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第一章

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 私はよく気が強いとか言われる、けれど。
 実際の私は気が弱い、少なくとも自分ではそう思っている。特に男女関係のことではかなり気が弱い。
 告白とか考えたこともない、することも。
 それで親しいクラスメイトの娘にからかってこう言われたことがある。この娘は小学校の時から一緒で私のことをよく知っている。
 その彼女が私にこう言った。
「あんた恋愛したことないでしょ」
「わかるのね」
「だって、あんた気が小さいからね」
 私の地をよく知っているからこそ言うことだった。
「告白とか無理よね」
「告白なんてね」
 とても、と返した私だった。実際に。
「とても無理よ」
「そうよね」
「ええ、そんなこと考えただけで」
 それこそだった。
「心臓が止まりそうよ」
「本当に気が弱いわね」
「ちょっとね、自分でも何とかしたいけれど」
「それでもね、そんなのだとね」
「やっぱりよね」
「これから大変よ」
 こう私に言うのだった。
「何かとね」
「告白出来ないと」
「そう、恋愛出来ないわよ」
「そして彼氏も出来ないっていうのね」
「そうよ、結婚だってね」
「ううん、それはわかってるけれど」
 それでもと言った私だった。
「どうしてもね」
「それは無理なのね」
「私本当に告白とか無理だから」
 ついつい言葉を強くさせて言った。
「そんなの」
「じゃあ一生こうなの?」
「それは嫌だけれど」
「それじゃあ思い切ってよ」
「死んだ気で告白しろっていうのね」
「好きな相手が出来た時はね」
「それで断られたらどうするのよ」
 これが一番怖い、怖いなんてものじゃない。
 それこそその事態を考えただけで心臓が止まりそうになる、だから私は告白が出来ないのだ。考えただけで怖くなる。
 それでだ、彼女にこう言ったのだ。
「あの、本当にね」
「死ぬっていうのね」
「そうなるわよ」
「まあ失恋はね」
 彼女もそれがわかっているのか私にこう言って来た。
「確かに怖いものよ」
「そうでしょ、それって」
「そうね、だからね」
「それでなのね」
「絶対に嫌よ」
「告白することは」
「絶対に出来ないわ」
 私は自分の顔が真剣なものになっているのがわかった、そのうえで彼女に対しても言葉を返していた。
「無理よ」
「困ったわね、それは」
「だから私にはね」
「失恋とかは」
「ええ、怖いわよ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 私は告白なぞとても出来ないまま高校生活を過ごしていた。告白どころか誰かを好きになることすら出来なかった。告白する前の段階で断られることが怖くて。
 そうして友達はいても彼氏がいない日々を過ごしていた、けれど。
 彼女がだ、私にこんなことを言って来た。
「C組の畑君がね」
「ああ、バスケ部の」
「そう、その彼がなのよ」
 二人きりになったところで私に言って来たのだった。 
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