った。
「いや、いつもながらね」
「私のファッションですね」
「随分派手ね」
「こういう服が好きなんですよ」
それで着ているというのだ。
「派手で明るく」
「露出は高め」
「男の人の視線が凄いですよ」
「そうでしょうね、まあ私はね」
ここで自分のファッションを言うマリアだった。
「この通りね」
「ラフな格好ですね」
「動きやすいね」
そうした服にしているというのだ。
「ズボンとかね」
「脚は見せないんですね」
「そんな歳じゃないしね」
このことは少し微妙な笑顔になってだ、マリアは返した。
「脚はもうね、若いからこそよ」
「見せられるんですか」
「これでも家に帰れば旦那と子供がいるから」
つまり所帯もあるというのだ。
「だからね」
「もうミニスカートはですか」
「ないわ」
こうキャロルに言うのだった。
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